2.魔法

唇に大野さんの熱が伝わってくる。


強く押し当てられた唇が一瞬離れ、今度は優しく重なると、上唇と下唇をゆっくりと交互に食み、一気に塞がれる。

「…ッン…はぁ…あ」

呼吸ができずに開いた口内に、大野さんの舌が滑り込んできて、俺のを絡めとっていく。

噛みつくようなキス。

それとは裏腹に、頬を包む指はそっと優しく撫でていて、まるで本当に魔法にかかったような錯覚さえ覚えた…


頭の奥が痺れる…

一体何が…?


現状が理解できずされるがままでいると、唇から離れた大野さんと目が合った。

「危ねえな」

そう言って俺が手にしていた今にも灰が落ちそうな煙草を取り上げ、灰皿へと押入れる。

その手は俺の腕を強引に引き、大野さんに飛び込む形で抱きしめられた。


「ふふっ…まだする?」

「……え?あ、え?」


放心状態の俺の髪をくしゃっと撫で、ふわっと笑って大野さんは席を後にした。




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