オートフィクション

25 結婚

2019/11/01 22:42
電気を消すと、隣から「なんの色が好き?」と聞こえてきた。すぐに頭に浮かんだのは、この人に聞かれた時にいつも答えていた「白、黒とかかな」だったけれど、今は薄紫が一番好きだと思って、「薄紫かな」って答えた。「そうなの?」って返ってきた。

「何色が好き?」って聞き返したら、「うーん、薄い色かな、青とか、水色の。心が落ち着くから」って返ってきた。てっきり、黒、白、ゴールド、シルバーかなって応えると思っていた。それは初めて聞いた気がしたから、「そうなの?」って答えた。

「何色が好き?」っていう質問は、出会って何回目かのデートで聞くようなことで、その会話が9年たった今でもあるっていうのは、かけがえのない事のような気がする。暗に、お互いにお互いの嗜好に興味がありますよっていうのを、付き合いたての頃と同じように伝えているからだ。

付き合ってから3、4年は、相手の理想の私を想像して、その理想通りの人になろうと頑張っていた。

でも今は、自分の好きな色を言う。彼はそうなんだって受け止める。私も気兼ねなく、好きな色を聞く。彼もそれに答えてくれる。かつて、まだガチガチに固まりながら付き合っていた頃、「永遠」、「ずっと」、「一生」という言葉を沢山交わして、生きている限りお互いの考え方も嗜好も変わらないと思い込んでいた。だけど今は違う。互いの変化を寝る前の静かな時間の中で、2人で共有していることがとても幸せだと思う。

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