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零の復活 2018

 己の酒の弱さを舐めていた。二日酔いです。
 逆ハー夢の代償が……でかい……頭が……痛い……。

 昨夜の酒盛りは時間が時間だったこともあり、一時間ほどでお開きとなった。つまりそれほど量は飲んでいないのだが、もともと酒が弱かったことに併せ、思わぬストレスから来る寝不足で頭痛がグランドフィナーレを迎えた。全脳細胞がスタンディングオベーション。あっー! いけませんお客様! 着席なさってください!
 おまけに、ここには常備薬の優しさ半分薬がない。目を開けることすら億劫になるほどの頭痛。こやつを抱えて嫌われ主をまっとうするのはいささか荷が重い。
 基本的に休むコマンドを持たない私は悩んだ。そして、閃いた。

「そうだ、四番隊へ行こう」

 どうせ回される仕事は足と時間を使う雑用ばかり。おまけに日中はサファリパークか草むらかというくらい野生の死神が飛び出してくるのだ。ちょっと寄り道をしたところで夜の残業量は変わらない。
 善は急げと気配を消して四番隊隊舎を目指す。気配を消すなんてどうやるのか分からないが、柄慧をサイレントモードにしておけば気配は消える。そういうものだ。私と柄慧はズッ友。そういうことなんだ。

 かつての脱色夢小説において、卯ノ花隊長は絶対の味方だった。暗黒微笑の使い手であることも多かったが、いわれのない暴力を受ける夢主の身を案じ、時には詰め寄る主要キャラの前に立ちはだかり、そして母のような慈愛でもって夢主を包み込む……。そんな立ち位置であることが多かった。
 対して、虎徹勇音副隊長は卯ノ花隊長の上記のような行動に疑問を持つことが多い。「どうして隊長はあんな人を!」「勇音、真実を見誤ってはなりません」「え……?」「ザアッ……(風の吹き抜ける音)」とかそんな感じだったはず。
 まあ、あとは花太郎が安全パイ。そのどちらかに診てもらえればいいなと呑気に考えながら、窓から不法侵入をかます私こと最強主。
 このとき、最強主らしく霊圧を探るだのなんだのしておけば良かったのだが、何も考えずこんにちはしたお陰で予想外の人物と鉢合わせた。これもまた夢主の宿命である。

「こんにちは。窓から来るなんて元気がええんやね」
「こ、こんちは……」

 市丸ギン隊長だ。扱いに困る市丸ギン隊長だ。そしてNOCだ。やはり扱いに困る。
 とりあえず、いつまでも窓枠にしがみついているわけにもいかない。仕方なく部屋へと入れば、見てるんだか見てないんだかよく分からない蛇のような視線が絡みついた。いいからさっさと乱菊さん娶れよと叫びたいのを堪え、なぜここにいるのかを問う。

「市丸隊長は……どういったご用件で?」
「理由なんてないで。気分や。そういう賀田くんこそ、なんでここにおるの?」
「備品の補充です。表からですと、追い返されてしまったことがあるので。卯ノ花隊長にも許可はいただいております」

 嘘っぱちもいいところだが信じてるぞ夢主パワー! 唸れ夢主パワー!
 これっぽっちも私の言い分を信じていなさそうな市丸隊長は、「ほな、そないなことにしとこか」とにっこり笑うので私の冷や汗が大変なことになっている。あとで卯ノ花隊長に口裏を合わせてくれるよう頼まなくては。
 このまま居てもボロを出すだけだと悟った私は、一礼して市丸隊長の横を通り抜けた。しかし、私もまた夢主。ドアノブに手をかけたところで、骨ばった細い手に引き止められてしまった。
 右肩に手。左肩にも手。身を屈めるようにして、耳元に口が寄せられる。殺すなら今かとよく分からない方向に走り始めた思考を遮るかのように、彼はそっと囁いた。

「蒼ちゃんに何かあったら、僕も黙ってへんで」

 私はただ、黙って頷くことしかできなかった。
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