腐っても時渡り 原作沿い編
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「マツリ先生!!」
「おー、満月! お前もよく戻った、いやあさっきの見たよ、すごかったなあ」
「ですよね!? リコがみんなと合作したそうですよ!」
「あいつら…やることが派手すぎんだろ…」
「私たちの歓迎らしいよ。鯨にかかってんのかな」
「…満月…それは」
そこまでは考えてなかったかな、スベった的な空気になってるのいたたまれない。
リコはさっきのがよほど疲れたのか、すぐに眠ってしまった。
目を覚ましたら、また出なければならない。
「…ったくあの二人は本当にバカだな」
未来で知ったことを聞いたマツリ先生は、豪快に笑ったあと嬉しそうにつぶやいた。
影虎さんとのロマンスを知ったらそこに赤面も加わりそうだが、黙っておいた。
「それから…」
「まだなにかあるのか?」
「私のことです、未来で双子の姉が見つかりました。W.I.S.E によって禁人種にされた状態で」
「なに…?」
私の肉体と記憶の状況、未来で姉がやったことを話し、現在の姉の所在に関する手がかりをつかんだところまで話した。
「また双子の姉か…なにかと縁があるな、我々と双子は」
「ははは、なんの冗談だってなりますよね」
あんな世界じゃ倫理なんざハラの足しにもなりはしないんだろうけど、まあそれはいいとして。
「そんで、はるかぜ学園には前行ったことがあるんですよ、リコがいたところだったんで」
「ホウ、そうだったのか。もしや、天戯弥勒の記録も…?」
「…いえ。リコの記録を消すときに探してみましたけどもう抹消されたあとでした、はるかぜ学園からは情報は出てこないと思います」
実際、リコとジュナスのこと以外で情報はないんだ、嘘ではない。
「でも、姉が一時期あの施設にいたらしいので、そっちは私が調べに行きます。いいですよね先生?」
「ああ…お前なら大丈夫だろう、私も付き合うしな。夜科と桜子は今回は休め、お前たちは多くの人間にマークされてる…下手に動けば大騒ぎになるだろう」
私はこれから姉を探しに、桜子さんたちは休息、と今後の方針が決まった。
そろそろリコも起きたかな、出かける前に挨拶をしてこなきゃ……
あとなにがいるかな、財布と、携帯と……
「そうだ桜子、宣戦の儀のDVDはどうなってた?」
「……え」
「なんだ、確認してないのか? じゃあそっちを先に見てから行くか、桜子の家にあるんだよな」
「…はい……多分……」
って、準備に気を取られてる場合じゃない!
「待った待ってください先生! DVD! 持ってきてます!!」
「なんだそうなのか、それならそうと……桜子?」
「おい雨宮、大丈夫か?……雨宮!?」
桜子さんは青ざめた様子でどこかに走り去ってしまった、そのあとをアゲハが追いかける。
「ど、どうしたんだ…? 満月、なんか知ってるか?」
「……」
「…事情がありそうだな。桜子のことは夜科にまかせるとして、DVDは私が確認しよう」
荷物は全て部屋へ運び込まれたはずだ、部屋に着くまでに夢喰島であったことをマツリ先生に話した。
桜子さんのことを守りたかったのに、結局私は無様に敗北してしまっただけだった。
「―…そんなことが…気に病むな満月、お前のせいじゃないさ。桜子もすぐに元気を取り戻すだろ」
「わかってるんです、未来がわかるだけじゃどうしようもないことがたくさんあって、私一人が抱えきれるものじゃないんだって…でも、それを目の前にするたび、自分のいる意味を失いそうになる」
朧さんとはぐれたあの廃棄場で一緒に捨てたと思っていたけれど、やっぱりそう簡単には捨てられないみたいだ。
むしろ、捨てきれないで引きずった部分が醜く露出しているようで。
やれることはある、でもそれが無意味に終わったら、もしも悪い方向へ作用したら……不安は尽きない。
バッチン!
「――!!? いったぁ!?」
背中、平手…!?
「バァカ、後ろばっかり見てもしょうがないだろ。だいたいな、お前は何もできてないと思ってるようだが、自分の身を案じて心を痛めてる存在がいるだけでどれだけ救われるか、わかって言ってるのか?」
「それ……は…」
「存在意義なんてものは、考えるだけ無駄なんだ、行動自体に意味があろうとなかろうと、行動できることに意味がある、存在はそれだけで意義があるんだ。前を見ろ、満月、お前の行動は必ず実を結ぶ」
前を見る、廊下の先に、リコの姿が見える。
「満月ー!」
リコがいることで変わった未来は、良い方へ変わっていくのか?
私は、ちゃんと未来を変えられている?
「満月、もういたいとこない? だいじょーび?」
「…いたい、とこ?」
「うん、ずっとココがギューってしてたよ」
リコは自分の眉間を指さして変な顔をした、私、そんなにシワ寄せてたかな…?
