第2章
名前変換
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「んなことよりすっげぇな~。不二子のあの気に入り様は」
「相当アイツが可愛いみたいだな」
ルパンが椅子を仰け反らせながら逆さに俺を見る。
作業を終わらせたようで今度は床に座り込み、扇風機に“われわれはうちゅうじんなりすけぇぇぇ”と、
生ぬるい風を占領していた。
不二子はどうやら彼女を着替えさせているみたいで。
よくあれだけの服や物を短時間で買い集めたな。
店の主人らが女に対して浅はかなのか、馬鹿で単純なのか。
それか本当に“妹”に対しての愛か?
フンと鼻で笑えば、不二子たちが消えていった部屋から小さな悲鳴と共に何やら声が聞こえ始める。
じゃぁ~ん!これこれ!星海ちゃんに似合うと思ってぇ。
なななな!!不二子ちゃん!私そんな胸元ザックリ着れないよ!
だ~いじょうぶよッ!あなた、良い身体してるからッ!
ひゃう!へ、変なトコロ触らないで!
ん~じゃぁ、これは??
あ、そ、それなら・・・。
今度はここがパックリよんッ。
うぁ!?こ、こんなのじゃ警察に捕まるよ!却下!!
え~・・・いいのにぃ、可愛いじゃなぁい。
・・・嫌よ。
ま、不二子のセンスは色んなものがギリギリな部分が多いからなあと俺は一人あくびをすれば、
何やら彼女たちの部屋のドアにピタリと聞き耳を立てている猿男が目に入る。
何やってんだか。
ソファのゴロンと寝転がれば、俺のながーい足が五エ門の身体へドカリと乗っかる。
そんな奴の身体はフルフルと震えていて、なんだなんだと顔色を伺えば、
顔を赤く染めて、必死にうつむいていた。
全く、女に免疫の無い奴だな。
今に始まったことじゃないが、今回はあまりにも過敏に反応しすぎじゃねえのかと俺は察する。
彼女たちの部屋の中でガッタンゴットンと派手な音がすれば、バンッ!と扉が開かれ、変態猿男が潰れる。
待ちくたびれたぜ、と俺がソファに座り直せば、五エ門はコホンと一つ、咳払いをした。
「さぁさぁ、星海ちゃんの衣装のお披露目よぉ~」
不二子がそう言って部屋の奥へ手招きすれば、おずおずと恥ずかしそうに胸元を抑えながら彼女が現れる。
何隠してるのっ!と不二子が後ろから彼女の両手を奪い去れば、無防備な胸元が露わになった。
紗に構えたような裾がフワリと浮いたブラウンのロングコートは、あどけない幼さが残る彼女にとても似合っていた。
そのコートのボタン上3つほど、ガバリと開け放たれた中には、
黒のシンプルな見せブラか、その上に着ている胸元の開いた白インナーに色を抑えられていた。
その着合わせが良かったのか、胸元が開いているとはいえ、妙に落ち着き払ったイメージを持つ。
チラリと見えるタトゥーがまたお洒落で。
下は深緑のズボン、そしてブーツ。
これならまだ大丈夫な方かと、俺は安堵した。
「こ、これ、おかしくないでしょうか・・・」
「だーいじょーぶ、だいじょーぶ!!似合ってるぜぇ!」
自信なさそうな彼女にルパンが直様飛びついて両手を握った。
そうすれば自信のなさそうだった彼女が少しづつ笑顔になる。
五エ門も似合っているぞ。と呟けば、彼女は奴に無邪気な笑みを魅せた。
「あ、そだそだ。コイツは五エ門つってなぁ。斬鉄剣の使い魔さ」
「先程は・・・すまなかった」
「いえ、星海です」
「あとぉ、俺たちも敬語、無しにしてくんねぇかなぁ。慣れなくてさッ」
「分かった!」
彼女がルパンに笑顔を向ければ、ルパンだけじゃなくて皆が微笑んだ。俺以外な。
なんとなく、彼女を受け入れつつあるこの雰囲気が好きじゃなかった。
なにか特別なキャリアや特技を持っている女ならともかくも、ただの地主じじいの孫、日本人の女子高生が仲間に入るなんて事。
俺には何とも苛立ちが抑えられないような、いじらしい気分となる。
戦闘が出来るというが、口先だけなんじゃないのかと疑い始める始末。
たかが小娘一人ぐらい良いじゃないかという気持ちと、この仕事は甘くない、という気持ちが心で交差した。
「で、本当に戦闘出来んのか」
思わず口から零れた言葉に本当に、そうだ。と心で深める。
しかし不二子は俺の言葉を、待ってました!とでも言うように彼女を笑顔で部屋の真ん中へと押しやる。
なんだなんだと男どもの視線が集中すれば、不二子は彼女のコートをガバリと脱ぎ去った。
「「!?」」
男どもはコートを脱いだ彼女の姿に驚きの声を漏らした。
インナーかと思っていた服はタンクトップで。
いや、それはどうでもいい。と俺は頭を振る。
彼女の両脇には拳銃。つまりは二丁拳銃。オートマチックの物が二つ。
拳銃はしっかりとした革製のショルダーホルスターに収まっていた。
腰にも一つ拳銃。それは俺のお気に入りにも似たマグナムがそこに。
太ももにもご丁寧に銃が一つ。女性にも扱いやすい人気の銃が。
まだまだあるわよ、と不二子がウインクをすれば、彼女は右足を“タンッ”と癖をつけて踏めば、
ブーツから一つのバタフライナイフが飛び出して、彼女の手に綺麗に収まった。
これはどうやら護身用のようで。だったらその重装備の拳銃たちは何なんだと問いたくなった。
ルパンは彼女の格好にヒュ~と口笛を吹き、五エ門は、女は恐ろしいものだなと呟いた。
「まあ、確かににすげえけどよ。どこでそんな武器を手に入れたんだ」
「前回の仕事、武器商人が相手だったのよ」
またそそのかしたんだろ、と俺が口ずさめば、さぁね。と不二子は肩を上げる。
それにイラっときた俺は盛大に舌打ちをした。
おろおろと見つめるルパンと星海。
ソレを視界の端に入れながら俺は不二子に怒鳴りつける。
「とにかく!扱えなきゃ意味がねえ。言ってる意味、分かるな」
「はいはい。相変わらずお堅いわねぇ~。そんな男はモテないわよッ」
俺は不二子の言うことを完璧にスルーして、
星海を睨み見る。
「おい、明日テストしてやる。相手は俺と五エ門だ。その結果次第でお前を仲間にするか決める」
「うぅ、りょーかい」
彼女は少し悲しそうに俺の方を仰ぎ見た。
コイツの実力を俺に見せればいい。ただそれだけだ。
俺らの主となる仕事は“財宝盗み”。
それに如何なる危険が伴っても、最低限自分を守る力がなきゃやってけねえし、生還すら果たせない。
コイツにそれらを乗り越える力と度胸があるかどうかテストをするだけ。
寝に部屋へと帰る星海と不二子を見て、俺もソファへ寝っ転がる。
明日が(と言っても今日だが)、楽しみだ。と呟いて目を閉じれば、すぐに眠りへと堕ちていった。
第2章 END 2014/2/16