地獄のような4限目が終わり、チャイムが鳴る。

私は西くんに泣き顔を見られたくなくて、俯いたまま

「教科書、ありがとう」

と伝えると、すぐに自分の机を元の位置にもどした。

カバンからお弁当を取り出すと、屋上へと駆け上がる。

（…ふぅ）

屋上にたどり着くと、私は一呼吸置いて涙を拭いた。

（…なんか、散々だなぁ）

そのまま屋上に座ってお弁当を食べていると、ふと隣に誰かが座りこんだ。

「あ…梓」

「うん…一緒にご飯、食べても良いかな」

梓は遠慮がちにこちらを見つめてくる。

「うん…」

なんとなく気まずくて、しばらくお互い無言でお弁当を食べていた。

「…さっきの体育の時間…ごめんね」

梓が沈黙を破るように、重たい口を開いた。

「ううん。気にしてないよ。」

私は彼女を安心させるように、そっと微笑みかけた。

「……」

「……」

またしばらく沈黙が続く。

と、梓がぽつりと呟くように口を開いた。

「夢香…さ、最近西と仲良いよね」

「…うん、そうかも」

色々あったから…という言葉を飲み込む。

「…西と、付き合ってるの？」

「えっ…なんで」

なんで梓がそんなことを気にするのだろう…。そう思っていると、彼女は言葉を続けた。

「…前田ってさ…前、西のこと気になってたっぽいんだよね」

「えっ…！？」

（西くんいじめの主犯格の、前田が…？）

「なんか…前田が一年の頃に告白したらしいんだけど…西はそういうの興味なさそうじゃん。相手にされなかったらしい。」

「そうなんだ…」

「でさ…あの子って可愛いでしょ？だから今まで振られたことなかったらしくて…その腹いせにいじめ出したみたい」

「そんな…」

振られたからいじめるなんて…ひどすぎる。

「ひどい話だよね…私も一緒になって西のこと、からかってたからさ…なんにも言えないけど…」

梓は自嘲気味に笑った。