そのまましばらく眠ってしまっていたようで、ふと目が覚める…。背中に僅かな重さを感じてふと見ると、私の背中には彼がいつも着ている紫色のパーカーがかけられていた。

「あれ…？」

ベッドの上には西くんがいなかった。
顔を上げて部屋を見渡しても見当たらない。

「西くんッ？どこッ？」

私は、病み上がりの彼が1人でどこかへ行ってしまったのではないかと不安になって、ガバッと起き上がるとキョロキョロとあたりを見渡した。

するとすぐに部屋の扉がスッと開いて、西くんが入ってきた。彼は変わらずスウェットのままで、片手には黒スーツを抱えている。

「あ…西くんッ！！どこ行ってたの！？」

「……トイレ」

「あ……そッか」

必死に彼を探してしまっていたが、よく考えたら普通はまず、トイレにでも行っているんだろうなと思うはずだ。
少し寝ぼけてしまっていたようで、大慌てで彼を探していたことが途端に恥ずかしくなって俯いてしまう。

「……」

「……」

しばらくなんとなく気まずい沈黙が続くと、

「あ…体調、良くなった？」

私は気まずい雰囲気を断ち切るように口を開いた。

「…だいぶ」

そういうと西くんはベッドの上に胡座をかいて座った。
私は熱が下がったか確かめるように、自分のおでこに手を当ててから、同じように彼のおでこに手を当てる。
朝よりも大分熱が下がっているようで、彼のおでこの熱さは私とあまり変わらなかった。

「……本当だ。さっきより大分ましになったね」

「……」

彼は無言でコクりと頷いた。