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オリジナルBL短編小説 / 全年齢

夜風が頬を撫でる。
よく歩いて通る街も、船の上からだとまた違った景色を見せる。

「酔いは大丈夫?」
「うん」

乗り物酔いしやすい俺を気遣って、話しかけてくれる。
こういうさりげない事でも嬉しくなる。

「景色、きれいだね。あ、あそこの橋、通ったことある」
「ほんとだ、夜だとライトアップされてきれいだね」

パンを買いに、二人で歩いたところ。
手をつなげたら楽しいのに、と思いながら少しだけ不自然ではない程度にくっついて歩いた。

「あのパン美味しかったね」
「バター塗って焼いただけなのにね!」

同じ思い出を共有している、というのがわかるだけでまた心臓は嬉しそうに跳ねる。

「あ、あっちの建物……、っ」

そっと手が温かいものに包まれる。
驚きに顔を向けると、内緒だよ、というように小さくウインクされた。

「耳赤い」
「むう」

周りの人にバレないように、暗がりで手を重ねる。

「寒いし」
「うん、夜風、寒い」

仕方ないなという顔でぎゅっと手を握り返した。
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