交差点上
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「いいよ、約束しても」
普段約束なんてそうそうしたがらない私がこう言ってもいまいち信用ならないのか、文句こそ飛んで来ないが纏う空気は重たいままだ。
自分の信用ならなさ加減については自分が最もよく理解しているつもりだったが、彼にとってどうかを私はまだ知らない。
「ふ、言いたいことはわかるさ、ティエリア・アーデ」
「……僕は、ただ」
「じゃ指切りしてあげよう!」
その先を聞くのが怖くなって遮ってしまい、視線を外したせいで彼の表情がよく読み取れない。
知らないから、その先に何を言われるかわからない。わからないことは恐ろしい。通常であればわからない何かを知りたいと思う私の好奇心が上回るのだろうが、知ってしまった何かを背負うほどの強さはないから、背負う荷物が重いと分かるとつい逃げ出したくなる。
「指切りだと?」
「そう!知ってるでしょ?手出して」
「おまじないじゃないか」
一応差し出してはくれるんだ。
ティエリアは声色も仕草も会ってから今まで苦虫を噛み潰したような調子で正直居心地が悪いが、なにせどう考えても原因は私なのだ。
とはいえ、いつまでもそんな顔されちゃこちらだってたまったものではない。
「こういう時はおまじないの方がいいよ」
どちらかといえば笑っていてほしい。
小指をしっかり繋いだその感触があんまり微笑ましくて自然と口角が上がる。なるべく長く覚えておこう。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます」
ティエリアは静かに片手を揺さぶられている。
「指切った」
「物騒だな」
「そりゃね」
私たちがやっていることも大概物騒だと思ったのは内緒。指切りには地域差があるって聞いたけどほんとかしら?
「そもそもの話、この場合飲まされるのはなまえの方だろう」
「え〜、私が破る前提?」
笑って茶化すような態度が気に障ったのか強く睨まれる瞬間、レンズ越しに射抜かれる錯覚。たいへん目力。宥めるつもりで瞬きのサインを送ったところたいへん悪化。
「なんだ、その、言われた通りきちんと気をつけるから、ティエリアも無茶しないでねっていう約束だよ!」
ね!なんてかわい子ぶってはみたもののやはり効果がない。「当然だ」の一言で虚しい努力も跳ね除けられてしまった。完全にお手上げ、こうなっては為す術がない。
「なまえ。次、あんな真似をすれば、僕は君を許さない」
強い口ぶりとは裏腹に声は絞り出すようで弱々しい。普段の凛とした姿とは似ても似つかない。
いつだって必要と感じたことをして、不必要と感じれば選ばない。きっと彼もだいたい同じで、これはそれぞれほんのちょっと基準が違っていたに過ぎない。
「わかった。絶対ね」
真面目な話はどうも苦手だ。私はうまく笑えているだろうか?
曖昧に瞳を揺らして不安げなティエリアが目に入るたび、心臓のあたりがひしゃげて悲鳴を上げた。
それ以上でもなければそれ以下でもない。
普段約束なんてそうそうしたがらない私がこう言ってもいまいち信用ならないのか、文句こそ飛んで来ないが纏う空気は重たいままだ。
自分の信用ならなさ加減については自分が最もよく理解しているつもりだったが、彼にとってどうかを私はまだ知らない。
「ふ、言いたいことはわかるさ、ティエリア・アーデ」
「……僕は、ただ」
「じゃ指切りしてあげよう!」
その先を聞くのが怖くなって遮ってしまい、視線を外したせいで彼の表情がよく読み取れない。
知らないから、その先に何を言われるかわからない。わからないことは恐ろしい。通常であればわからない何かを知りたいと思う私の好奇心が上回るのだろうが、知ってしまった何かを背負うほどの強さはないから、背負う荷物が重いと分かるとつい逃げ出したくなる。
「指切りだと?」
「そう!知ってるでしょ?手出して」
「おまじないじゃないか」
一応差し出してはくれるんだ。
ティエリアは声色も仕草も会ってから今まで苦虫を噛み潰したような調子で正直居心地が悪いが、なにせどう考えても原因は私なのだ。
とはいえ、いつまでもそんな顔されちゃこちらだってたまったものではない。
「こういう時はおまじないの方がいいよ」
どちらかといえば笑っていてほしい。
小指をしっかり繋いだその感触があんまり微笑ましくて自然と口角が上がる。なるべく長く覚えておこう。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます」
ティエリアは静かに片手を揺さぶられている。
「指切った」
「物騒だな」
「そりゃね」
私たちがやっていることも大概物騒だと思ったのは内緒。指切りには地域差があるって聞いたけどほんとかしら?
「そもそもの話、この場合飲まされるのはなまえの方だろう」
「え〜、私が破る前提?」
笑って茶化すような態度が気に障ったのか強く睨まれる瞬間、レンズ越しに射抜かれる錯覚。たいへん目力。宥めるつもりで瞬きのサインを送ったところたいへん悪化。
「なんだ、その、言われた通りきちんと気をつけるから、ティエリアも無茶しないでねっていう約束だよ!」
ね!なんてかわい子ぶってはみたもののやはり効果がない。「当然だ」の一言で虚しい努力も跳ね除けられてしまった。完全にお手上げ、こうなっては為す術がない。
「なまえ。次、あんな真似をすれば、僕は君を許さない」
強い口ぶりとは裏腹に声は絞り出すようで弱々しい。普段の凛とした姿とは似ても似つかない。
いつだって必要と感じたことをして、不必要と感じれば選ばない。きっと彼もだいたい同じで、これはそれぞれほんのちょっと基準が違っていたに過ぎない。
「わかった。絶対ね」
真面目な話はどうも苦手だ。私はうまく笑えているだろうか?
曖昧に瞳を揺らして不安げなティエリアが目に入るたび、心臓のあたりがひしゃげて悲鳴を上げた。
それ以上でもなければそれ以下でもない。
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