海に行くのに
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電話の奥で、仙道が素っ頓狂な叫び声を上げた。
『え、二キロ? 太ったって名前が?』
「うう、そうなの」
『え、それと海へ行けないのと、いったいなんの関係があるの?』
名前は仙道の言葉に耳を疑った。
関係なんて大有りに決まっている。
名前は携帯を片手に拳を固めて力説した。
「海だよ、海! 青い海! まぶしい太陽! そこまで来たら次は水着でしょう! 二キロも太った体で水着なんて着れるわけないもん! 彰にたるんだみにくい体を見られたくない!」
『あ……なるほど。そういういことか』
絶望的に言う名前とは対照的に、どこかホッとしたようなのんびりとした仙道の声が耳に届いた。
名前はその温度差のある仙道の反応に、拗ねた気持ちになって軽く唇を尖らせる。
「そういうことかってなによ。女の子にとっては大問題なのよ!」
『はは。俺は気にしないよ?』
「わたしが気にするのっ」
『ふうん? でも名前は痩せすぎなんだから、二キロくらい増えたってどうってことないんじゃない? むしろこの夏は猛暑だし、太ってくれたほうが健康的にも安心だよ』
「……彰ってデブ専なの?」
『ううん、名前専』
「…………あ、そう」
恥ずかしげもなくさらりとそう言う仙道に、名前は顔を赤らめて思わず沈黙した。
と、受話口から仙道の愉快そうな声が聞こえてくる。
『ね、名前。ちょっと外見てみてよ』
「外?」
言われて名前は窓を開けると、目の前の道路に仙道が立っていた。仙道は名前に気付くと、携帯を耳に当てて笑顔でこちらに手を振ってきた。
「あ、彰!?」
名前は驚いて窓から身を乗り出した。
「いつからそこに!?」
『んー? 電話したときくらいかな』
「ええ!? な、なんでもっと早く言わないの!」
『メールの返事がショックだったから』
「バカっ! 今そっち行くからちょっと待ってて!」
名前はそれだけ言うと、勢いよく電話を切った。
パジャマから私服に着替えて、少し濡れたままの髪もそのままに慌てて外へ出る。
「お、おまたせ……」
肩で息をしながらそう言うと、仙道がにこにこ笑って迎えてくれた。
「はは、そんなに急がなくてもよかったのに。……濡れた髪が色っぽいね、名前」
「……ばか」
「んー?」
仙道は名前の髪に手を伸ばすと、それを一房とって自身の顔に近づけた。
「うん。シャンプーのいい匂いがする。なに使ってるの?」
「マシェリ」
「ああ。鈴木えみ?」
「……間違ってはないけどさ。いつの情報なの、それ。古いよ」
「はは。俺、あの子好きだったから」
「へええ。べっぴんさんだもんね!」
「でも名前が一番好きだよ」
「……この流れで言われても嬉しくない」
「あれ。そう?」
おっかしいなー、なんて言いながら仙道はまだ名前の髪を手の中でもてあそんでいる。
なんとなくそれがこそばゆいような感じがして、名前は思わず顔を伏せた。
それに気付いた仙道が、小さく笑う。
『え、二キロ? 太ったって名前が?』
「うう、そうなの」
『え、それと海へ行けないのと、いったいなんの関係があるの?』
名前は仙道の言葉に耳を疑った。
関係なんて大有りに決まっている。
名前は携帯を片手に拳を固めて力説した。
「海だよ、海! 青い海! まぶしい太陽! そこまで来たら次は水着でしょう! 二キロも太った体で水着なんて着れるわけないもん! 彰にたるんだみにくい体を見られたくない!」
『あ……なるほど。そういういことか』
絶望的に言う名前とは対照的に、どこかホッとしたようなのんびりとした仙道の声が耳に届いた。
名前はその温度差のある仙道の反応に、拗ねた気持ちになって軽く唇を尖らせる。
「そういうことかってなによ。女の子にとっては大問題なのよ!」
『はは。俺は気にしないよ?』
「わたしが気にするのっ」
『ふうん? でも名前は痩せすぎなんだから、二キロくらい増えたってどうってことないんじゃない? むしろこの夏は猛暑だし、太ってくれたほうが健康的にも安心だよ』
「……彰ってデブ専なの?」
『ううん、名前専』
「…………あ、そう」
恥ずかしげもなくさらりとそう言う仙道に、名前は顔を赤らめて思わず沈黙した。
と、受話口から仙道の愉快そうな声が聞こえてくる。
『ね、名前。ちょっと外見てみてよ』
「外?」
言われて名前は窓を開けると、目の前の道路に仙道が立っていた。仙道は名前に気付くと、携帯を耳に当てて笑顔でこちらに手を振ってきた。
「あ、彰!?」
名前は驚いて窓から身を乗り出した。
「いつからそこに!?」
『んー? 電話したときくらいかな』
「ええ!? な、なんでもっと早く言わないの!」
『メールの返事がショックだったから』
「バカっ! 今そっち行くからちょっと待ってて!」
名前はそれだけ言うと、勢いよく電話を切った。
パジャマから私服に着替えて、少し濡れたままの髪もそのままに慌てて外へ出る。
「お、おまたせ……」
肩で息をしながらそう言うと、仙道がにこにこ笑って迎えてくれた。
「はは、そんなに急がなくてもよかったのに。……濡れた髪が色っぽいね、名前」
「……ばか」
「んー?」
仙道は名前の髪に手を伸ばすと、それを一房とって自身の顔に近づけた。
「うん。シャンプーのいい匂いがする。なに使ってるの?」
「マシェリ」
「ああ。鈴木えみ?」
「……間違ってはないけどさ。いつの情報なの、それ。古いよ」
「はは。俺、あの子好きだったから」
「へええ。べっぴんさんだもんね!」
「でも名前が一番好きだよ」
「……この流れで言われても嬉しくない」
「あれ。そう?」
おっかしいなー、なんて言いながら仙道はまだ名前の髪を手の中でもてあそんでいる。
なんとなくそれがこそばゆいような感じがして、名前は思わず顔を伏せた。
それに気付いた仙道が、小さく笑う。