腐っても時渡り
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「おはようございます、マツリ先生」
「おう。聞いたよ、あんた桜子のところで世話になってるんだってね」
う…そうですね、そう言われると悪いことをしている気がします。
「別に悪いって言ってないよ、これからも桜子の支えになってやってくれ、頼んだよ」
「…はい」
こんな私でも、桜子さんの支えになれるのかなあ。
「お前たちはやるべきPSI訓練も不十分なままだったね。それでも本当に…よく、帰って来たな…!」
訓練の前に、マツリ先生が激励の言葉をかける。
実際は桜子さんに守られていたので、なんともいえない気持ちになりました。
アゲハがマツリ先生にライズを習いたいと言った、いまのままでは生き残れないとヒリューも。
もちろんそのつもりだ、とマツリ先生が笑った。
イメージ…イメージが大事だ、こんなところで手こずってられない。
「お久しぶりッス姐さん!! あなたの為ならいつでも死ねる! 雹堂影虎 只今参上いたしやした!!」
「おィーす、久しぶりだな影虎! 悪ィな急に呼び出して」
「姐さんの頼みとあっちゃあこの影虎!! エンマに心の臓抜かれようが断るわけにゃいきやせんぜ」
影虎さんは私たちをぐるっと見た後笑いながら
「それで? あっしにとことんまでシメて欲しい奴ってのはどいつですかい?」
こ…こわいッ!!
ふおお…私ちゃんとライズできるかな…?
できなきゃ多分……
『いいみんなあの人にサイレンの事を話さないでね、死ぬわよ』
ですよね。
「よし! 訓練発表しまーす☆ ライズを覚えたいならやる事はただひとつ!」
マツリ先生が影虎さんをピッと指差す。
「そこの影虎の顔面にパンチを一発ぶちこむ事。それができたらライズの初歩は一気にクリアね!」
か、簡単に言いますね……!
こわい、すごくこわい、最初に会ったヤーさんより怖い。
「PSIの基本はまず己の脳でイメージを構築すること、ライズを覚えるにゃあ自分の強くなったイメージを探すとこから始めないとね☆」
「そ、実体験を伴ってなァ」
「!?」
ッ、見えな…!?
肩にトン、と手が触れる、不意を突かれて思わず膝をついてしまった。
お…おお…すごい。
なんていうか、すごいとしか…
「何だァ、もうちっと対応してくれや」
「イッテエエエエエ…!! 何すんだよイキナリー!」
「なんっつー動きだ…!」
「ああン…? イメージだァ…!?ふざけやがって…!!」
「おいクソガキども。最近自分のケガの治りが早えと感じたことはねェか? 体の調子がいいと思ったことがねェか?」
あ…そういえば、ヤーさんに追いかけられてた時やけにスタミナがもつと思ったかも…
「お前達はよ…もう無意識の内にライズを使ってんだよ…!」
急に空気が硬直するのを肌で感じた、この空気感はいいかもね。
よし、イメージイメージ、でもどんなイメージすればいいんだ…?
「殴られて殴られて殴られたその先に、見えてくるもんだってあるんだぜ?」
「上等じゃねえか」
「やってやるぜ」
「あからさまに手加減されちゃあね」
「オゥーし!! どんどん来い来い…!」
ドッ…!
う、ぎ、足いた…!
あからさまに手加減されてるけど、さっきのような触るだけのものとは全然違う。
もっとだ、もっと、痛みなんて関係なくなればいいんだから。
もう一回!!
数十分後、そろそろスタミナが切れてきた、アゲハたちはまだまだ元気なのに、やはり私に運動は向いてない。
きっとライズで底上げしてもちまちま避けているんじゃ、私のほうが消耗して圧倒的に不利だ。
そんなことを考えながら動いていたものだから影虎さんの蹴りに気付かなかったので。
「!? ヤベェ!」
いかん、これは死ぬる。
耐えないと…!!
とっさに腕でガードするが、影虎さんのうっかり出した足に耐え切れず数メートル吹き飛ばされてしまった。
「あッ、つ…ゲホッ」
息ができん、ていうかすっげーびっくりした…
「オ、オイ満月大丈夫か!?」
「悪ィ! 夢中で気付かなかった! 怪我してねえか?」
「ん…あまり平気とは…でも、とりあえずたいしたことは無い、かも」
「ホォ…? 驚いた、イイのが入ったから骨の一、二本はイッちまったかと思ったが…お前ら先越されちまったな」
ん? 影虎さんそれどういう意味ですか。
…ライズのイメージが出来上がったってことか?
