交差点上
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「ここでの暮らしには慣れたかい?もし必要なものがあれば僕に言うんだよ」
「そこ、段差になってるからね。転んで怪我でもしないようにせいぜい気を付けなよ」
「余程僕に食べさせてほしいんだね……仕方ないか。さ、口を開けて」
「こわ」
「何?」
「怖い……態度が……怖い。あくまで自分の方が上という姿勢を崩さないところが……逆に怖い」
リジェネは何度か目を瞬かせると、険しい顔で考えこんでしまった。こうしていると宇宙にいるであろう彼と見分けがつかない。
今日も「賑やかな艦から離れて寂しいんだろう?」だったかなにか言いながら枕抱えて私の部屋まで押しかけてきているのだから、怖いというか、気持ち悪い。目と鼻の先で思案する彼が本当にリジェネなのかすら疑わしい。
適当に言いくるめられて寝台にあがらせた私が悪いのは間違いないんだが、こうも気さくに寄られては調子が狂う。
リジェネはいつの間にかこちらをじっと見据えていて、顔のパーツひとつひとつを観察されるような素振りにこちらの背筋が冷えていく。
「そんなに警戒する必要はないよ」
「と言われましても……」
「仮に僕が君を取り込もうと企んでいたとして、君自身が気付いてどうにかできる訳でもないだろう」
今度はこちらが悩まされる番。悔しいが彼の言ったことは事実だ。何を考えているか分からない以上、私には手を出せない。うんうん唸り出すとリジェネは口だけで笑った。
「君に興味が湧いたんだ。なまえ」
その口振りも、私の口元に当てられている彼の指もどこか現実味がなくて、薄ら見える彼の手の皺の少なさが拍車をかける。ほんの悪戯心で軽く指を舐めると、相手は驚いてすぐに手を引っこめる。ちょっと間抜けな姿を見れていい気分だ。
「あいにくだけど何の情報も持ってないよ」
「だろうね」
息をするように人の神経を逆撫でしてくるのにも慣れてしまった。本人にしてみれば自分が上なのは当たり前、という訳。思わずため息をついてしまった。
「興味、というのは……幼児として?玩具として?」
「さて、どっちだろうね」
当然この二択のうちどちらかなのは否定しないし、この際どちらもほとんど同じ意味で、私にどんな価値を見出しているのかは全くもって謎のまま。当人の様子としては意味深に微笑むばかりで、真意があるのかすら見当もつかない。何より私は幼子ではない。
これは考えても無駄……かな。諦めて眠気に身を任せるか迷っている間もリジェネは自由気ままにの頬を揉んだりつついたり、寝かしつけにきたとは思えないちょっかいを繰り返している。わざとらしく微睡む素振りを見せれば、諦めたように手を離した。
「もう眠ってしまうのかい?」
面倒がって目配せで返事をして瞼を閉じる。願わくば目が覚めたら元通りであってくれと祈れば、波で攫われるように眠りへ落ちていく。おやすみなさい、降ってきた誰かの声は指の間から消える砂に似て意識をすり抜けた。
「そこ、段差になってるからね。転んで怪我でもしないようにせいぜい気を付けなよ」
「余程僕に食べさせてほしいんだね……仕方ないか。さ、口を開けて」
「こわ」
「何?」
「怖い……態度が……怖い。あくまで自分の方が上という姿勢を崩さないところが……逆に怖い」
リジェネは何度か目を瞬かせると、険しい顔で考えこんでしまった。こうしていると宇宙にいるであろう彼と見分けがつかない。
今日も「賑やかな艦から離れて寂しいんだろう?」だったかなにか言いながら枕抱えて私の部屋まで押しかけてきているのだから、怖いというか、気持ち悪い。目と鼻の先で思案する彼が本当にリジェネなのかすら疑わしい。
適当に言いくるめられて寝台にあがらせた私が悪いのは間違いないんだが、こうも気さくに寄られては調子が狂う。
リジェネはいつの間にかこちらをじっと見据えていて、顔のパーツひとつひとつを観察されるような素振りにこちらの背筋が冷えていく。
「そんなに警戒する必要はないよ」
「と言われましても……」
「仮に僕が君を取り込もうと企んでいたとして、君自身が気付いてどうにかできる訳でもないだろう」
今度はこちらが悩まされる番。悔しいが彼の言ったことは事実だ。何を考えているか分からない以上、私には手を出せない。うんうん唸り出すとリジェネは口だけで笑った。
「君に興味が湧いたんだ。なまえ」
その口振りも、私の口元に当てられている彼の指もどこか現実味がなくて、薄ら見える彼の手の皺の少なさが拍車をかける。ほんの悪戯心で軽く指を舐めると、相手は驚いてすぐに手を引っこめる。ちょっと間抜けな姿を見れていい気分だ。
「あいにくだけど何の情報も持ってないよ」
「だろうね」
息をするように人の神経を逆撫でしてくるのにも慣れてしまった。本人にしてみれば自分が上なのは当たり前、という訳。思わずため息をついてしまった。
「興味、というのは……幼児として?玩具として?」
「さて、どっちだろうね」
当然この二択のうちどちらかなのは否定しないし、この際どちらもほとんど同じ意味で、私にどんな価値を見出しているのかは全くもって謎のまま。当人の様子としては意味深に微笑むばかりで、真意があるのかすら見当もつかない。何より私は幼子ではない。
これは考えても無駄……かな。諦めて眠気に身を任せるか迷っている間もリジェネは自由気ままにの頬を揉んだりつついたり、寝かしつけにきたとは思えないちょっかいを繰り返している。わざとらしく微睡む素振りを見せれば、諦めたように手を離した。
「もう眠ってしまうのかい?」
面倒がって目配せで返事をして瞼を閉じる。願わくば目が覚めたら元通りであってくれと祈れば、波で攫われるように眠りへ落ちていく。おやすみなさい、降ってきた誰かの声は指の間から消える砂に似て意識をすり抜けた。
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