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オリジナルBL短編小説 / 全年齢

「寒ィ~~~」

駅を降りた途端、遮る建物の少ないロータリーは風がビュウビュウと吹き付けた。

「さっきいたトコよりすごく寒い気がするんだけど」
「田舎だからじゃん?県またいでるし」
「もーやっぱこなければよかった」
「いいじゃん、俺がいるし」

ポケットに突っ込んだ手の、空いた腕の隙間に手を滑り込まされて口を閉じた。

自宅からわざわざ遠く離れたこの街に来る意味。何もないのはわかってても、好きな人がいるところだからこうしてここに立っているのだ。

「早く帰るぞ」
「うん」

厚手とはいえ羽織るのがパーカー1枚では心もとなかったが、くっついているところだけはじんわりと温かい。

しばらく歩いていると、腕に回された手がずりずりと下がっていく。
そのままスルリとポケットに入れた手の内側に手を滑り込まされた。

「冷たっ」
「手ェ寒ィんだよ、あっためてよ」
「やだよ、こっちの手が冷える、寒いからポケット手突っ込んでるのに」

ポケットのなかで握ろうとする手を避けたり握ったりと攻防戦を繰り広げる。

「ほら、あったかくなってきた」
「結果論じゃんそれ」
「いいんだよ、手握りたいし」

素直に言われると、仕方ないと思えてしまう自分は甘いと思いながら、ポケットにある手を握り返した。
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