「ね、夢香さ、今日西に話しかけてなかった？？何話してたの〜？？」

休み時間になると、親友であるクラスメイトの梓がニヤニヤしながら私の席に話に来た。

西くんは席を立っていて、クラスにはいなかった。

「えぇ〜、別に何も話してないよ？プリント落としてたから拾ってあげたけど」

「そうなんだ〜、でも西のプリント拾ってあげるとか夢香は相変わらず優しいよね〜」

彼女は茶化すようにそう言った。

私は梓と気も合うし、とても仲良くしているけれど、彼女も西くんのいじめに加担している。こう言うところはあまり好きではない…。

「えー、俺あいつにプリント配ってないんだけど」

西くんの前の席のクラスメイトが、笑いながら会話に入ってくる。

「あれ、そうなんだ…じゃあ落ちてたプリントはなんだったんだろう〜」

「お前のだったんじゃねぇ？」　

「あーそうかな…じゃあ勘違いしてたのかも」

私は笑いながら話を誤魔化した。

いじめに加担はしないけれど、私もいじめられたくないから強く言えない。

自分でもダサいな…と思うが、私はいじめをやめろとは言えなかった。

「えー何それ天然〜？」

梓は笑いながら私の肩を軽く叩いた。

「あはは…何それ、違うよ〜」

情けないけれど、私はとにかく笑って話を合わせることしかできなかった。


そしてその時私は、後ろからこちらを見ている視線には気がつかなかった。