「お前は一旦休憩だ! 折れてなくともヒビは入ってるだろうからな…オウおめーら、始めるぜ」
「っしゃあ!」
休憩、ですか。
まあ確かに動くことには動くが、そのたびにジンジン激しい痛みがある。
心なしか腫れてきた気もする、おーい朧クーン。
「治療しよう」
「ありがとうございます。望月さん」
「朧でいいよ。……いいかな?」
「はい?……あっ、いや、そうだ! 手、手だけでも大丈夫ですか!?」
「手かぁ…うん、やってみよう」
朧さんの治療=抱きつくなんてとても耐えられる気がしません。
手だけでも十分な破壊力なのに…!
それに、この抱きつくという絵面は男子だからこそ映えるんだよっ!
朧さんが私の手を握ると、あたたかいなにかが私の体に流れ込んできた。
効果はすぐ現れた、さっきまで死ぬほど痛かった腕がどんどん癒されていく、…キュアかぁ。
「すごいですね…朧さん」
「そうかい? でも見よう見まねだから、まだ彼には遠く及ばないよ」
彼とは多分、ヴァンのことだろう。
「……そんな、こういう力が使えるのは…誰かの役に立てる力があるのはすごいですよ」
もっともっと、力が欲しい。
「よし、終わったよ。どうかな?」
「…うん、大丈夫です! もう全然痛くないですよ」
「今回は成功したけどやっぱり難しいなあ、抱きつく方がやりやすいね」
「アゲハたちにはそのほうがいいですね多分」
アゲハとヒリューを纏う空気が変わる、影虎さんは満足そうに笑う。
しかし、目立った効果が表れたわけではなく、ただ時間が過ぎた。
私もすぐに参加したが、避けられるわけでもなく止められるわけでもなく、なんとも微妙。
集中、集中…
「…ふぅー……」
できてしまったイメージをもう直すことはできないだろう、諦めよう。
岩は崩れ…攻撃は耐えた…おそらくパワータイプのライズ。
力、そうだ、どうせ小細工なんて通じない、無理やりねじ伏せるのが最上!
「オラどうした嬢ちゃん、止まってちゃいつまでたってもできねぇぜ?」
「……よし、行きます!」
足に一瞬ライズを集中させる、それか
「らぁ!?」
「おあァ!?」
あいたた…鼻打った……
一瞬のはずが…ここは要練習だな…
ようし。
「あたっ!」
も、もう一回…!
「いぎ…!!」
何度やっても勢い余って転がってしまう…このままじゃ日が暮れちゃうよ。
うーん……
「すいません…ちょっと、練習してきます」
「それはいいが…あんま小難しいことしようとすんなよ」
「わかってます」
小難しいことじゃないもんね、うん。
朧さんが言ってたような…えーと、なんかピョンピョンって感じの。
私は隅に積み上げられてる鉄骨の上に登った。
そいっ、なんか違う……イメージイメージ…んぱっんぱっ、って感じ。
トントンと鉄骨から鉄骨へ飛び移る、ここまでは出来る…から。
「上かあ…」
この工場の屋根までたどり着ければ、影虎さんに一発打ち込めるぐらいのレベルになるかなあ。
…訓練三日目、なかなかうまくいかない。
私は昼ごろ、家事を終わらせてからまだ誰も来てない工場でこっそりと練習していた。
時間がたっぷりあるのと、みんなに遅れをとりたくないというのと、影虎さんが来てからの訓練に集中したいから。
うーむ、壁歩きなんて重力を無視した方向を選んだのが間違いだったか…
…………はっ、わたし理解した!
「…うし、倒れるなよォ……」
木と壁に間に立ち、ライズを発動する。
まずは地面を蹴って跳べるところまで跳ぶ、限界まで来たら壁を蹴る、その瞬間ライズを爆発させてまた上に行く。
そして今度は木を蹴って上に飛ぶ、以降繰り返し…これで、いくらかは……
「いっけ…たああ!……あ、あぁ、あらぁ!!」
途中まではよかったが、着地の瞬間をミスってうっかり足を滑らせてしまった。
お、落ちる…! いやあ! 屋根まで行けたのにぃ…!!
そ、そうだ、こういうときこそライズだいけるいけるって!
「い…た……く、ない……?」
「気合入ってんじゃねーか、どこまで行けた?」
「か、影虎さん!? えと、や、屋根の上までです…けど」
私の体は影虎さんの腕の中にすっぽりと納まっていた。
ひいい、なんてシチュエーションだ…!
「ほう、そいつァ……」
影虎さんは私を抱えたまま屋根を見上げてなにか考え始めた。
「そ、そろそろ下ろしてくださひ…!!」
腕の感触を覚えてしまう、っていうか甘い物かわいい物好きなヤ○ザとかドストライクですから!
