独りに
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ねえ。
独りにしないで。
私を助けてくれたあなたなのに。
私に希望を与えたあなたなのに。
どうして私を置いて行ってしまおうとするのか。
わからない。
いつもクールなあなた。
小さなロマンチストなあなた。
お酒と煙草が大好きなあなた。
仲間たちと楽しそうに戯れるあなた。
そばで見ているうちに、これだけはわかったの。
素敵な人だ、と。
本当にそれだけなの。
あなたをどれだけ見ていても。
どんなにお喋りをして、どんなに触れ合っても。
私にはそれだけしかわからなかった。
あなたは私に言ったよね。
何があっても必ず守る、と。
私は笑顔で答えたけれど、ふとココロに疑問が出来上がったの。
だったらあなたは誰に守られるの?
あなたには守ってくれる人なんていない。
いつでも独りのあなたに、私が勝手に独りで寄り添っていただけ。
一緒になれた気がしていただけ。
私にはあなたを守る力なんてない。
なんて無力なんだと、私は呟く。
対してあなたはなんて有力なんだろう。
だけど、それももう終わりなのね。
私の腕の中で浅く息をするあなたは、だんだん温もりが消えていく。
あなたは馬鹿よ。
本当に私を守るなんて。
男に二言はないなんて強がって。
その結果がこれじゃあ笑えないわ。
証拠に私の手が見たくもないあなたの紅に染まっていく。
豆鉄砲と言ったら可愛いけれど、
拳銃と言ってしまえば恐ろしいものに変わる。
あなたの愛した女は。
そんなこと望んでいないのよ。
徐々に眠りにつき始めるあなた。
それを私は悲しく見つめているだけなの。
薄情と言ってもらっても構わない。
守られておきながら悲しむことしかできない私はとんだ薄情者だもの。
笑っちゃうわ。
ふいにあなたが薄く目を開く。
私はそれに息を呑む。
声が出ないの。私は。怖くて。恐ろしくて。
私は受け入れられないの。
あなたがいなくなるなんて。
そんな私にあなたはそっと微笑むの。
綺麗に。美しく。儚げに。
かすれ切った声で、いつもの調子で言うの。
「お前はいい女。俺の最高の相棒だ」
なに泣いてるの、あなたらしくない。
なに泣いてるの、私らしくない。
ねえ。
目を閉じないで。
私を見ていて。
いなくならないで。
もっとそばにいて。
ねえ。
独りにしないで。
最後に。
あなたは素敵な人でした。
いい男でした。
私の最高の相棒でした。
そして私も錆びれていく。
あなた以外の人なんて、受け付けないわ。
Fin. 2014/5/9