腐っても時渡り
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「何何! ねェ何アレ!?」
「……!!」
「なんて大きさ…!」
不謹慎だけど、ピ●ミン思い出した。
いやー、あれだよ、ヘビガラス。
もちろんヤツの特性など知る由もないあの人たちは、走って逃げ回っている。
やばいな…これじゃさっきの行動に意味が無いぞ……
だが、数秒もしていれば気付く人がいる。
「恐らく足音…! 砂の振動を感知して襲ってきてるのよ…!!」
「だとするとあのまま走って逃げるのは逆に危険だ…!」
「そうね」
桜子さんのテレパスが大気中に響き渡る、この時点でほぼ全滅だったはずだから……
うん、よし、きっと大丈夫だ、生きていてくれる。
住宅の屋根の上に避難した人へ向かってワームがすばやく移動する、そしてその家ごと飲み込んだ。
「だめだ! ハンパな場所に避難しても潰されちまう!!」
さっきの人たちはだめだった、でも、もっと高いとこに避難してる人も数人いる。
意味はあった、そうだろう私。
朧を助けに行ったアゲハが崖下に手を伸ばして叫んでる。
ワームがくる…うぐぐ、手助けできないのが歯がゆいぜえええ!
その大きな口をあけて地面もろとも食べようとするワームに、アゲハのPSIが炸裂した。
「あぶ…!」
ない、と叫ぶ前に、桜子さんが二人を鎖で引き寄せる。
「危ねェッ!!」
…ああ、そうだ、私はなにをハラハラしてるんだ、ここまで展開は一緒じゃないか。
桜子さんが狙われるのも、ヒリューがしっぽで桜子さんを助けるのも。
でもやっぱ間近で見るとハラハラするもんなんだな……
「大丈夫夜科?」
「コツつかんだって言ったろォ…?…うー…頭がボーッとする…」
「あなたはもう力を使っちゃだめ、この前の私みたいにボロボロになるわよ」
うーん…どうしよう、やっぱり下手に動かないのが一番いいのかな。
PSIのコツっていったいなんなんだろう…?
漠然とした考えをぐるぐる具現化するが、すこし長持ちしただけで消えてしまう。
完全な形にはならない、不安定な力は役には立たない。
うーむ、どうしたものか…
私のPSIがすこしだけパワーアップしたのもここの大気の影響にすぎない。
向こうから声が聞こえた、ひーふーみー…五人くらいかな。
「見ろ! 助かった奴がいるぜ!」
「よかった」
ビルの上で懸命に手を振っている、…うん、人の生死は変えられるんだ。
たとえ抵抗力が働いても、きっといけるんだ、きっと!
たとえその人たちのいる場所でなにかが爆発したとして…も。
「!?」
「何だ、爆発した!?」
風の吹く音が聞こえる。
生存者の声は消えていた。
「オイ、まだ一人生き残ってるぜ」
その時、爆発物の正体がわかった。
タツオの持ってる銃のようなものから放たれたバースト弾、すさまじい威力。
ワームがタツオの方向へ向かっていく。
「そーだァ!! いけいけそんな奴喰っちまえーッ!!」
微かな音が耳の端にかかる。
「逃げた!?」
「何だよォ! 使えねーあのミミズ!」
「何かをすげぇ嫌がってる」
「音だわ…! 恐らくマスクから発する音…!」
「タツオー―!! 生きていたのか…!? 本当にお前なのかー!!」
ヒリューがタツオに呼びかけたが、こちらに気付かれただけで逆効果だった。
ってばかあああ! こんにゃろおお!
上層階が破壊され、大量の瓦礫が落ちて…よ、避けられるわけねぇよチクショー!!
「だっ! あた!」
あ、あぶねー…間一髪?
うん…まあ結構大きい石とか当たったりしたけども。
桜子さんは…あっちか。
「ケガねぇか?」
「うん」
パラ…と小石が落ちてくる、桜子さんに当たったらどうすんだあぶねーな。
と思った瞬間。
「あ…!」
遅れて瓦礫が落ちてきた、ヤバイあのままじゃアゲハに…!
「あぶないっ!!」
「なっ…」
なんとかしなきゃ…!
アゲハはとっさに桜子さんをかばう。
だが、瓦礫の落ちた場所にいたはずのアゲハと桜子さんはいつの間にか私の手前に。
アゲハの体には触手のようなものが巻きついている。
…えーと?
「…これ、バースト?」
「…みたいね…」
「ナンだこりゃ…満月お前ある意味すげーよ」
バースト…バースト…成功した。
「やったあああ! できたぞおお!!」
「大気の影響かしら…でもどうして急に…」
「あー…そうだね、ちょっと考えてみる。だいたいはわかる気がするけど…」
うーむ…
「それより、アイツは?」
アゲハが外の様子を伺う。
…まてよ、原作でもう一回瓦礫が落ちてくるなんてことなかったぞ、やっぱ多少改変が入ってるのか…?
