第零訓
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とある平日の朝。
「おはようございまーす」
いつも通りの時間にいつも通りの声をかけながらガラガラと玄関の扉を開いて、メガネをかけた地味めな少年――志村新八は草履を脱いで万事屋へ入った。
短い廊下を歩いてすぐの居間に電気は点いておらず、家主とこの家に居候している少女は未だ夢の中であるということが分かった……否、あの問題児二人が新八がやって来るより先に起きていることなど有り得ないのだが。
新八は軽くため息を吐いて背負っていた荷物をソファに降ろすと、ひとまず一応の上司である男――坂田銀時を起こす為に彼の寝室へと足を進めた。
「銀さん、そろそろ起きてください。いつまで寝てるつもりですか」
スパーンと小気味よい音と共に襖を開き、布団から覗く白髪頭に向けてよく通る声を張り上げる。
足袋と畳が擦れる音を立てて近づくが、彼は起きる気配すら見せず、むしろ新八の声をシャットダウンするかのように頭から布団を被ってしまった。
コレは何を言っても埒が明かない、と早々に説得を諦めた新八が布団の端を掴んで強引に剥ぎ取ると暖まっていた体が外気に晒され、ぶるりと身震いした銀時は恨めしそうに新八を見上げる。
「だァ〜〜〜ッ…ンだよ新八ィ、今日は日曜だろーが。休日くらいもちっと寝かせろや」
「今日は日曜日じゃなくて火曜日です。というか、毎日休日みたいな生活してるダメ人間が何言ってんですか」
「もう日曜でも火曜でも、平日でも休日でも何でもいいからさァ…5分、あと5分寝かせて。300円あげるから」
「いらねーよ300円なんて! もー、いい加減にしてくださいよ! いい大人が恥ずかしくないんですか!」
ギャーギャーと騒がしくいつも通りのやり取りをしていると、ペタペタと裸足で床を歩く音と共に可愛らしい声が聞こえてきた。
「お前ら毎朝毎朝うるさいネ。私の神聖なる眠りを妨げんなヨ」
寝癖がついたボサボサ頭をそのままに眠たげな目を擦る少女――神楽は心底迷惑そうにぼやく。
寝起きで不機嫌な神楽にも慣れっこな新八は、銀時から剥ぎ取った布団を手早く畳みながら挨拶を投げかけた。
「おはよう神楽ちゃん。今日も寝癖酷いよ、顔洗ってさっぱりしておいで」
「うるっさいアル新八。私は誰の指図も受けないネ」
「いや、別に…指図したつもりはないんだけど……」
苦笑いする新八の足元でモゾモゾと蠢く気配。
ようやく起きてくれたかと目線を落とせば、敷き布団にくるまって再び眠りに就こうとするダメ人間の姿があった。
どんだけ寝たいんだこの男は……。
呆れを通り越して怒りがこみ上げてくるのが分かり、その感情のままに新八は語気を荒らげる。
「銀さん、ホントいい加減にしてくださいよ! こんな時に依頼が来たらどうすんですか!」
「だーいじょーぶだって。昨日も一昨日も、そのまた前の日だって客なんて一人も来なかったじゃねェか。来たのは家賃払えっつーうるせークソババアだけだったし。どーせ今日もそのパターンだろ」