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一次創作

長所のない私です

2021/09/15 02:30


重なっていた体が離れると、お互いの体温と、性器の香りが舞った。

「あっ、あーっ!寝みぃ!」

伸びをした彼の体が縦に長くなる。頭の上に突き出した両手の握りこぶしを見ながら、定まらない何かに思いを馳せる。足が、彼の足に触れている。膝を動かして、それで彼の引き締まったお尻を撫でる。彼は携帯を探し始める。

「電車がさぁ、だりぃんだよ」

私達は同じ大学に通い、私は近くの寮に住み、彼は電車で40分くらいのアパートに住んでいた。彼は、電車の中でよく寝てしまうらしい。それが心地いいんだけど、首痛くなるんだよなぁと笑う。

「風呂いい?」

頷くと、彼は私の足の間からするりと抜けていく。脱いだ服と下着を持って、シャワーを浴びに部屋から出ていく。暫くして、薄い壁越しにお湯が床を打つ音が聞こえてきた。彼の動作はいつも荒い。大きな物音に意識を払いながら、自分の性器に触れてみる。そこはとても良くヌカるんでいて、温かく、ふっくらと膨らみ、呼吸していた。指を一本中に入れると、あの人の声が聞こえてくる。

──お前の中最高

あの人は、いつも私のそこを褒める。私は自分の体がそうなる前に挿入されても構わないのだけど、あの人は私の中を丁寧に解し、ヌカるんで柔らかくなった頃にようやく勃起した性器を差し込んでくる。あの人の性器がツクツクと中を揺蕩うのを感じながら、いろいろなことを伝えたくて仕方がなくなる。私は、セックス中でも沢山あの人に話しかける。あの人はそれを聞いて笑ったり頷いたり、時には強い力で私の体に触れる。そうしているとやがて、セックスが終わり、重なっていた肌が離れ、冷たい空気が互いの体の間で揺れると、体温と、性器の香りが舞う。

「なぁー!髭剃り無かったっけ?」

浴室から張り上げられた声に、私はハッとして首を起こす。彼の髭剃りは、あの人が捨てた。

「なぁー!髭剃りって」

腰にバスタオルを巻いた彼が寝室に入ってきた。私は曖昧に頷きながら、自分が年上の男と浮気をしていることをぶちまけようとしていることを、他人事のように感じていた。

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