今の話の流れから考えられる、先程の出来事が起きた理由は…

「じゃあ…さっきのって」

「…そうだよ」

梓はぽつりと呟くように答えた。

「前田は、夢香が西と仲良くしてるのが気に食わなかったみたい。自分は振られたのにッて…」

彼女はそのままぽつりぽつりと、言葉を続けていく

「…それで…今朝、ちょうど2人が来る前に前田が…夢香が最近、西に付き纏ってんのキモくない？って言い出して…」

私はただひたすら黙って彼女の話を聞いていた。

「…私は…夢香がいじめられてるの知ってたのに…今度は自分がいじめられるんじゃないかって思うと怖くて、何もできなかったの…ごめんね…」

彼女は泣き出すと、ひたすらごめんと謝り続けた。

私もきっと、彼女の立場なら怖くて何もできないだろう。今まで西くんのいじめを止めてこなかったように。

「ううん…大丈夫だよ。言ってくれてありがとう」

私は彼女の背中をさすって慰める。
彼女はそのまましばらく泣き続けていた。

「私…きっとこれからも何も出来ないと思う…ごめん…」

梓は泣き止んでから少し落ち着くと、ティッシュで鼻を拭きながら小さく言った。

「ううん、梓の気持ちを知れてるだけでも心強いよ…ありがとう」

私は、笑顔を作って見せた。

「でも…」

彼女は心配そうに眉を下げている。

「大丈夫だって〜！前田だって、そのうち飽きるだろうし！」

私はわざと明るく言うと、バッと立ち上がった。

（梓を巻き込むわけにはいかない…2人で話してたってバレないようにしなきゃ）

「はぁ〜！美味しかったー！…あ、私ちょっとトイレ行くから、先降りるね！」

私は彼女にそう伝えると、そそくさと教室へ降りていった。