衝動の詩
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人間は脆い。魔界には無い絹のように美しい肌、細い骨、寿命、非力。無能力且つ平々凡々とした生き物。だが、感情だけは宇宙にも勝るとも劣らないカオスな物を持っている。嗚呼、なんて繊細だ。
「名無しさん。」
「なに?」
動画撮影後、公園のベンチに腰を掛ける男女。女は俯きながらミステリー小説を広げ、没頭する。片や男…いや、悪魔は足を組みノートパソコンを広げ、先程撮った動画を再生し確認を行う。
「触って良いですか?」
「やだ、ど、どうしたの?」
何だいきなりと言わんばかりに眉間にシワを寄せ、眉をぴくりと動かす。読みかけの小説に栞を挟み、そっと閉じる。俯いていた顔を上げ悪魔の方へと目を向けると平然とした様子が伺えた。
「興味本位です。」
「……好きにどうぞ。」
特段断る理由もない。再び開かれた小説。栞を別のページに挟み込み、読書へと戻る。にんまりと笑った悪魔は名無しの髪に触れ、一本一本を確かめるように指通りなめらかに確認してゆく。見開かれた目は嬉々としながら驚いている様子だった。
「細い、ですねぇ〜。」
耳、首筋、肩、腕と指を滑らしてゆく。掴まれた手首はまるで骨の形を確かめるように握られた。
「こんなものなんですね…」
「本が読みにくいわ」
「邪魔して良いって言いましたよね?」
「言ってない言ってない。」
ブラックの手を振り払おうとするがビクともしない。
「それだけ、ですか?」
「え?」
「これさえもどうにかできませんか?」
掴まれた手首。やんわりとしか握られていないのに振り払えずその力のなさにブラックが疑問を呈した。
「ブラックが馬鹿力なだけよ。それに私は女の子よ。勝てるわけ無い」
「オレちゃん、力は入れてません。」
それはそれでむかつく。読みかけの小説の角でブラックの頭を叩いてみる。
「もうおしまい、ほら、離して。」
「……今のは何です?」
ケロッと答える悪魔。何にも効きやしない。許可したことを後悔する。深く溜め息をつき、半ば諦めかけたら強く抱き締められた。ミシッと音を立て、肺が苦しくなる。
「痛っい!もう、なに!さっきからぁ!」
「すみません、名無しさんがあまりにか弱くて。」
小動物のような愛らしさ。生かすも殺すも自分次第。欲を孕んだ瞳が名無しを捉える。
「まるで、壊れ物のようですね」
是非、壊してみたくなります。
―終―
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