ケンカの常套句、その結末
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登校して、教室のドアを開けて、そこでわたしは目に飛び込んできた黒板の前で、思わず足を止めた。
なんだこれ。
黒板にでかでかと躍る文字。
思わずため息がでる。
昨日、宗一郎とケンカした。
だって宗一郎がいけないんだ。
ずっと前から約束してたデートを急にキャンセルするから。
……ううん。ほんとうはデートがキャンセルになったことを怒ってるんじゃない。
そんなんじゃない。
宗一郎は強豪のバスケ部員で、練習も毎日大変でいつも遅くまでがんばってて。
わたしはそれを純粋に応援してる。
宗一郎とは一年のときから付き合ってるけど、デートが急にキャンセルになることなんてしょっちゅうだった。
だからそんなの別に構わなかった。
一生懸命部活をやってる宗一郎のことが大好きだったし、なによりもわたし自身部活が忙しい。
お互いに部活も凄く大切だってわかってるから、だからそれでキャンセルになったって、なんとも思わなかった。
だけど今回はちょっと違う。
だってその日は、わたしと宗一郎が付き合って一年になる記念日だったのに……。
ふと頭に、昨日の光景がよみがえる。
* * *
「あ、結花。今度の日曜のデートダメになっちゃった」
放課後。部活へ行く仕度を整えていると、宗一郎がふとそんな事を言ってきた。
教室にはまだ数人クラスメートが残っていて、楽しそうに談笑をしている。
そんな彼らを一瞬だけ目に入れて、宗一郎に問い返す。
「え、どうして?」
「この前の翔陽との練習試合、一点差でなんとか勝っただろ? それで監督が怒っちゃってさ。強化練習になっちゃったんだ」
「あ……。そう、なんだ」
「うん。本番では負けられないからね」
ふうとため息をつく宗一郎。
おいおい、それだけかい。
思わず心の中で突っ込みをしてしまう。
デートがつぶれることはいいよ。しょうがないよ。
強豪の部活に所属している高校生の宿命だもんね、それは。
でもだけど、デートできなくなっちゃってごめんねとか、記念日なのにごめんねとか、そういう一言はないわけ?
それとももしかして、記念日だってこと忘れてる……?
思わずむっつりと口を閉ざしてしまったわたしに、宗一郎が眉を寄せる。
「結花?」
「……なに」
「もしかして、怒ってる?」
「…………」
怒る……。怒るとはちょっと違うような気がする。
どちらかと言えば拗ねてるというかちょっとおもしろくないというか。
この感情は、怒ると言うほど激しいものではない。
なんて答えようか考えあぐねていると、宗一郎の心底呆れたようなため息が耳をついた。
驚いて顔をあげると、宗一郎が嫌そうに顔を歪めていた。
心臓が、ぎゅっとつかまれたようになる。
宗一郎のこんな顔、はじめて見た。
「宗一郎?」
恐る恐る問いかけると、宗一郎がもういちど深く息を吐いてこちらを見る。
「俺、結花は今までわかってくれてると思ってたけど」
「え?」
「俺が、今は結花よりも部活を優先したいって気持ち、結花ならわかってくれてると思ってた」
「な! それはわかってるよ! だいたいわたしだって今は宗一郎よりも部活を優先したいし! それはお互い様でしょ?」
「じゃあなんでそんな表情するわけ? そんな、まるで俺が悪者みたいに」
「!」
なんだこれ。
黒板にでかでかと躍る文字。
思わずため息がでる。
昨日、宗一郎とケンカした。
だって宗一郎がいけないんだ。
ずっと前から約束してたデートを急にキャンセルするから。
……ううん。ほんとうはデートがキャンセルになったことを怒ってるんじゃない。
そんなんじゃない。
宗一郎は強豪のバスケ部員で、練習も毎日大変でいつも遅くまでがんばってて。
わたしはそれを純粋に応援してる。
宗一郎とは一年のときから付き合ってるけど、デートが急にキャンセルになることなんてしょっちゅうだった。
だからそんなの別に構わなかった。
一生懸命部活をやってる宗一郎のことが大好きだったし、なによりもわたし自身部活が忙しい。
お互いに部活も凄く大切だってわかってるから、だからそれでキャンセルになったって、なんとも思わなかった。
だけど今回はちょっと違う。
だってその日は、わたしと宗一郎が付き合って一年になる記念日だったのに……。
ふと頭に、昨日の光景がよみがえる。
* * *
「あ、結花。今度の日曜のデートダメになっちゃった」
放課後。部活へ行く仕度を整えていると、宗一郎がふとそんな事を言ってきた。
教室にはまだ数人クラスメートが残っていて、楽しそうに談笑をしている。
そんな彼らを一瞬だけ目に入れて、宗一郎に問い返す。
「え、どうして?」
「この前の翔陽との練習試合、一点差でなんとか勝っただろ? それで監督が怒っちゃってさ。強化練習になっちゃったんだ」
「あ……。そう、なんだ」
「うん。本番では負けられないからね」
ふうとため息をつく宗一郎。
おいおい、それだけかい。
思わず心の中で突っ込みをしてしまう。
デートがつぶれることはいいよ。しょうがないよ。
強豪の部活に所属している高校生の宿命だもんね、それは。
でもだけど、デートできなくなっちゃってごめんねとか、記念日なのにごめんねとか、そういう一言はないわけ?
それとももしかして、記念日だってこと忘れてる……?
思わずむっつりと口を閉ざしてしまったわたしに、宗一郎が眉を寄せる。
「結花?」
「……なに」
「もしかして、怒ってる?」
「…………」
怒る……。怒るとはちょっと違うような気がする。
どちらかと言えば拗ねてるというかちょっとおもしろくないというか。
この感情は、怒ると言うほど激しいものではない。
なんて答えようか考えあぐねていると、宗一郎の心底呆れたようなため息が耳をついた。
驚いて顔をあげると、宗一郎が嫌そうに顔を歪めていた。
心臓が、ぎゅっとつかまれたようになる。
宗一郎のこんな顔、はじめて見た。
「宗一郎?」
恐る恐る問いかけると、宗一郎がもういちど深く息を吐いてこちらを見る。
「俺、結花は今までわかってくれてると思ってたけど」
「え?」
「俺が、今は結花よりも部活を優先したいって気持ち、結花ならわかってくれてると思ってた」
「な! それはわかってるよ! だいたいわたしだって今は宗一郎よりも部活を優先したいし! それはお互い様でしょ?」
「じゃあなんでそんな表情するわけ? そんな、まるで俺が悪者みたいに」
「!」
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