第4章
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やっぱりこの子、気づいてるんじゃ無いかしら・・・。
不二子と星海は通りを並んで歩いた。
時折り不二子は彼女の精巧な肌を羨ましながら。
ルパンたちのアジトを出てすぐ、彼女の顔からは笑顔が薄れていった。
不安そうな顔。
たまに不二子に何か言おうと開きかける口に迷いを生じさせる。
取り合えず一旦カフェに入ると、直ぐ様アイスコーヒーとホットココアを頼んだ。
選んだのは大通りが見える大きな窓際。
不安そうな彼女に不二子は目を合わせて微笑む。
「どうしたの?星海ちゃん。不安そうな顔して」
「あ、いや・・・」
「アタシと居るのがそんなに嫌なの?」
不二子がそう言えば星海は一生懸命首を横に振り、
そうではないことを一途に示した。
そんな様子の彼女を見た不二子は思わず微笑む。
「ううん!それはあり得ない!不二子ちゃんと一緒に歩くと、なんか世界が変わって見えて」
「あらっ、嬉しいこと言ってくれるじゃない」
「本当に・・・世界が違って・・・」
そういう彼女の手は小さく震ていて、不二子はごく自然に手を重ねた。
ハッとする彼女に不二子は下を向いたまま言葉を零す。
「不安?アタシたちが信じられない?」
「利用するなら、利用してください。私を」
「・・・」
「ルパンさんが狙っている宝物って私の家の家宝なんですよね。だから私を仲間に迎え入れたんですよね」
「そう、思ってるの?星海ちゃんは」
不二子がそう問うと、星海は不二子が重ねた手をソっとテーブルに置いた。
不二子はそれがとても悲しく、同時に彼女を騙しているような気持ちになった。
彼女は気づいていた。
狙われているのが自分の家宝だと。
その事を隠している自分たちがこの時だけは、とても卑怯に思えた。
「だって・・・そうとしか考えられない。ただの高校生が簡単に世界を騒がすルパン三世の仲間になるだなんて」
そうか、確かにそうかもしれない。と不二子は悲しく頷いた。
ルパンからは彼女を仲間にした理由は聞いている。
最初はたんなるお気に入りな女の子を手放したくないのかと思ったけれど、
彼には彼なりの考えがあったことを不二子は思い知らされた。
それ故に、悲しい。
ルパンはそんなこと考えていないのよ、星海ちゃん。
「フフ、ルパンがそういうことをするように見える?」
「見えない、見えないです!だから私どうしたらいいのか・・・!」
彼女が押し黙ったところでカフェの店員さんがホットココアとアイスコーヒーをコトリと置く。
彼女はホットココアで手を温めるように包み込んだ。
「ルパンはあなたを無事、お爺様の元へ送りたいと思っているわ」
「えっ」
「あなたの持つ、タトゥとペンダントを使わないルートで計画を進めてる。あなたを利用する気なんて無いのよ」
「そんな・・・」
「そういう男よ。ルパンはね」
不二子が諭すように言えば、彼女はもう一度“そんな”と呟いた。
それから不二子を見て、弱々しく笑った。
「本当は家宝なんてどうでもいいんです」
「そうなの?受け継がれている物なんでしょう??」
「知らないんです。宝なんて。どんなものなのか」
受け継がれているものはペンダントとタトゥだけ。
血筋のものですら家宝を知らないなんて・・・。
やっぱりルパンの言う通り、名も知れぬ旅人しか宝にたどり着いていないのね。
「あと一つ・・・いいですか?」
「うん?どうしたの??」
「私、本当は・・・戦闘なんて出来ないんです」
「ええ、知ってるわ」
不二子は軽く笑いながら、アイスコーヒーをすすった。
そんな不二子に星海はええ!?と驚きの声を上げれば、店内から少しの注目を浴びた。
羞恥心からか顔を赤くさせた彼女がやけに可愛く見えて、ソっと星海の頭を撫でた。
「ちなみにルパンも知っているわ。今頃次元や五エ門も聞かされている頃じゃないかしら」
「そう、ですか。・・・実弾が怖いんです」
「銃を使っていない相手だったら?」
「人を傷付けるのが、怖い」
「だから次元や五エ門と戦ったとき、手を抜いていたのね」
「えぇ!?それも気づいてたの!?」
