腐っても時渡り
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「う…」
む、気絶してたみたいだ…
空が白み始めている、夜が明けたらしい、熱もひいてるな。
服とか草とか血だらけなのはいい、まずは顔を洗いに行こう。
昨夜に引き続いてトイレを、いや水道でいいか、探しに行く。
ぐるっと歩いてみると、あった、なんだあんなところに。
やはり少々でも明るくなっているとわかりやすいな、うん。
「ぷはっ…スッキリしたぁー…!」
さて、水はこれでいいとして。
「ごはん、どうしよう…お腹すいた」
意識したら途端にぐぅぐぅ鳴きだすこの腹、なんとかしたいものだが。
いかんせん全財産2ケタ、ふ、悲しいけど現実なのよね、コレ。
泣きたいよ…前言撤回。この世界も厳しいです、辛いです。
いまはまだ肌寒いから完全に陽が昇ってから行動することにする。
「それはっ、さす、がに」
私が何をしているかって?
「ないってええええええええ!!」
顔のこわいスーツのおじさんに追いかけられてるところだよミ星
経緯を手短に話すとぶっちゃけ取引現場を見ちゃったっていう、そういうベタな感じだよね!
なにを、とは言わん。でもまあ箱一つは買いすぎじゃないかなぁ!
もうポリには追っかけられるしヤーさんには追っかけられるし散々だよまったくもう、ほんとに!
でもだからっつってこんなかっこで表をうろつくわけにはいかんしね、血まみれとかまじ引いちゃうっていうか。
「チッ、どこにいったあのガキ…ちょこまかしやがって」
ひええ、だってちょこまかしないと当たっちゃうじゃないすか!
渡されたもん早速使うとか正気の沙汰じゃないよね!
ていうかあの高熱がひいたあと三度目の命の危機とかほんとありえないよね!
「そのうち出てくるんじゃねぇか? 遠くにゃ行ってないだろ」
「よし、このへんよく探せ」
探すなぁあ! とと、声出る。
最初は家出少女、次は目撃者、今度はなにで追いかけられるかなぁ…
はぁ、犯罪者にグレードアップしなきゃいいけど。
しかたない、しばらく息を潜めてここでやり過ごすしかない。
ゴミ箱の中でどれだけ時間を稼げるかはわからないが、いま出て行くよりはるかに安全なのは間違いない。
「はぁー、ちきしょうガキが手こずらせやがって…っと」
え、なにいまドスって。
え、うそ、ふたの上に座ってる? なにこいつサボってんだ?
あでも声がさっきの偉そうなやつと一緒だ、じゃなくて、なんで座ってんだコノヤロウ!
そんなとこ座られたら出るどころか呼吸すら危ういだろうが!!
いや、もしかしたらこれが一番安全かもしれないな、灯台もと暗し的な。
ほんとこのゴミが生ゴミじゃなくてよかったよ。
…お、そろそろ、諦めて、くれる、かしら。
影が消えて、足音が遠ざかっていく、もう、大丈夫、かな。
「…よし、ふー、ああ新鮮な空気。さて走って外に出て…」
さっさと遠くに逃げ込むか、とゴミ箱から足を出した瞬間。
「あぁ!! てめぇそこにいやがったのか!」
「げ! や、やばいって今度こそ…!」
ダッシュ!!
なんとか大通りには出たもののやはりまだ諦めてくれる気はないらしく。
やべーやべーよ、どうしようこれ私死ぬのかな。
なんてまた死の恐怖を味わうのだ。
一応、人は避けながら走ってるていうか向こうから避けていってくれるし。
……あ。
「ポ、ポリス…」
しかもあれアイツだ、私を追っかけてきたほうだ。
挟撃? 挟撃なのね? 私を死なせるつもりできてるのね? 死ぬのね? 死ね!
いや、きっと後ろのヤーさんを捕まえてくれるはず…いや、止められたらアウトだな、撃たれる。
いやいやいや、そんな考えいらんわい、だいたい私を撃ったら密売的な罪より重くなるじゃん。
あーでも説明できないからポリスには捕まりたくないな…!
なんて考えてるうちにDANDAN☆距離縮まっていくみたいな!
