「やっぱり…」

フッと視線が切り替わり、私はこの間のマンションの一室に移動していた。

「あ、やっほー」

「あ…ロクさん」

ロクさんがこちらに軽く手を振っている。

周りを見わたすと、こないだいた黒いスーツの人たちは既に全員来ているようだった。

西くんももう来ていて、部屋の端に肩を組んでもたれかかっている。

「あ…」

西くんを見ると自然と胸が高鳴った。
何だか恥ずかしくて咄嗟に彼から目を背けると、私はロクさんの元へと駆け寄った。

「あの、これ…ありがとうございました。」

私は借りていたパーカーを入れた紙袋を渡す。

中には一応、お礼に軽くお菓子を入れておいた。

「えー、こんな丁寧に…全然いいのに〜」

「一応洗濯したんですが…シワとかあったらすみません」

「いやいや！むしろ、わざわざありがとね」

そんなやり取りを終えてふと振り返ると、西くんとパチリと目が合った。

「あ…こないだ制服ボロボロだったから、ロクさんにパーカー借りたの！」

何となく気まずくて、今度は西くんのほうへ駆け寄って事情を説明しはじめる。

「別に興味ねェけど」

「あー…そう、だよね」

彼は眉間に皺を寄せると、フンっと鼻を鳴らして目線を逸らした。

さらに気まずくなってしまい、私は西くんの側に立ったまま俯いていた。