零の復活 2018
卯ノ花隊長にお礼を言って四番隊隊舎を後にした私は、まず自室へ戻って太刀を一口腰に差した。これから会いに行く相手の斬魄刀だ。歓喜のあまり震えている。あんまりしつこいようならガムテープで縛りつけることも吝かではない。
時刻はすでに夜。定時はとっくに過ぎた。目標の隊舎屋根へ着いたところで柄慧を取り出し、夢小説展開を指定するべく入力を開始。いるのは主要キャラではなく私だが許してくれ。
「“気がつけばほとんどの同僚が退社していた。長い間、集中して作業を進めていたせいか、体のあちこちが凝っている。一度切れた集中もすぐには戻りそうにない。ふと、窓の外を見上げた。気分転換に屋根へ上ってみるのもいいかもしれない。私や、今の同僚たちにそういったことをする者はあまりいないが、あの人は、夜にはよく高いところへ上っていたように思う。なんとなく、今なら会えるような気がした”……これ、他にキャラ用意した方がいいんだろうか」
入力しながら疑問に思ってしまった。……いや、よそう。嫌われ主の名は伊達じゃねえ。特に今は姫姫の噂もある。これ以上、自ら旗を立てるスタンスはよろしくない。
「つつおみ、隊長……?」
背後から、真名を呼ばれて振り返る。私は柄慧の始解を解いて腰に戻し、代わりに太刀を鞘ごと引き抜いた。
闇夜にも負けぬ白い太刀……鶴丸国永を。
「お久しぶりです。小坂マリ三席」
「まさか本当に会えるなんて……。私、隊長に会えそうな気がしてここへ来たんです」
それに関してはすみませんとしか言いようがない。
「えー、あまり時間もありませんので、まずは鶴丸国永をお返しします。それと、九番隊に集まっている情報があれば教えていただきたいのです」
小坂マリこと元零番隊三席は、現在九番隊に所属している傍観・最強主だ。九番隊は月刊瀞霊廷通信の発行を担当していることもあり、雑多な情報が最も集まる隊である。
姫宮さんに関する情報も、元零番隊隊員の中ではマリちゃんが一番掴んでいるだろうと考え、三番隊の早瀬より先にこちらへ接触を図った。
私の意図を正しく汲んだマリちゃんは、片膝をついて報告の姿勢を取る。
「本日の刺傷事件を含め、姫宮姫華十番隊隊士についてご報告いたします。彼女は黒です」
「結論が早い」
「細かいところについては、つつおみ隊長のお耳に入れるほどではないと思ったのですが……」
「いちおう、いちおう教えてください」
「分かりました」
そこから始まったマリちゃんの仔細報告。最初に十番隊で私が姫宮さんを襲ったという話が出たときからマークしていたらしく、彼女自身が表立って動く、周囲の人間を動かすといった直接的な行動はないものの、明らかに意思をもって誘導しているとのこと。
瀞霊廷内に居を構える下級貴族の出で、母親譲りの愛らしい顔立ち。男性死神の中にはファンクラブがあるほどで、取り巻きの中には彼女の口添えで昇進できた者もいるとかいないとか……。
ここから先は古傷が痛んでろくに聞き取れなかった。何せ親の顔ほど見た設定、いや、話だったのだ。とりあえず黒幕であることに間違いはないらしいのでもうそれでいい。
気がつけばそれなりの時間が経っていた。戻りが遅いことを心配したマリちゃんの同僚が探しに来たのを合図に、今宵は解散とした。
残る斬魄刀は小狐丸と堀川国広。これを持ち主に返さねば零番隊お披露目イベントは発生しないだろう。私の胃に残された時間は少ない。早く、できるだけ早く、エンディングを迎えなければこの身は持たない。
私は急かされるように、月夜の下を駆け抜けた。
時刻はすでに夜。定時はとっくに過ぎた。目標の隊舎屋根へ着いたところで柄慧を取り出し、夢小説展開を指定するべく入力を開始。いるのは主要キャラではなく私だが許してくれ。
「“気がつけばほとんどの同僚が退社していた。長い間、集中して作業を進めていたせいか、体のあちこちが凝っている。一度切れた集中もすぐには戻りそうにない。ふと、窓の外を見上げた。気分転換に屋根へ上ってみるのもいいかもしれない。私や、今の同僚たちにそういったことをする者はあまりいないが、あの人は、夜にはよく高いところへ上っていたように思う。なんとなく、今なら会えるような気がした”……これ、他にキャラ用意した方がいいんだろうか」
入力しながら疑問に思ってしまった。……いや、よそう。嫌われ主の名は伊達じゃねえ。特に今は姫姫の噂もある。これ以上、自ら旗を立てるスタンスはよろしくない。
「つつおみ、隊長……?」
背後から、真名を呼ばれて振り返る。私は柄慧の始解を解いて腰に戻し、代わりに太刀を鞘ごと引き抜いた。
闇夜にも負けぬ白い太刀……鶴丸国永を。
「お久しぶりです。小坂マリ三席」
「まさか本当に会えるなんて……。私、隊長に会えそうな気がしてここへ来たんです」
それに関してはすみませんとしか言いようがない。
「えー、あまり時間もありませんので、まずは鶴丸国永をお返しします。それと、九番隊に集まっている情報があれば教えていただきたいのです」
小坂マリこと元零番隊三席は、現在九番隊に所属している傍観・最強主だ。九番隊は月刊瀞霊廷通信の発行を担当していることもあり、雑多な情報が最も集まる隊である。
姫宮さんに関する情報も、元零番隊隊員の中ではマリちゃんが一番掴んでいるだろうと考え、三番隊の早瀬より先にこちらへ接触を図った。
私の意図を正しく汲んだマリちゃんは、片膝をついて報告の姿勢を取る。
「本日の刺傷事件を含め、姫宮姫華十番隊隊士についてご報告いたします。彼女は黒です」
「結論が早い」
「細かいところについては、つつおみ隊長のお耳に入れるほどではないと思ったのですが……」
「いちおう、いちおう教えてください」
「分かりました」
そこから始まったマリちゃんの仔細報告。最初に十番隊で私が姫宮さんを襲ったという話が出たときからマークしていたらしく、彼女自身が表立って動く、周囲の人間を動かすといった直接的な行動はないものの、明らかに意思をもって誘導しているとのこと。
瀞霊廷内に居を構える下級貴族の出で、母親譲りの愛らしい顔立ち。男性死神の中にはファンクラブがあるほどで、取り巻きの中には彼女の口添えで昇進できた者もいるとかいないとか……。
ここから先は古傷が痛んでろくに聞き取れなかった。何せ親の顔ほど見た設定、いや、話だったのだ。とりあえず黒幕であることに間違いはないらしいのでもうそれでいい。
気がつけばそれなりの時間が経っていた。戻りが遅いことを心配したマリちゃんの同僚が探しに来たのを合図に、今宵は解散とした。
残る斬魄刀は小狐丸と堀川国広。これを持ち主に返さねば零番隊お披露目イベントは発生しないだろう。私の胃に残された時間は少ない。早く、できるだけ早く、エンディングを迎えなければこの身は持たない。
私は急かされるように、月夜の下を駆け抜けた。
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