「お? あ! おいお前…!」
「満月!?」
「え、あ!! ダっ!」
後ろはヤーさん、前はポリス、雨宮さんとアゲハとヒリュー。
「おっ…お兄ちゃん!!」
「「はあああっ!?」」
「ごめん、いきなりで迷惑かけるけど助けて! なんていうか、見ればわかるから!」
なんか叫びながら走ってくる怖いお兄さんが、いるよね?
「ほんとにいきなりなにやったんだお前…」
「やってはいないんですけどね…」
かれこれ、ヒリョウさんがヤーさんをぶっ倒してくれて、雨宮さんが私と一緒にポリスメンに説明してくれて。
本当になんと感謝すればよいやら…ごめんなさあああい!
「さて、説明してくれるかしら」
「あ、えと、なにを…」
だってここまでの経緯は話したはず…
「何を、じゃなくて。なんであなた二日たってまだ家に帰ってないの?」
「うあ、そのグルグル目怖いです…説明しますから、ごめんなさい」
「心中察するぞ満月…」
うん、こわい。
だって、どう説明すればいいんだ、それっぽい言い訳を考えなきゃな…
同じサイレンドリフトでも、原作の展開を話せば殺されるのだろうか。
それを実験するなんて命知らずなことはしたくないけど…キュア使いがいればやってみたくはある。
…いや、言い訳よりもっと手っ取り早い方法がある。
「なんていうか、もう…何も覚えてなくて、家とか、なにしてたとか…」
「記憶喪失か? いくらなんでもそりゃ…」
「そうね…ちょっといい?」
そういうと雨宮さんはそっと私の頭に手を触れる。
「……わかったわ、とりあえず早く私の家に行きましょう、お風呂に入らなきゃ」
「…あ、ありがとう、雨宮さん」
優しさが身にしみます…必死で生きてりゃいいことあるわ、ほんと。文字通り。
「ここはパパが私の部屋用に借りてくれたマンションだから、私一人で住んでるの」
「雨宮の部屋用!?」
雨宮さんの言葉の端々には悲しさがまぎれていたが、過去の話だと割り切っているのだろうか。
立ち直っているのかいないのか、普段はそんなこと気にすることもないのか。
少なくとも今は、祭先生がいるから大丈夫なのだと思いたい。
ああああああ、こういうキャラ真っ先に攻略したいタイプなんだよね私。
まてまてまて、これは現実、コレは現実、現実だこれは。
選択肢なんて一切でないぜええええ、よし、落ち着いた、たぶん平気。
だんだんと、雲行きが怪しくなってきていた。
「満月、あなたはここで待ってて、夜科と朝河くんはこっち」
「おー」
「で、一体なにすんだ?」
「来ればわかるわ」
あー、特訓するんだ。
そういえば私一度もPSIを試してないな、暇があればやってみよう。
しばらくして、雨宮さんが戻ってきた。
「ふう……で、満月。悪いけどあなたの記憶を見させてもらったわ」
「え、あー…そうかあんとき」
頭に触ってた時だな、多分。
どうしよう、漫画の情報とか伝わってたら。
「あら? 意外と驚かないのね、まあ手っ取り早くて助かるけど」
「どうも。それで…どうでした?」
「あなたの記憶が混濁してたけど、ネメシスQに呼び出される以前の記憶がはっきりしてないことがわかった」
えーと、つまり。
「どこかの公園みたいなところでカードを拾ってすぐ呼び出されたみたいね、どういう場所かもわからないし…」
「あ、うん、そうそうそう、公園、どこの公園だったかわからないけど」
「信じるわ、あなたの言ってること、これからゆっくり思い出していきましょう」
さあさあ進んで、とぐいぐい押されてやってきたのは、お風呂場…?
