「あーあ…きッたねーな」

床に出来た血溜まりを見て、少しニヤつきながら西くんが言った。

「…何で…殺したの？」

「あァ？」

「…何で殺したのッ？」

私は西くんを鋭く睨みつけた。

「何でッて…お前が助けろって言ったんだろ」

「殺してなんて言ってない…」

私のせいで人が死んだ…そう思いたくなくて、私はつい西くんを責め立ててしまう。

「ハァ？…なンだよそれ…」

すると、奥にいた女の子がビチャビチャと血溜まりを踏みながら私の横を通り抜けて、西くんの元へ小走りで寄っていった。

「あ、あの…ッ！助けてくれてありがとう…ございます」

女の子は西くんにぺこりとお辞儀をした。

「…普通さァ、人に助けてもらったら、こうやッてお礼言うのがジョーシキじゃねーの？」

彼はその女の子を親指で示しながら、こちらを見て言った。

「…ッ」

そうだ。西くんは助けてくれただけ。

そう分かってはいるけれど…人が死んでしまったことを自分のせいにしたくなくて、どうしても素直になれなかった。

私はそのまま無言で立ち上がり、床に落としていたスーツを手に取るとトイレへ向かう。

「チッ…なんなンだよ…」

後ろからぼやいている西くんの声が聞こえた。