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零の復活

 地獄のような尸魂界にも朝日は昇る。

 結局、あのあと他の零番隊隊士を見つけることは叶わなかった。懐に忍ばせられそうな短刀なら持ち歩けるが、他は深夜に見つけるか取りに来てもらうかするしかなさそうだ。我の強い斬魄刀ばかりなので、早々に主と出会えたへし切長谷部を羨むように震えている。何も見なかったことにした。
 出勤すれば私の席には今日も菊の花。菊は一番隊の隊花、誇り高き潔白の花である。こんな嫌がらせに使うなんてと哀しい顔をしつつ、落ちた花粉を手で払う。
 早朝にこっそり積んだであろう書類の山は、十一番隊絡みのものが多い。今日の嫌がらせは十一番隊コースか。十一番隊は嫌われ主人公にとってはなかなか良い人たちであることが多かった上、ここには友人のお股がいる。私の行動は早かった。

「十一番隊へ書類を届けに行ってきます」

 弾みそうになる声を必死に抑え、足取りが重い振りをしながら八番隊隊舎を出る。これが狩人の世界ならオーラを消して絶で移動するところだが、ここは死神の住む尸魂界。力の源は霊力であって念ではない。平隊士が瞬歩を使うのも怪しい。モブに紛れモブになりきりモブの如く背景と同化する。それが最善の選択。
 正直、嫌われ主人公である以上、なんらかのイベント発生は覚悟していたのだが驚くほど何も起きなかった。これは恐らく、夢主が同時に七人存在しているために比重が分散された結果だろう。そう、私はまだ見ぬ友人たちに救われたのだ。離れていても頼もしい。それが同志、零番隊の絆。



「あんた、うちになんか用か?」

 何事もなく到着した十一番隊の隊舎前にて。呆けていた私にそう声をかけてきたのは、三席の斑目一角だった。十一番隊で一番話の分かる男に会えるとは。これは幸運といえよう。

「お忙しいところ申し訳ありません。おま……股吉、さんは今いらっしゃいますか?」
「股なら裏の道場で稽古つけてる最中だ。さっき休憩終わって再開したばっかだから、ありゃしばらくかかるだろうな」
(あいつ股って呼ばれてんのか)

 お股こと股吉は最強主友情夢。その肩書に違うことなく、曲者ぞろいの十一番隊で友情を育んでいるらしい。稽古をつけているという言葉からして、戦闘力においても信頼を得ている様子。良いことだ。私の心に優しい展開である。
 しかし、呑気な面を晒す私をよそに、斑目三席の目付きは剣呑なものへと変わった。私は知っている。これは嫌われ主を見る目だ。

「……あんたの噂はかねがね。まあ他所の隊のいざこざなんざ俺の知ったことでもねえが、うちのもんに何かしようってんなら、話は別だ」

 地面を突いていた切っ先が、踊るようにしてこちらを向く。
 斬魄刀ではない。ただの木刀。しかし人を斬る覚悟を乗せた殺気に、一介の平隊士が怯まないのもおかしい。顎を引き、一度息を飲んで視線を落とす。

「股吉さんに何かしようという意思はありません。この書類だけ、渡してはいただけませんか」
「……この前あいつが暴れたときのか。ま、後であいつに渡しといてやるよ」
「ありがとうございます」

 お股暴れたんかという場違いな言葉は喉の奥に押し留めた。どうやら彼女は十一番隊らしく凶暴化している様子。今会ったところで愛刀がないと知ったらまた暴れるかもしれない。きっと、これはこれで良かったのだ。

 適当に前向きなことを考えつつ、私は次なる旗の回収へ向かうことにした。先程から懐の斬魄刀が主を求めて震えている。
 もしかしたら、主の身に何かが起こっているのかもしれない。急がねば。
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