スーツに着替えてトイレから出ると、ラジオ体操のあの音楽が鳴り始めた。

(やば…始まっちゃう！)

私は小走りで部屋へと向かう。

「……」

部屋に戻り、チラリと西くんのほうを見た。

「……」

西くんは不機嫌そうに腕を組んで、わざとこちらを見ないようにそっぽを向いていた。

(…やっぱり怒ってる)

ふと気がつくと、西くんの後ろにはあの女の子がピッタリとくっついている。
その様子を見ると、何だか胸がギュッと締め付けられた。

私も彼女くらい素直に喜べればよかったのだが…。

音楽が鳴り終わり、ガンツの画面に前回と同じ文章が映し出された。

［てめぇ達の命は無くなりました。　新しい命をどう使おうと私の勝手です。　という理屈なわけだす。］

（…始まる…）

私はごくりと息を呑む。

その後ターゲットの画像と特徴が映し出されると、ガシャンッと音がしてガンツの両端が開いた。

「これ…なぁに？」

あの女の子が、ガンツの両端から飛び出た部分を指差して西くんに尋ねる。

「さァ…自分で考えれば」

彼はとてもイラついている様子で、女の子を冷たくあしらった。

しばらくすると転送が始まったようで、ジジジジ…と音がして西くんの頭が消え始めた。

「きゃっ…！！」

その様子を見て、女の子が一歩後ろに後ずさりしている。

ジジジジ…頭のほうから音がする。
私も転送が始まったようだ。