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(ううん、大事なことはそんなことじゃなくて……! だってだって、牧先輩にとって今年の大会は三年の、最後の大会なのに……!)
どうしよう。
脳裏に、今まで必死に練習してきた牧の姿が浮かぶ。
どうしよう。
大会に出れないなんてことになったら取り返しがつかない。どうしよう。
名前の瞳から涙が零れだしそうになったそのときだった。
ふいに肩に強い衝撃を感じた。
「お前、なに考えてんだよっ!」
信長に肩を突き飛ばされたのだとようやく理解したとき、信長の聞いたこともないような怒号が鼓膜を貫いた。
「ふざけんなっ! 練習中にボーっとしやがって……! 牧さんは、牧さんはなあっ! お前なんかと違って大事なひとなんだぞ!?」
「ノブ。やめなよ。名前ちゃんのせいじゃないだろ。今のは電子得点板にボールをぶつけた小菅先輩のミスだ」
今にも殴りかからんばかりの勢いの信長を、神が制止する。
「神さん、止めないでください! だってコイツが悪いんすよ! コイツがちゃんとしてれば、牧さんはあんなケガなんてせずにすんだんだ!」
「わ、わたし……」
唇が震えた。何か言おうとしたけれど、言うべきことが見つからずに途中で途切れてしまう。
わたしのせい。
信長の言葉が重く名前にのしかかる。
「むしろ付き合ったりなんてしてなければ牧さんが庇ったりなんか……!」
「……ノブ。さすがにそれは飛躍しすぎてるような気がするけど」
「とにかく!」
きっと信長が名前を正面から見据えた。
その眼差しの強さに、名前は思わず後ずさる。
「お前なんか牧さんにふさわしくない! お前が牧さんのそばにいても牧さんの足を引っ張るだけなんだよ! もしも……! もしも今のケガで牧さんが大会に出れなくなるようなことになったら、全部全部お前のせいだからなっ!!」
「!! ご、ごめんなさ……っ!」
「あっ、名前ちゃん!」
いてもたってもいられなくなって、思わず名前はその場を駆け出した。
いつのまに流れていたのか、頬を伝う涙がやけに冷たく感じる。
体育館を出ようとして、名前はそこに現れた人物と思い切りぶつかった。
「うおっと」
視線を上げると、なんとぶつかったのは牧その人だった。
名前は驚いて目を見開いて牧を凝視していると、牧も名前を見て驚いたようだった。
牧のごつくて大きな手が名前の頬に触れる。
「名前……? お前、まだ泣いて……」
「牧さんっ!」
牧のその言葉は駆け寄ってきた神と清田の声によって遮られた。
牧は名前の頬から手をはずすと、視線を持ち上げる。
「おお」
「牧さん、ケガは……!」
信長が咳き込むようにして牧に尋ねた。
そんな信長の髪をくしゃっと丸めるように撫でて、牧が笑う。
「こんなのケガのうちに入らんさ。ただの軽い打ち身だ。一応大事をとって明日朝一で病院には行くが、どうってことないだろ。痛みももうない」
「よ、よかったぁ……」
牧のその言葉に神と信長が安堵の息をもらした。
名前もほっと息を吐き出す。
どうしよう。
脳裏に、今まで必死に練習してきた牧の姿が浮かぶ。
どうしよう。
大会に出れないなんてことになったら取り返しがつかない。どうしよう。
名前の瞳から涙が零れだしそうになったそのときだった。
ふいに肩に強い衝撃を感じた。
「お前、なに考えてんだよっ!」
信長に肩を突き飛ばされたのだとようやく理解したとき、信長の聞いたこともないような怒号が鼓膜を貫いた。
「ふざけんなっ! 練習中にボーっとしやがって……! 牧さんは、牧さんはなあっ! お前なんかと違って大事なひとなんだぞ!?」
「ノブ。やめなよ。名前ちゃんのせいじゃないだろ。今のは電子得点板にボールをぶつけた小菅先輩のミスだ」
今にも殴りかからんばかりの勢いの信長を、神が制止する。
「神さん、止めないでください! だってコイツが悪いんすよ! コイツがちゃんとしてれば、牧さんはあんなケガなんてせずにすんだんだ!」
「わ、わたし……」
唇が震えた。何か言おうとしたけれど、言うべきことが見つからずに途中で途切れてしまう。
わたしのせい。
信長の言葉が重く名前にのしかかる。
「むしろ付き合ったりなんてしてなければ牧さんが庇ったりなんか……!」
「……ノブ。さすがにそれは飛躍しすぎてるような気がするけど」
「とにかく!」
きっと信長が名前を正面から見据えた。
その眼差しの強さに、名前は思わず後ずさる。
「お前なんか牧さんにふさわしくない! お前が牧さんのそばにいても牧さんの足を引っ張るだけなんだよ! もしも……! もしも今のケガで牧さんが大会に出れなくなるようなことになったら、全部全部お前のせいだからなっ!!」
「!! ご、ごめんなさ……っ!」
「あっ、名前ちゃん!」
いてもたってもいられなくなって、思わず名前はその場を駆け出した。
いつのまに流れていたのか、頬を伝う涙がやけに冷たく感じる。
体育館を出ようとして、名前はそこに現れた人物と思い切りぶつかった。
「うおっと」
視線を上げると、なんとぶつかったのは牧その人だった。
名前は驚いて目を見開いて牧を凝視していると、牧も名前を見て驚いたようだった。
牧のごつくて大きな手が名前の頬に触れる。
「名前……? お前、まだ泣いて……」
「牧さんっ!」
牧のその言葉は駆け寄ってきた神と清田の声によって遮られた。
牧は名前の頬から手をはずすと、視線を持ち上げる。
「おお」
「牧さん、ケガは……!」
信長が咳き込むようにして牧に尋ねた。
そんな信長の髪をくしゃっと丸めるように撫でて、牧が笑う。
「こんなのケガのうちに入らんさ。ただの軽い打ち身だ。一応大事をとって明日朝一で病院には行くが、どうってことないだろ。痛みももうない」
「よ、よかったぁ……」
牧のその言葉に神と信長が安堵の息をもらした。
名前もほっと息を吐き出す。