（やっぱり…好きかも）

ふと、そう思った。
もう彼を怖いと思う気持ちもいつの間にか無くなっていた。

「ひどーッ！単純なんじゃなくて純粋なだけだもん！」

「へぇ…純粋ねェ」

西くんは意味深にニヤリと口角を上げた。

「…なによ」

「純粋なやつは人ン家に無理矢理上がり込んだり、無理矢理ゲーセンに連れ込んだりするんだな〜」

彼は目線を斜め上に向けて、へぇ〜…と呟いた。

「うッ…それは、ごめんってば…」　

そんな風にたわいもない話をしていると、いつの間にか別れ道に着いていた。

「あ…じゃあ私こっちだから」

そう言って立ち止まる。

「今日、すごく楽しかった…！ありがとう」

「別に…俺もまァ……少しは楽しめたし」

西くんが目線を下に逸らしながら、小さな声でボソリと言った。

彼が珍しく肯定的なことを言ったので嬉しくなって、ふふっと笑みが溢れる。

「じゃあ、また明日ね」

「……じゃあな」

私が手を振ると、西くんは片手を軽くあげて反対方向へ歩きだす。

その背中をしばらく見送ると、私も帰路へついた。