授業が始まると、西くんは教科書を開き2人の机の真ん中に置いてくれた。

「ありがと」　

お礼を伝えると、彼はチッ…と舌打ちをして目線を逸らした。

その後、ふと黒板を見上げた瞬間…

「痛…ッ」

ふいに、頭に何かが当たった。

｢え…｣

びっくりしながら当たったものが落ちた方向を見ると、そこにはぐしゃぐしゃに丸められた紙屑が落ちていた。

周りからヒソヒソと笑う声が聞こえる。

…ポトッ　とすぐ隣から音が聞こえて西くんのほうを見ると、彼の机の上に紙屑が落ちていた。
彼の肩を掠めて落ちたようだ。

「ちぇっ…ハズレか〜」

先生に聞こえないくらいの音量で、囁くような声が後ろから聞こえてきた。

(何これ…誰が、)

後ろを振り返ろうとすると、また頭にコツンと紙が当たった。先生はずっと黒板に向かっている。

「お、100て〜ん」

「おぉー、2連続じゃん」

「よーし、じゃ、次は西だな」

後ろからまた小さく声が聞こえる。どうやら彼らは私たちに紙屑を当てるゲームをしているようだ。

「……」

西くんのほうを見ると、彼は眉間に皺をよせてものすごい形相で座っていた。

すると、彼は二つの机の真ん中にかけてある自分のカバンへと手を突っ込んだ。カバンの中が少し青く光り出す。

（…まさか、ガンツの銃？）

私は咄嗟に西くんの腕を掴んだ。

「…ダメッ」

「…離せよ」

彼は腕に力を入れて、私の手を振り解こうとする。

「バレたらダメなんでしょッ…！こんな奴らのためにリスクを負うの？」

私は腕にグッと力をいれて彼を見つめながら、強い口調でそう言った。

｢……｣

｢……｣

しばらく無言で牽制していると

「……クソッ」

彼は諦めたようで腕の力を抜き、カバンから手を出した。

彼が手を出すと同時に私も彼の腕をパッと離す。

「そこ、うるさいぞ〜」

先生が急に振り返り、こちらを見ながら注意してきた。

「…すみません」

私は謝ると、まっすぐと椅子に座り直した。

「あいつら何いちゃついてんだよ…きめ〜」

「だよな…きしょ」

後ろから聞こえてくる声に、私は何もできずにただ歯を食いしばって堪えていた。

私が見ないようにしてきただけで、西くんはいつもこんな思いをしていたのだろうか…。

悔しくて、でもどうしようもなくて、何の反撃も出来ずに只々目から涙が零れ落ちていくばかりだった。