「…良かった」

「……」

またお互いに黙ってしまい、気まずい空気が流れる…と、

「俺…」

西くんが私の太ももの包帯に視線をやって、ポツリと呟いた。

「…人が死ぬとことか見ると、興奮する」

「…え？」

突然の告白に一瞬動きが固まってしまう。

「えっと…そうなんだ」

どう反応していいのか分からずに少し苦笑を浮かべながらも彼の目を見つめると

「引かねェの…？」

西くんは少し驚いたように目を見開いた。

「うん…なんか、ぽいし」

彼の書いたサイトの記事を読んだり彼の行動を見ていて何となく気がついてはいたので、別に驚いたり引いたりはしなかった。

「…ぽいッて…ンだよそれ」

西くんは口を尖らせて不機嫌そうに目線を逸らす。

「……私が死ぬとこ見ても興奮するの？」

もしそうだったら嫌だな…と思いながらも様子を伺うように聞いてみると、彼は少し頷いた。

「…正直、お前の頭フッとぶとことか…見たい」

西くんは恥ずかしそうに口籠もりながら答える。
…何を恥ずかしがっているのだろうか。

「……」

死ぬところが見たいということは、私に死んで欲しいと思っているのだろうか…そう思うと私は何も言うことができず、私たちの間にはしばらく沈黙が続いた。

「…私は、死にたくない」

しばらく沈黙が続いた後、私は西くんの目を見ると、少し強くそう答えた。

「だッて…死んだら西くんに会えなくなるし」

少し強い口調で、思いのままに言葉を続ける。

「……」

彼は黙ってこちらを見つめ返してきた。

「一緒に帰ッたりとかお出かけしたりとか、もっとたくさん楽しい思い出作りたいし…私はもっと西くんと一緒にいたい…」

更に言葉を続けると、西くんは私の腕を掴んで自分のほうへと引き寄せた。

「わ…ッ！？」

腕を引っ張られて体制を崩してしまうと、彼は私の体を優しく受け止めて、そのまま優しく抱き寄せた。

「え…、西くん？」

「……」

西くんは私の頭をそっと撫で始めた。

突然の優しい仕草に混乱してしまい、そのまま撫でられることしか出来ずにいると

「分かッた…お前は傷つけない」

彼は私の頭を優しく撫で続けながら、耳元で小さくボソリと呟いた。

「…ほんと？」

私はそっと頭を上げて西くんの顔を見つめる。

「…」

彼はコクリと頷いた。