第3章
名前変換
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「はいは~い!じゃあ始めるわよ~」
不二子がノリノリで右手を上げる。
ヒュウと風が通るそこは、俺たちの住むボロアパートの屋上。
見た目とは裏腹に、立って見ればなかなか広いもので。
運動するスペースは充分過ぎるぐらいにあった。同時に住んでいるのが自分たちだけで感謝する。
頑張れー!と軽い声で応援しているのはルパン。
その横に、風が舞う髪が鬱陶しいように眉間に皺をよせ、斬鉄剣を抱え座り込む五エ門。
そして俺は完全武装の星海と向き合って屋上の真ん中に立っていた。
「ルール簡単!一発でも相手に当たったら終了よ!」
「おい待て、実弾でか?」
「何言ってるのお馬鹿、BB弾よ」
不二子からリボルバー型のエアガンをパシンと受けとる。
じゃあアイツのも、と聞けば不二子はニンマリと頷いた。
俺もそれに頷き返すと、良くできたエアガンを腰に収め、再度彼女と向き直る。
少し緊張した顔持ちで、彼女のブラウンの髪とコートがフワリとなびいた。
コイツがどこまでやれるのか。楽しみだぜ。
「Go!」
不二子の合図が空へと響きわたる。
俺はどう痛ぶってやろうかとおもむろに銃を構えれば、迷い無くコチラに突っ込んでくる彼女。
な・・・ッ!?
簡単に懷に潜らせてたまるかと、俺はバックステップで彼女を避ける。
すると彼女はブレーキを掛けながらコートと速足をバサリと翻し、両脇からシルバーに輝くオートを取り出した。
いきなり二丁拳銃か、あまり実戦向きとは思えないが。
ガションと直様リロードをすれば、面白そうに口に弧を描く彼女。
腕は良いようで。真っ直ぐ俺に銃を構え、パンパンと撃って来やがる。
軌道も決して外れちゃいねえ。いいコースだ。
俺は地面に転がり避けながら、リボルバーを取りだし、一発反撃すれば、彼女はそれをヒョイとかわす。
・・・マジかよ。いくらエアガンとはいえ反射能力高すぎやしねえか。
驚く俺を他所に彼女はドンドン間を詰めて終いにゃ俺を壁まで追いやった。
ドンと背中に壁があると気付けば、彼女は俺にゆっくり向かってきて。
俺はフンと鼻で笑い、銃口を彼女の頭に向けた。
彼女も俺の頭に銃口を向ける。1mmも雑作しない。
コイツ、将来が楽しみだ。
彼女のディープブルーの瞳がキラキラと俺を飲み込もうとしていた。
まだまだ実力は計りしれねえと俺は読み取り、期待した。
「はい、止め!!・・・引き分けねぇ」
「いんやぁ~、星海ちゃん強いなぁ!」
「っえへへ」
「ま、ギリギリ合格だな」
「厳しいでござるな」
終了条件の弾を当てる、ということが出来なかった代わりに俺に期待させたから。
それがあっての合格だ。と俺は青空を見ながらそう心に綴った。
おら、次はお前の番だろ。そう俺が五エ門の背中を叩けば、奴は頷き立ち上がる。
木刀を手にして。彼女も不二子から木刀を受け取っていた。
ヒュン、ヒュン。数回素振りをして、二人静かに向かい合う。
五エ門は左手を懷に入れ、右手で構える。
対して星海は両手で強く握り、身体の前で構えていた。
二人とも集中するように目を閉じていれば、同時に目を開き確定した“敵”に向かってきて走り出す。
「はぁあああああ!」
「やぁあああああ!」
二人の声が青空へと反響し、共に木刀がぶつかりあう音も響く。
カカ、カンッ!