「シーッよ。星海ちゃん」
苦笑いの不二子に星海は店内を見回すと、また注目を浴びたことに気がついた。
彼女はコホンと気恥かしそうに咳払いをすれば、また言葉を続ける。
「宝を狙ってくる人は度々いたんです」
「あらっ?そうなの」
「その度に人の血を流れるのを見て・・・。傷つくことが怖くなったんです」
「でも、自分の身は自分で守らないと」
「お爺様も同じことを言いました。けど私は自分の身を守る事に一生懸命で昔・・・」
「大丈夫。続けて」
「人を、人を殺してしまったの・・・」
「星海ちゃん。それはね」
青ざめ震える彼女の告白を受け入れようと言葉を探せば、突然の突き刺さるような殺気を二人は感じた。
殺気は外から。
ゾクリとした感覚が不二子を襲った。星海は窓の外のとある部分をずっと見つめていた。
そんな彼女が不二子よりも先に反応する。
「不二子ちゃん!伏せて!!」
「えっ?ってキャアア!!」
二人がテーブルの下に潜れば、ババババババ!!と勢いよく鳴り響くマシンガンの音に店内の客がキャアキャアと逃げ惑う。
バリバリと窓ガラスが割れる音が響き、窓際の二人は小さな欠片がいくつも飛んでくる。
不二子は持っていた銃を取り出し、発砲しているであろう方向に向けて撃つ。
チラリと彼女を見れば、青ざめた顔の中にも決意の様子が伺えて不二子はホッと息を吐いた。
「行くわよ!」
不二子が彼女の手を掴み、店内から飛び出す。
すればいくつもの兵隊のような部隊が、所構わず二人を後ろから追い回す。
銃を発砲しながら。
街の人々など気にする様子もなく。
上の人の命令だけで、街をも混沌へと堕とす。
さらに空を兵隊たちの仲間であろうヘリがいくつも飛んで、二人を狙った。
騒ぎながら逃げ惑う街の人々の間を掻き分けて、必死走る。
「もぅ~~~ッ!なによぉ!ゆっくりお茶もできないじゃない!!」
「ふ、不二子ちゃん」
「大丈夫。アタシが付いてる」
不二子と二人きりになってからずっと不安そうな星海に微笑みかける。
するとそれが意外だった様に星海は驚いた。
まさか、こんな状況で笑えるなんて。と。
飛んでくる弾が一瞬だけ気にならなくなった。
それでも二人をどんどんと追い詰めてくる謎の組織に不安を抱かない訳なかった。
私を最初に追ってきたのはこの人たちじゃない。もっと、もっと銃の扱いに慣れてないような人達だった。
“峰不二子、その少女を渡しなさい”
上空のヘリから機会を通した声が街中に響き渡る。
不二子はヘリの一つに発砲し、打ち落とす。
「嫌よ!彼女は渡さないわ」
「ッ!」
「仲間だもの!!」
星海は一瞬でも笑顔で自分を迎え入れてくれたルパンたちを疑ったことを悔いた。
あんなに疑っても、この人は、不二子ちゃんは仲間だと言ってくれた。
今だって、自分を引き連れて、一緒になって逃げてくれている。
とても心強く思えた。
「ルパン!ルパン!!聞こえる!?」
『あぁ!聞こえるぜ!!』
不二子は耳のイヤリングを取り外し、ルパンと交信をする。
そのイヤリングはルパンが創ったもの。
敵もまさかそれが通信機だと思うまい。
「襲われてるの!」
『ああ!銃声が遠くから聞こえた!!今、次元と五エ門と一緒に向かってる。星海ちゃんは無事か!?』
「ちょっとぉ、アタシの心配もしてよぉ!!」
『ごめぇん、不二子ちゅわん!助けに行くからねぇ~!』
「ありがと、ルパンっ!待ってるわぁ」
日常的に会話を進めた後、走ることに専念する不二子。
後ろから車の音が聞こえ、二人は笑顔で振り向いた、が。
ロケットランチャーを持った男の車。
あっさりとドカンと一発。
不二子と星海は流石にロケットランチャーの威力には負けるわけで。
当たらなかったのは吉も、爆風で身体が押され。
ひゅるるるると宙を飛ぶ。
「きゃぁぁああ!空飛んでるよっ!?」
「もぉぉぉう!!ルパァアン!早く来てぇ!!!」
この時星海は普通の生活ではありえないこの光景にドキドキと胸が弾んだ気がした。
良い意味でも。悪い意味でも。
第4章 END 2014/4/1
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