PSYREN短編
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オレは嫌いだ。
ゴスロリ傘のアイツが。
「にゃっはっは☆ ハデにヤられちゃったね、カブちゃん♪」
「ウッゼェなァ……だいたいオレは非戦闘要員だっての」
「んでも男のコだったらやっぱりケンカだねケンカ、何時の時代も強い男が生き残れるんよ☆」
こんな平和な時代に、生き残るとかなんとか非現実的なことをほざくコイツは星崎とかいう、残念ながら同じ学校のセンパイだ。
オレの前に現れるときはいつもゴスロリ傘を片手にニンマリ笑顔を貼り付けて、痛いところを的確についてくる。
とにかく性格が悪い、これさえなけりゃ、イイ女ってやつ。
「でもまー、カブちゃんが逃げるってことは、ツレはよっぽど弱いヤツってことか」
「なんでそんなことわかんだよ」
「わかるよ。少なくともカブちゃんが絶対的な信頼をおける人間はね」
「……誰だよソレ」
そんな人間がいるなら、是非とも教えて欲しい。
そうしたら、オレはいま以上に平和で安心な生活を送れるに違いない。
「"世界"を持ってるヤツだよ」
星崎はわずかにそのニンマリ度を落として、そう言った。
「……せかいぃ?」
「そ♪」
「それって大統領とか王サマってこと?」
もしそうだという返事がきたら、オレはキレて帰るつもりだった、そんなやつと友達になれるわけねーって。
「んーなわけないでしょ、もしそうだったらどうやって知り合うんだっちゅうんだ。しかもそれ持ってるの国だし?」
「…じゃ、どんなヤツ?」
「……んー…そうだなァ…」
そうしてしばらく考えたあと、ゴスロリ傘をくるくるしながらニンマリと言い放った。
「私も会ったことないからわかんにゃい☆」
「意味ねーじゃん!」
星崎は変わらず傘をくるくる回しながらケラケラと楽しそうに笑う。
そういえば、晴れの日でも傘を持ってる理由を聞いたら「核の炎に備える」とか意味のわからないことを言ってたのをよく覚えてる。
そしてオレは、こういうワケのわからないやつは信用しちゃいけないと学んだ。
でもどんな邪険な扱いをしても、星崎はいつでもオレにつきまとってくる。
「…強くなる気は?」
「ねーよ、今の日本に必要ないだろ、そんなの」
「そーかそーか、まー今はそうかもしんないね、数年くらいはね」
数年は、ねえ…
「……その言い方じゃ、近いうちに戦争でも起きるみたいじゃん」
「起きるかもしれないし、起きないかもしれない☆」
「オレが生きてるうちは起きないことを願ってるよ」
戦争なんざ、オレの知らないところでやってくれってんだ。
もちろん、オレが参加するってのもナシで。
そんな痛いこと辛いこと盛りだくさんの場所にのこのこと突っ込むシュミはまるでない。
「強くなりたかったら、私のところに来るといい、いつでも相手しちゃるから」
「安心しろよ、ぜってー行かねぇから」
「およよん? 後悔してもしらねーぞー?」
そうして星崎は、ふいに顔を近づけた。
頬にそっと触れるだけのキス、ちょっとだけあったかくて、少し傷にしみた。
「強くなったらこの続きをやるからねん、じゃあバイビー☆」
「はッ!? ちょっ、ちょっと!!」
その後星崎とは一切会うことはなく、失踪したと噂に聞いたが、いつも突然に消えては現れるやつだったから誰も気にしてなくて。
オレはせいせいした気持ちで数年だらりと生きて、次第に星崎のことは忘れていった。
いちいち癇に障るムカつく先輩がいたってだけの思い出。
――サイレンドリフトとして修行を積んだ今、アイツももしかしてこんなのに巻き込まれてたのかなーとふと思い出して空を見る。
今でもあの約束が有効なら、すぐにでも星崎んちに行こうと思ったけど、よく考えたら住所もなにも知らなくて、学年と名前しかわからないんじゃどうしようもない。
突然消えてそのままいなくなってるのは、死んでるからじゃないかって誰かが言いそうだけど、アイツは殺しても死なない気がした。
にしてもキスを逃すのは惜しいよなァ…あの時聞いときゃよかった。
「……強くなったぜ、星崎」
死んでたとしても、こんなもんで成仏すんじゃないかな、アイツのことだから。
「…まー、合格点ってトコかね♪」
…後ろは壁だ、幻聴に決まってる。
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