彼女の条件
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「うう、神先輩は優しいですね」
「はは、そう? ……もしかしたら名前ちゃんにだけ特別、かもしれないよ?」
「え?」
後半耳元で囁いてきた神に驚いて、名前はまじまじと神の顔を見つめた。
神はどこか含みのある表情でにこりと微笑む。
「なんてね」
「え、あ、えーと、あはは」
どう答えていいかわからず頬を薄く染めて誤魔化し笑いを浮かべる名前の腰に、信長のけりが炸裂する。
「なに赤くなってんだよ気持ち悪ぃっ!」
「いったぁ! なにすんのよ、ノブ! 赤くなってなんかないもん!」
「ハン! 神さん、こんなやつのことほっといて練習戻りましょ、練習」
「あ、うん。名前ちゃん大丈夫? ノブは俺がこのあとの練習できつく絞っておくから安心していいよ。じゃあ、ドリンクありがとうね」
神はドリンクを名前に手渡すと、のしのしと去っていく信長の後を追って練習に戻っていった。
名前は一人になると、ふうと小さくため息を零した。
先ほどの信長のせりふが頭の中に何度も閃いては消えていく。
くりかえし、くりかえし。
牧先輩に似合わない。牧先輩にはもっと綺麗で大人の女性がふさわしい。
そんなの信長に言われなくてもわかっている。
(でも牧先輩は言ってくれたから)
好きだよって。
(そう言ってくれたから……)
思って名前は目を閉じる。
だから、別れない。
牧がそう言ってくれるうちは、自分からこの幸運を手放したりなんてしたくない。
(だってわたしも、牧先輩のことが大好きだから)
名前はうしと気合を入れると、ふたたびマネージャーの仕事にとりかかった。
「名前、どうした? なんかボーっとしてるみたいだが……。具合でも悪いのか?」
牧のその言葉に、名前はハッと我に返った。
相変わらず信長の言葉が脳裏にこびりついて離れなくて、いつのまにかビブスを畳む手が止まっていたらしい。
額に感じる牧の暖かい手の平の感触。
牧はもう片方の手を自身の額に同じようにあてがうと、うーん熱はないみたいだな、と呟いた。
名前は牧のその様子に、自然と自分の口許が綻ぶのを感じる。
「ふふ、違いますよ牧先輩。ちょっと考え事です」
「考え事? なにか悩みでもあるのか?」
「あ、いえ、違います。今日おなかすいたなーって」
「はは、晩飯のおかずのこと考えてたのか。お前らしいな」
柔らかく笑って、牧が名前の頭を撫でる。
「でも、部活中にあんまり考え事するなよ? お前はそうキャパが広くないんだ。ボーっとしてると怪我するぞ」
「む。大丈夫ですよ」
「はは、そうか。まあ気をつけてくれ。――ああ、そうだ名前。あんまり腹が減ってるなら、帰りにどっか寄って帰るか?」
「え、いいんですか!?」
牧の思いがけない言葉に名前は顔を輝かせた。
が、すぐにその表情を曇らせる。