だとしたら予期せぬ人が死ぬ可能性があるな…用心しておこう。
「何だアイツ…座り込みやがって…もう撃ってこねぇのかァ……?」
それにつられてタツオのいる方を見る、確かに座り込んでなにかしているようだ。
「弾切れ…?」
「そうか…あの銃の威力は彼のバーストの力によるもの…」
ようやっとPSIが使えるようになったわけだし、今度は桜子さんの役に立ちたい。
桜子さんにおんぶに抱っこじゃ申し訳ないからね!
ここで覚えておくべきはライズだな、うん。
イメージ…それから具現化……
アゲハみたくスピードタイプがいいね、きっと機動隊として役に立てる。
ライズのイメージをしながら走ってみよう。
「それっ!」
助走しながらバンっと床を蹴ってみるがなにも起こらない。
まだイメージが足りないかな……そりゃあ!
「…なにしてんだ?」
「あ、いや…準備運動?」
いけないいけない、空気を読まなくちゃ。
スピードタイプのイメージってなんだろう、脚力? 足にオーラがまとってる状態かな。
むーん…これか! 違うな…まいった。
時間が経てばどうにかなるかもしれない、今はまだ様子見だな。
「…どうした!? あんたすげえ鼻血だぜ」
「…いや、なんでもないさ…ちょっと…寒気がするだけだ」
壁に手をついた朧は、そのままどさりと倒れてしまう。
慌ててかけよるアゲハが抱きかかえると、そのアゴに手をやって…
き、ったあぁああ…! 生きてて良かったあぁ…!!
「うわああああクッ首ヒィィィィ! クビにィィィィ!!」
「お願いだ、そばにいてくれ…病気の時は誰か一緒にいないと僕ダメなんだ…」
「はなれろおおお!!」
眼福眼福、記念にパシャーリ。
「なに撮ってんだよおお!」
「いやいやなかなか無いよ人気俳優に抱きつかれるなんてさぁ、アゲハのお姉さんに送りつけようかなー」
「うわあああそれだけはやめてくれえ!」
っても、アゲハのお姉さんのメルアド知らないんだけどね。
空間に不穏な空気が渦巻く。
「だからァ! 仕方ねーじゃん、動けなくなった病人は置いていくしかねーよ」
カブトが弱者は悪とばかりに吐き捨てる。
それにアゲハが反論する、カブトも間違ってないけど、アゲハも正しいんだよね。
「なんとか5人全員助かる方法を考えましょ、私もそうしたい」
この場合、一番の経験者である雨宮さんの一言で決まる。
つまりそういうことだ、わかったねカブトくん。
「問題は、銃のリロード時間ね…」
作戦会議。望月朧が動けない状態でどうすればいいか、どう対処するか。
私はどうせ役に立たないんだろうな、一番PSIが遅れてるんだもの。
ライズのイメージもなんとなくつかないし、やはりそこは一般人てことか……
悲しくなってきたな。
すると、カブトがタツオのバーストは4発溜めないと撃てないのではないかと指摘した。
桜子さんが確かめて、それは確定的なものになる。
「困ったら何でも聞いてくれよリトルバニー…☆ おれってばこう見えて結構頼れる男なにょさ…」
ゆーしー、って。ムカ。
アゲハとヒリューが揃って桜子さんからカブトをひきはがす。
「キサマ調子にのるな…!!」
「調子にのるなよ…!!」
「何なんだお前ら!? 今までで一番変な威圧感かもしだしてんぞ!」
「カブトくん、気を付けないと。桜子さんはふたりのアイドルなんですから」
私も投げ飛ばされたカブトの後ろから忍び寄る。
「だから、調子にのらないでくださいね?」
「は…はい…!」
まったく、桜子さんは私のアイドルでもあるんだから取らないでほしいな。
カブトが倒れてタツオの銃のリロードが完了し、桜子さんが弾を消費させるために出た。
足手まといでもなにかできればいいのに…せめて遠距離系の武器さえあればなんとかなったのかな。
もしかしたら桜子さんがここで死んでしまうかもしれないと考えたとき、体中が冷たくなった。
「立てぇぇぇ雨宮ァァァァァ!!」
だから、桜子さんが無事に帰ってきたとき、本気で安心したんだ。
「ただいま」
「さささ桜子さああん!! よかったああ!」
「大げさよ満月、慣れてるって言ったでしょう?」
そこから打つ手がなく、まんじりとせず時間が過ぎた。
望月朧が復活するまで、あと1時間。
午後9時30分、アゲハたちが動いた。
私は待機組としてただ作戦の行く末を見守る。
次こそは、次こそは絶対役に立つんだ…ちくしょう。
直後、朧が動き出す。
スーツの上着に腕を通し、行ってくると言い放った。
「行く…!? 行くって…あんた何言ってんの!?」
「彼らのところへ行くんだよ…僕だけのけ者なんてズルイじゃないか!」
「はァッ…!? ズル…って!?」
「まったくフザけてるよ僕だって何かしたいんだ!」
いやズビシじゃないです朧サン。
聞かないのはわかっているが、一応説得を試みる。
「私も何かしたいですけど、あの中に突っ込んでいくのはいくらなんでも…」
「僕は決してムキになってるわけじゃあない!」
これは魂の問題、いわば運命なのだというのが朧の主張、
行ってきますじゃないです、桜子さんに怒られます。
後々能力を発揮してくれるのは知ってるんですけどそれでも桜子さんに怒られちゃうんです。
朧が出て行って、外からは轟音が聞こえ、どうするか迷う。
追うか、追わないか、物語を楽しむなら追った方がいいだろう、しかし命のキケンが…
「……しょうがない」
「しょうがない? しょうがないってなにが!?」
私は荷物を抱えて、カブトをちらりと見る。
…どうしようこの人、曲がりなりにも成人男性だろう? いや、立ち上がるくらいは…
置いても行けないし、ちょっと重すぎるけどなんとかなるだろう。
「……ッ!?」
外からすさまじい力を感じる、アゲハのPSIか?
