彼は部屋に入ってくると、すぐに部屋の入り口でしゃがみ込んでしまった。

「大丈夫？…とりあえず横になりなよ」

私は西くんの手を取るとベッドまで誘導してそっと横にさせた。彼は苦しそうにゲホゲホと咳をしている。

私は水切りかごの中にあったコップを取り出して、スポーツドリンクを注ぐと彼に差し出した。

「これ、飲める？」

「うん…」

少し起き上がらせてコップを渡すと、西くんは素直にコップを受け取ってゴクゴクとスポーツドリンクを飲みだした。

喉が渇いていたのか、いい飲みっぷりだ。

彼がスポドリを飲んでいる間に、袋の中から冷えピタを一枚取り出す。

「ちょっと…前髪、上げれる？」

「……」

コップを一度受け取って私がそう言うと、彼は両手で自分の前髪を上げてくれた。

「ちょっとヒンヤリするかも…」

「ん…」

西くんのおでこにそっと冷えピタを貼る。彼は一瞬目をぎゅっと瞑ると、ゆっくり目を開けてじっとこちらを見つめてきた。

（なんか今日の西くん…子供みたい）

普段とは違い素直に言うことを聞く彼は、なんだか子供のようでかわいいと思ってしまう。

「偉いね」

私は西くんの頭をゆっくりと撫でた。

「…ッ、ガキ扱いすンな…」

そう言いながらも、彼は素直に撫でられていた。

それからしばらく撫で続けたあと、私はご飯を作ってあげようと思い、スっと立ち上がる。

「お家のお皿とか鍋とか、借りていい？」

「いいけど…」

「ありがと。お粥作ろうと思うんだけど…食べれそう？」

そう私が聞くと、

「うん…腹減ッた」

彼は少し照れくさそうに唇を噛み締めて言った。

「ん、よかった。じゃあ作ってくるね」

私はそのまま部屋を出て廊下にあるキッチン台へ移動すると、持ってきた食材を使いお粥を作り始めた。