二人とも目にも止まらぬ早さで木刀を振り、戦う。
五エ門はともかくも星海がここまで付いてくるとは驚きだった。
俺の脇でルパンと不二子も“おぉ”と感心している。
五エ門も驚きながらも楽しそうに防戦を繰り返している。
音はリズムよく、軽く空へと響く。
足を運ぶリズムさえも、華麗なステップに見えて。
不意にカンッ!!と木刀が弾き飛ばされる音が聞こえた。
それは彼女の木刀で。手がジンジンするのか数回手を振った後、そのまま素手で構える。
こいつには五エ門も驚いた様で、フンと面白そうに鼻で笑えば奴も木刀を捨て、構えた。
それからシュッと拳が宙を切る音や、パシンッと攻撃を受け取る音に代わる。
目の前で繰り広げられる戦いに、俺はウズウズして、思わず加勢する。五エ門に。
銃を構え、彼女に向ければ驚いた様に目を開き、同時にニヤリと微笑んだ。
「不二子ちゃんっ、短刀!!」
「はいは~い!短刀・・・の木刀!」
バシと受けとれば、右手で逆手に持ち、五エ門に構え直す。左手には先程のオートマ。
面白い女だ。
俺は久しぶりに胸が熱くなるのを感じる。それは五エ門も同じな様で。
五エ門も懐から短刀を取り出し、構え直す。
「おら、行くぜっ!!」
俺の声を合図に数発彼女に撃てば、彼女は後転で綺麗に避け、パンパンと俺に銃を撃つ。
俺はそれをギリギリで避ける。
その後ろから彼女へ五エ門が襲えば、しっかりと反応し、その短刀を受け取り跳ね返す。
ほう、よくやるぜ。
そんなことを繰り返す内に徐々に露になっていく彼女の身体能力。
蹴りの何発かを俺らに喰らわせ、同時に俺らも何回か彼女に攻撃していた。
熱くなっていく身体。
それはこんなにも動き回っているせいか、それとも彼女のせいか。
五エ門ももう容赦無しに掛かっている所を見れば、吹っ切れたかと思う。
熱くなる俺らの戦いに終わりは無いと見えた、が。
パキュンッ
脇から聞きなれぬ音が鳴り響き、俺と五エ門はそちらを見た。
音の主はルパンのワルサーP38。
何しやがる、と俺が掴みかかろうとすれば、ルパンはチョイチョイと彼女を指さす。
彼女はワルサーの弾を受けていた。短刀で。
バキ、と短刀が折れ、カランと木刀と共に弾丸が落ちる。同時に彼女もへたり込む。
弾丸はまさかの本物。
何考えてんだ、とルパンを見ればパチパチと拍手をした。
「ごうかっく~!!合格合格合格ぅーー!!!」
ヒョイと立ち上がり、彼女の元へと行く。
へたり込んでしまっている彼女に視線を合わすように、ルパンもよこいしょういちとしゃがみ込む。
彼女は不安そうな顔をルパンに向ける。
そんな二人の様子を俺と五エ門と不二子が眺めみる。
そんな彼女にルパンはニカッと屈託のない笑顔を送った。
ルパンがくしゃりと彼女の頭を撫でる。
ずっとずっと、くしゃくしゃと。
彼女はくすぐったそうに肩を上げ、少し赤くなった顔でルパンを見れば、安心した笑みを俺らに魅せた。
それは今までの笑顔より、ずっと素敵で可愛らしかった。
ルパンは頷き、口を開いた。
「俺たちと共に来るなら、ちょいと覚悟が必要だが・・・」
「それはもう、出来ています」
彼女は強い意志を持った瞳で頷いた。
ルパンは彼女に手を差し伸べ、引き起こす。
そして彼女を抱きかかえ、俺らがいる方向にクルリと向いた。
「今日からめでたく、星海ちゃん仲間入りぃ~!!」
ルパンのよく通る声と共に、俺らは走り出す。
不二子は星海に飛びつき頬ずりし、五エ門は嬉しそうに頷いた。
ルパンは彼女の肩を抱き、俺はそれらを見守る係。
みんなに囲まれて星海は嬉しそうに、幸せそうに口を開く。
「よろしくお願いしますっ!!」
「「よろしく!!」」
全力で叫ぶ彼女に、俺らも全力で答える。
これだけ実力があれば、ついてこれるだろ。
足りない部分は俺らが教え込めばいい。補えばいい。
俺の帽子が風に飛ばされようと浮く。ポスと押さえ込めば、皆が飯だ飯だと帰っていく最中で。
ふと星海と目が合う。
「どうした、星海」
俺がそう言えば、彼女は嬉しそうに口元を手で抑える。
俺がポケットに手を突っ込んで首を傾げれば、彼女は笑顔を俺に向けた。
「初めて名前で呼んでくれたっ!」
「・・・そういえば、だな」
「次元さんっ、本当に私を助けてくれてありがとう!!」
俺はフンと鼻で笑い、彼女の背中をポンと押した。
どういたまして。
俺がそういうと彼女は俺に飛びつく。
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら部屋へ戻れば、不二子の手料理が所狭しと食卓に並んでいて。
支度早いな、おい。そう言えば不二子は得意げに言う。
「妹のためならねっ」
ああ、そうだ。コイツはもう俺たちの仲間。
俺たちは席に付き、王様席へと座る彼女へ口を揃えて言う。
「「ようこそ、ルパンファミリーへ!!」」
彼女は幸せ満開な笑みを、俺たちにプレゼントした。
これから、よろしくな。
第3章 END 2014/3/4