うーん、さすがは女の子、すごくキレイにしてあるなぁ。
「あとでタオルと着替えを持ってくるわ、この数日でいろいろあったと思うから十分に疲れをとってね」
「う…は、はい…」
ああ…とてとて小走りな後姿もかわいいけど、いまの天使の微笑みが…胸にきた。
なにかのゲージがギュンギュン上がっていったわ。なんだろうこの感情、萌え。
ていうか雨宮さん…今の一言で充分癒されました…
そんでお風呂の中でちょっぴり泣いた、だってみんなやさしいんだもんよ…
「満月の記憶があやふやなのは間違いないと思うけど…すこしおかしいのよ」
「おかしい?」
「ところどころにノイズが混じりすぎてる、まるで誰かが記憶を読むのを邪魔してるみたいに…」
「だ、誰かって…一体誰がんな…」
「わからないわ。でも満月がなにか知っているかもしれないのは確かよ」
「これからも満月の様子を見ておこうと思ってる」
お風呂をあがったあと、リビングの机の上に紙とおにぎりが置いてあるのが目に入った。
置き手紙かしら、と手にとって読んでみる。
ほとんど食べてないみたいだったから、よかったら食べて。
向こうの世界についていろいろ説明することもあるけど、今日のところはゆっくり休んで。
おにぎりはたぶん鮭の混ぜご飯だと思う。
いわずもがな美味しい、うん、やっぱりごはんってさいこうだ…!
でもゆっくり休んでって…こっちに家もないし…まさか。
「…雨宮さんと『ドッキリ☆ひとつ屋根の下』…!?」
いや、そんなことを考えてるばあいじゃない、てかありえないし。
それよか雨宮さんの足手まといにならないようにPSIについて思いださなきゃ。
技とか…かっこいいよなぁ、いまのうちに形を考えておいても損じゃないよな。
つっても自分が得意なものによって違うだろうし…
椅子に座っておにぎりをほおばってるうちに眠たくなってきてしまった、こんなとこで寝たら雨宮さん困るだろ…
寝ちゃいけない、寝ちゃいけない、寝ちゃ…
「…満月、満月」
「あ。…うわ! ご、ごめんなさい雨宮さん! 寝ないようにしてたのに…!!」
「フフ、いいのよ。あっちにあなたの部屋も用意したから布団で寝てもらおうと思って」
「…え? 私の部屋?」
「ええ。あなたが記憶を取り戻すまで私と一緒に生活しましょう、満月」
「え、え、ウソ、マジで? ホント…?」
「迷惑?」
いや…いやいや、そんなことないって。
だってほら、出来すぎてるじゃん、そんなうまい話あると…
だって、だって、こんな、見知らぬ、変人…怪しいし、怪人だし、アレだし…
「め、めいわくじゃな…ありがと…ああ、ありがとぉ…ッ!」
「あーあーホラもう、泣かないの、泣き虫ね満月は」
「うぅー…っ、ごめんー…」
「オーイ、オレのことも忘れるなよ。…まあなんだ、よかったな」
「うん…改めて、ありがとう雨宮さん、全力で、っ、家事とか手伝わせていただきます」
へへっ、涙もろくなっていけねぇや。
「じゃあ、私は朝河くんを送ってくるから」
「またな満月、お前もPSIの訓練がんばれよ」
「ん、じゃあ…」
バタン、と扉が閉まる。
…で、あっちに部屋を、ってどこの部屋?
とりあえず適当に開けてみよう。
こっちは…いやいやこれはトイレだって、見なくてもわかる。
ここの部屋はどうだろう。
「…あ、ども」
「おー、うぃす。お前も訓練しにきたの?」
「あ、いや、私はまだなにも説明されてないから…」
「フーン…、はぁ…」
「なにがあったかはわからないけど、とりあえず私はアゲハにエールを送ります」
「おう、どーも」
大丈夫大丈夫、アゲハはダメな子じゃないよ。
…雨宮さんが帰ってくるの待とう、おにぎり食べて。
それから聞けば早いよね、うん。
雨宮さんご飯…うへへおいしかったなぁ。
「明日からPSIの訓練はできるし、おいしいご飯とあたたかいお風呂と安心できる寝床がある」
きっと神様が「よく逃げ切りました」ってご褒美をくれたに違いない。
でもね、神様、そんなことよりこの世界に連れ出した理由を詳しく説明してもらいたいな!
「…まあ、いいか」
明日もそこそこ安全な生活ができますように…おやすみなさい。
