海に行くのに
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(うう……。せっかく彰が誘ってくれたのになぁ……)
名前は憂鬱な気持ちで仙道への返信メールを打つ。
『今ちょうどお風呂出たところだよ。彰は何してたの? 明日のデートなんだけど、海じゃなくて違うところがいいな。むしろ海はやめよう。うん、二人のためにもその方がいいよ』
送って五分も経たないうちに、携帯が軽やかなメロディを奏でた。
背面ディスプレイを見ると、仙道からの着信だった。
名前は急いで携帯を手に取ると、通話ボタンを押してそれを耳に押し当てる。
「も、もしもし!」
『はは、もしもし。相変わらず元気がいいね、名前。今大丈夫?』
「もちろんっ!」
携帯から飛び出してくる大好きな仙道の声。
その艶のある低音が耳に心地よくて、名前の頬が自然と緩みだす。
『海が嫌だなんてどうしたの? 名前、夏に海で絶対デートしたいって言ってなかった?』
「言った……かな? 彰の気のせいじゃない?」
(うう。彰、ごめんね)
心の中で懺悔しながら、名前はあははと笑って誤魔化した。二キロも体重が増えたなどと決して仙道に知られるわけにはいかない。
誤魔化し笑いを続けていると、仙道がふうんと固い声音で呟いた。
それきり重い沈黙が受話口から流れてくる。
(う……。彰、怒っちゃった……?)
なんとか取り繕おうと名前が口を開こうとしたその時、仙道の声が再び受話口から聞こえてきた。
ほっと息をついて、名前は仙道の言葉に耳を傾ける。
『名前、俺のこと見くびってるでしょ。俺、名前が今年は海に行きたいって言ってたの、ちゃんと覚えてるよ』
「え? あはは、そうだっけなぁ?」
『うん。確か名前、湘南に生まれたからには、夏の間に一回は大好きな彼氏と海に遊びに行かなくっちゃあとか言ってなかった? もしかして俺は、この夏の間に名前の大好きな彼氏じゃなくなっちゃったの?』
どこか寂しそうな仙道の声音に、名前の胸がハッと掴まれたように苦しくなった。
手元の携帯電話を思わずぐっと握り締める。
「違うっ! 違うよ彰っ……! 彰のことは変わらず大好きだよ」
『…………』
携帯からは淋しそうな沈黙だけが返る。
名前は焦燥感に駆られながら、誤解を解こうと必死で言葉を続けた。
「ほんとうに違うの。彰、信じて。大好きだよ。夏の大会で活躍する彰はほんとうにほんとうにカッコよかったし、そんな彰の彼女がわたしだなんてほんとうにほんとうに幸せだよ!」
『それなら……』
「でも海はダメなの」
『なんで?』
「事件なの」
『は?』
名前の言葉に、仙道の間の抜けた言葉が返る。
『事件? 何が?』
訝しげな仙道の声。
名前は携帯を握り締めて、真実を伝える覚悟を決めた。
太った事を仙道に知られることより、仙道を悲しませる方がよっぽどつらい。
「あのね、彰。この際だから、嫌われちゃうのを覚悟で言うけど、わたし、わたし……っ」
意を決して口を開く。
「二キロも太っちゃったの!!」
『…………はぁ!?』
名前は憂鬱な気持ちで仙道への返信メールを打つ。
『今ちょうどお風呂出たところだよ。彰は何してたの? 明日のデートなんだけど、海じゃなくて違うところがいいな。むしろ海はやめよう。うん、二人のためにもその方がいいよ』
送って五分も経たないうちに、携帯が軽やかなメロディを奏でた。
背面ディスプレイを見ると、仙道からの着信だった。
名前は急いで携帯を手に取ると、通話ボタンを押してそれを耳に押し当てる。
「も、もしもし!」
『はは、もしもし。相変わらず元気がいいね、名前。今大丈夫?』
「もちろんっ!」
携帯から飛び出してくる大好きな仙道の声。
その艶のある低音が耳に心地よくて、名前の頬が自然と緩みだす。
『海が嫌だなんてどうしたの? 名前、夏に海で絶対デートしたいって言ってなかった?』
「言った……かな? 彰の気のせいじゃない?」
(うう。彰、ごめんね)
心の中で懺悔しながら、名前はあははと笑って誤魔化した。二キロも体重が増えたなどと決して仙道に知られるわけにはいかない。
誤魔化し笑いを続けていると、仙道がふうんと固い声音で呟いた。
それきり重い沈黙が受話口から流れてくる。
(う……。彰、怒っちゃった……?)
なんとか取り繕おうと名前が口を開こうとしたその時、仙道の声が再び受話口から聞こえてきた。
ほっと息をついて、名前は仙道の言葉に耳を傾ける。
『名前、俺のこと見くびってるでしょ。俺、名前が今年は海に行きたいって言ってたの、ちゃんと覚えてるよ』
「え? あはは、そうだっけなぁ?」
『うん。確か名前、湘南に生まれたからには、夏の間に一回は大好きな彼氏と海に遊びに行かなくっちゃあとか言ってなかった? もしかして俺は、この夏の間に名前の大好きな彼氏じゃなくなっちゃったの?』
どこか寂しそうな仙道の声音に、名前の胸がハッと掴まれたように苦しくなった。
手元の携帯電話を思わずぐっと握り締める。
「違うっ! 違うよ彰っ……! 彰のことは変わらず大好きだよ」
『…………』
携帯からは淋しそうな沈黙だけが返る。
名前は焦燥感に駆られながら、誤解を解こうと必死で言葉を続けた。
「ほんとうに違うの。彰、信じて。大好きだよ。夏の大会で活躍する彰はほんとうにほんとうにカッコよかったし、そんな彰の彼女がわたしだなんてほんとうにほんとうに幸せだよ!」
『それなら……』
「でも海はダメなの」
『なんで?』
「事件なの」
『は?』
名前の言葉に、仙道の間の抜けた言葉が返る。
『事件? 何が?』
訝しげな仙道の声。
名前は携帯を握り締めて、真実を伝える覚悟を決めた。
太った事を仙道に知られることより、仙道を悲しませる方がよっぽどつらい。
「あのね、彰。この際だから、嫌われちゃうのを覚悟で言うけど、わたし、わたし……っ」
意を決して口を開く。
「二キロも太っちゃったの!!」
『…………はぁ!?』