純粋な感情の爆発だと桜子さんは表現したが、まさにその通りだ。
ビリビリと、こちらにまで伝わってくる怒気。
「…行きますよ!」
「行くって、子猫ちゃんまで!?」
「……付いてくるのと置いていかれるの、どっちがいいですか?」
「い…行きます」
カブトの腕を肩にまわして、いざ立ち上がろうとした。
ずしっとのしかかる体重、人間は体重の約半分なら持ち上げられるらしいが……
「ぐ、ぎっ…!」
「あー、だいじょぶ? おれ重たいでしょ」
「そう思うなら…自分の足で立ってくださいよ…!!」
「ごめんにゃ、全身にチカラが入らなくって☆」
こ、のやるぉおおお…!!
そのまま、よろよろと一歩づつ進んだ。
時間かかりそうだなぁ…
もっと力があれば早く駆けつけるのに。
「お……なんか慣れてきたかも…」
「ねー、もしかしてみんな化け物をなんとかしたら先に帰っちゃったりしない?」
「…さー? もしかするともしかするかも知れませんね、みんな必死だし、案外忘れられてるかも…」
「ええ!? しょ、しょんなぁ…」
ちょっとした腹いせ、うはは、おもしれー。
アゲハのあの威圧感が消えた、タツオとの決着がついたらしい…
すっと息を吸い、もうひと踏ん張り、そろそろ腕が限界だがやるしかあるまい。
「ふぅ…見えてきましたよ」
「ほんとに!?」
その時地面が揺れた。
前方、桜子さんたちのいる方向にあのワームが姿を現した。
思わず立ち止まる、というより、立ち止まるしかない。
「あ、あいつ…まだいたわけ…!?」
「みたいですね」
しょうがない、タツオがあいつを追い払うまで休もう。
カブトをすぐそばに下ろして私も座る。
ここから桜子さんたちが良く見える、桜子さんがあのタツオの笛を鳴らそうとして失敗。
ゆっくりと立ち上がったタツオが、アゲハの手にある笛を吹き鳴らした。
「ゲッ、あれもしかして間接キッ…!」
「その気はないと思いますけど」
…タツオはね。
ワームが退散していく、うーん、なにげに尻尾がかわいいかも。
タツオが話す、禁人種の上に立つ人間…完全悪ってカリスマがなきゃあやってられんね、それがドルキさんにあるかはともかく。
「ね、あれ完全におれたちのこと忘れてない?」
「そうみたいですね」
「まじで! ワアアア! オレたちを忘れてくんじゃねえぞぉぉぉ!! 連れてってくれよぉこの薄情者ォォー!」
アゲハがうんざりした顔でカブトを見た。
桜子さんがライズを使ってすぐこちらに来て、荷物とカブトを持つと告げた。
私も桜子さんのあとに続く、それと…気のせいかもしれないが、さっき立ち上がる時に掴んだ瓦礫にヒビが入った気がした……
気のせいだよね、うん、瓦礫なんか崩れやすいもんね。
「こっちでいいのかい!?」
「そこにもう見えてんだろーが方向音痴ッ」
長かったような短かったような、これからしっかり訓練しないとだめだと思い知らされた。
「さあ、行きましょう…」
「みんなカードを出してくれ」
カードを出すと、公衆電話が光り始めた。
「先に行け雨宮」
「分かった」
桜子さんがカードを公衆電話に入れて、先に現代へと帰って行く。
私あれ苦手なんだよね…ぐるぐる回る感じとか。
「消えた!?」
「オラどんどん行こうぜ、次は満月だ」
「う、うん」
目の端が光る、あまりいい気分じゃない。
すこしの浮遊感と、ぐるぐる回る感じと、排気ガスのにおい。
今度はうまく着地できた、そばにいる桜子さんにピースをすると、桜子さんはにっこり笑った。
当面の目標、実地戦闘に耐えられる体を作ること。
