「あ、あと昨日、ロクさんに聞いたんだけど」

「ロク？あーあいつか…」

「西くんが、100点のご褒美…？について知ってるって。100点取ったらどうなるの？」

「…あいつ、余計なこと言いやがって」

西くんはイラついたようにボソリと呟くと、目線を下に逸らした。

「教えてよ」

私が軽く睨みつけると、彼は小さくため息をついて口を開いた。

「……100点取ったら、100点メニューの中からひとつ選べる。」

「100点メニュー？」

聞き慣れない言葉に眉をひそめる。

「1. 記憶を消されて解放される。2. より強力な武器を与えられる。 3. メモリーの中から人間を再生できる …」

西くんはいち、に、と指で数字を作りながら答えた。

「西くんは、100点を取ったことあるの？」

「…まだないけど。100点取ったやつなら見たことあるぜ」

私はごくりと唾を飲み込んだ。

「その人は…何番を選んだの？」

「100点取ったやつは何人かいるけど、まァ…大体1か2だな」

「解放…か、武器…」

私は先ほど彼から聞いたメニューの内容を思い返して口に出す。

「そ。2番選んだやつの武器とかすげェんだぜ」

西くんは少し興奮気味に言った。

「…どう、すごいの？」

「いつもの銃は、ターゲットを破裂させるだけだろ。そいつは、ターゲットのいる場所ごと圧力かけてブッ潰せるんだよ」

そう言うと彼は指で捻り潰す仕草をした。

「…たしかに戦闘には有利そうだね」

「まァな。しかも100点取れば取るほど、更にもっと強い武器が手に入る」

西くんは目を見開いて嬉しそうに言った。
強力な武器は、たしかに戦闘には使えそうだが、そんなことよりも私は1番が気になっていた。

「…もし、1番を選んだら…」

「…記憶を消されて解放」

彼はつまらなそうにそう言うと、
少しこちらに乗り出していた体勢を元に戻して座り直した。

「じゃあ…自由になれるってこと？」

「まァ、そういう事だな」

「もうあの部屋に呼び出されることもない？」

「あぁ」

西くんは頷いた。

「…記憶を消されて解放」

私はもう一度、1番のメニューを繰り返した。

100点を取れば今までのように普通に過ごせる。

それなら100点を取ろう。そう心に決めた。