このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

零の復活

 気がつくと私は頼れる相棒、柄慧(がらけい)を握り締めて資料室のような場所に立っていた。
 頭を締めつける感覚……レイヤーの私には分かる。ウィッグだ。さらに瓶底メガネが視界を歪め、死覇装の下の(ささやかな)乳はぺちゃんこに潰されている。紛うことなき(いつかの夢小説界における)正装である。男装ともいう。
 左右の耳がやたらと重いのは、霊圧制御装置でもつけられているのだろう。ピアス六個や七個などザラであったし、時にはかの十一番隊隊長と同じ霊圧制御装置をつけたりしていたのだ。私に動揺はない。

 しかし、自分の立ち位置はどうなっているのだろうか。もさい男装なので逆ハーの線は消えた。霊圧制御装置の暴力的な数は間違っても平凡でないことを訴えている。ということは、

「元零番隊男装嫌われ最強主……」

 これが私に与えられた設定か。かつて栄華を誇った伝説のジャンル。だが、栄枯盛衰は世の倣い。私も現役を退いて久しいので、上手く順応できるかどうか。下手をすればアナフィラキシーショックで死ぬ。慎重に動かねば。

 すでに痛み始めた心臓を押さえつつ、素早く気配を探って身を隠した。近くに人はいない。恐る恐る柄慧(がらけい)を開き、懐かしの感触に指を馴染ませる。

「画面ちっちゃ。自慢の両手ブラインドタッチ衰え過ぎててヤバい……もうあの頃の私じゃないのね。年を取ったものだわ」

 焦る必要はない。大事なことは、いつだってメールの下書きに残すものだった。
 七桁の暗証番号は昔考えた夢主の名前からとった。今も使っているので指に迷いはない。ちなみにこの夢主はすでにネットの海から消滅しており、もはや存在するのは私の頭の中とこの七桁の数字だけとなっている。電子の姫様は皮肉にも脱色と呼ばれたこの世界で存在していたが、会えば私が木っ端微塵に吹き飛ぶ呪いがかかっているので存在しないことを願うばかりである。

 メールに残されていた内容は大きく分けて三つ。
 一つ、私自身の設定。
 二つ、斬魄刀の設定。
 三つ、斬魄刀の使用方法。
 正確に言うと三つ目は取扱説明書だ。このアプリに入力した夢小説展開が現実になるよ!ただしクロスオーバーはこの機種(柄慧)ではできないから気をつけてね!と諸注意に書かれている。

 なるほどなるほど。
 つまり、エクスカリバーは我が手にあると。
3/11ページ
スキ