つうか重くないですか、こんなのが腕にいるよりマツリ先生が腕にいたほうがいいですよねごめんなさい。
「ああ忘れてた、スマン。……どうだ、そろそろライズの試験に合格できそうか?」
「う…それはまだちょっと…自信が無いです」
「カカカ、謙遜すんな、アンタわりと筋はいい方だ」
「はあ…ありがとうございます」
褒め、てるよなあ…? ていうかそれも予備知識があるからだし、私の実力ではない。
そもそも知識があってまだ合格できないというところがね、ダメ加減があっふれまくってますよね。
痛いのは嫌いだし、怖いのも苦手だ、この人に立ち向かうということを考えると痛い怖いで怯えてしまう。
「だが、もちっと加減を覚えねーとな、毎回途中でバテてるだろ」
「はい…考えときます」
いつ攻撃がくるかとヒヤヒヤして防御体勢を解けないのも一因だろう。
私に向かって攻撃する時は手加減してるし、そこまで大事に至るような傷を負わないのはわかっているけど。
「おねがいします……」
「君も頑張るね」
「すいません毎回こんなんで…」
「そうじゃないよ、毎回殴られたり蹴られたり、普通の子なら逃げ出すレベルだろう?」
なんか、カブトに対する嫌味というかなんというか含んでませんか朧さん。
「でも強くなりたいんです、せめて他の人に迷惑をかけないくらいには」
まあこうして朧さんにお世話になってる身で言えることじゃないんですけど。
桜子さんにだって迷惑かけっぱなしで、これといった恩返しも出来てない。
朧さんは笑う。
「とにかく君はすこし誰かに甘えた方がいいよ、どこか無理をしてる気がするんだ」
「……心とか読んでます?」
「まさか。そう見えるから言ってみたまでだよ」
そんな、私無理してるように見えるかな……
朧さんは桜子さんもきっとそう思ってると言って、治療の終了を告げた。
今の私は現状に甘えまくってるから朧さんの言ってる事は的外れな気もするけど、とりあえず頭の隅に置いておくことにした。
四日目、ついにアゲハとヒリューが合格してしまった。
私といえばまだ殴られたり蹴られたり、未だ指一本触れられてないのに…あの二人はどれだけすごいんだ。
とにかくまたこれでダメさが証明されたわけで……泣きたい。
「二人とも早すぎる……!」
「がんばれよ満月っ」
「まあお前は喧嘩なんてしたことなさそうだから、仕方ないといえば仕方ないけどな…」
そして。
「やい望月朧! 後はテメェだけだ根性見せェや!!」
「え、僕もやるの?」
はっ! このままじゃ盛大に遅れることになってしまう…!
せめて今日中に合格しなくちゃ!
「満月もおしいところまで行ってるから、あともうちょっとよ」
「さ、桜子さんん…!」
桜子さんにも激励の言葉をいただいたので、なんとかしなければ。
考えてみよう、ここまでダメな中でも成功した時があった。
向こうでの初バースト、たしか触手型、ライズ、あれはガチで危機が迫ってたから。
屋根まで登った時はマンガみたいでかっこよかったと思う、極限状態と、なにかオタク的思考が合わさった時に成功しているような…
この訓練での目的は影虎さんに一発ぶちこむことだから…殴るのはこう、精神的に無理として。
そうそう、寸止めでいいんだ、てなると殴れる状況に持っていくわけだな。
体に触れればいいんだ、いいのか? というと……
影虎さんの体を触る?
桜子さんの体にタッチすると同じ要領でいけと?
ど、どどど、どこでもいいんですかはあはあ! よっしゃ私理解した! 理解したよ!
人類のパッションを受け取ったよ! 全宇宙の意志を!
あのごつごつとした筋肉を! 屈強な二の腕を! 腹筋! 腹筋!
「おねがいします!!」
「な、なんだ…? 今までと気迫が違うな……!?」
ふひ、いきますよ……よーいどん!
まずは走る!
「いいスピードだ」
跳ぶ!
蹴られる!
「おぶぇっ!」
「いい…蹴りでした……」
フィニッシュ!
「…………なんだったんだ?」
ふふふ、妄想にすればなんでも美味しくいただきます!
少し文脈がおかしい気がしなくもないけど思考がまずおかしいから気にしない。
この蹴りがヒリュー、そしてアゲハの受けた蹴り……
あの拳がヒリューたちが触れた拳…それに触れれば、つまりそれは間接キッスと同意!
いいじゃない殴り愛! デレツンデレ、ヤンデレ! ふぉおおお!
「…頭打ちすぎておかしくなったとか?」
「ノン! ドントビークワイエッ! ごめんなさい調子に乗りました。もう一度おねがいします!」
「オシ来い来い、なんであれやる気になったのはいいことだ」
私がイメージしやすいのは、通常なら萌えとからませた場合だ。
故に、頭の中を妄想お花畑にしておけばPSIなんてチョチョイのチョイだぜ!…多分。
いやでも毎日ソレはキツイ……エネルギー的に考えて。