「いまはなってないね! いつもの満月だ」
自分の身を案じて心を痛めている人がいるだけでどれだけ救われるか。
桜子さんも、マツリ先生も、リコも、みんな、私に優しい言葉をかけてくれた、心配してくれてた。
何度も不安になって、何度も解かされて、救われてきた、私が変えようとしてきたことは、無意味じゃなかった。
未来での姉の言葉、あれは「私」じゃなく私に言ってたんだ、私のことを案じてたんだ。
居場所はあったんだ、存在することは最初から許されてた、私が気付くのが遅かっただけ。
ただそこに居たいと思えば、そこが居場所だったんだ。
未来を変えられても変えられなくても、私はここに居ていいんだ。
「うん、もう平気 リコと、みんなのおかげ」
そう言えば、リコは太陽が輝くような表情で笑った。
「満月、わたしもうおるすばんいっぱいできるよ! だって満月、ぜったい帰ってくるもんね!」
「リコ?」
「ババさま言ってたよ、またどこか行くんでしょ? だから行ってらっしゃいを言いにきたの、みんないるからさみしくないよ、満月、いってらっしゃい!」
うわあ…うわぁやばい、人間って、子供って、こんな、こんなに。
「こんなに早く成長されると私がさみしい……」
「オイオイ」
と、それは置いといて。
「マツリ先生、DVDは部屋の中です、家にあったの全部持ってきました。私は一足先に向こうへ行こうと思います」
「…わかった。だが一人で行くな、私が助っ人を呼んでやろう……集合場所は追って知らせる」
「ありがとうございます じゃ、ババ様に挨拶してきますね、行こうかリコ」
「うん!!」
「フフ……成長が早いのはお互いさまだろうに…――モシモシ、影虎か?……」
ババ様の部屋、相変わらずぬいぐるみがたくさんあって、あれ、前よりいくつか増えたか…?
「もう行くのかえ?」
「はい。ちょっとだけお出かけしてきます、それでまたお願いなんですけど…」
「スッキリした顔じゃな、ええじゃろ、なんでも言うてみい」
正面玄関の前で車が待っている、約束した場所までこの車で向かう。
結局荷物は最低限、財布と携帯だけだ、それでいいのか女として…なんて、誰も言わないけど。
「私さー、お姉ちゃんがいるんだって、いまどこにいるのかわかんないんだけど、みんなにも紹介するね、見つけたら連れてくるから」
「そーなの? 楽しみ!」
「じゃ、行ってくるね」
エルモア・ウッド総出で見送られて、私は旅立った。
「――ウス、元気そうだなァ」
「影虎さんも。お久しぶりです」
やっぱり、雰囲気とかオーラとか、なにもかもちがうなあ……これでモンブラン大好きなんだもんな、やば。
「私の用事のためにわざわざすみません」
「なに、姐さんの頼みとあっちゃ犬探しだって全力だぜ俺ァ、それに俺とあんたの仲だ、遠慮なんかすんな」
「それは嬉しいですね、じゃ、よろしくお願いします」
「ああ。と、その前にちィと寄り道していいか?」
車が大きいのか私が小さいのか、椅子が大きく感じられる、うむ、この感触、いいな。
とある路地で車が止まる、寄り道って……
「ちょっと待ってな、ダチ連れてくるからよ」
「あ、はい…あの、あまり手荒にはしないであげてくださいね…?」
「へッ、俺ァいつだって優しいつもりだぜ」
あー……うん! 気にしないでおこう!
数分すると、影虎さんは騒々しく戻ってきた。
後部座席にどかどかと二人乗り込んで、運転席に影虎さんが座ると素早く出発した。
「というわけで俺達がこれから向かうのは秋田県火ノ間市はるかぜ学園! この仕事は絶対ミスれねェ、テメェら真剣でやんなかったらブッ殺すからな」
ひょあぁ……!! ドス声やべー! おしっこちびりそう!
「先にオレがブッ殺すぞ!! なんでオレ達が無理矢理手伝わされなくちゃならねーんだ!」
「やめろハルヒコ、俺達はこの人に一生逆らえん」
「殴るかフツー!? これは拉致だ拉致!!」
ああ…なんか、なんかすみません! 気にしないの無理!
「あの……ごめんなさい、なんていうか、影虎さん…不器用? で…? そういうことですよね…?」
「おッ…! オンナノコ…ッ!?」
「うるせー。テメーらヒマだろが、俺の旅行の誘いくれえ嬉しそうについて来いや」
「いやッ…!! あー……その、もしかして彼女…?」
「とんでもねェですよ」
「俺は姐さん一筋と決めてんだ」
楽しい旅が始まる…かな?
「なあ、星崎…って言ってたよな、いくつか聞いてもいいか?」
旅が始まって数時間、ふいにランさんが口を開いた。
「あんた、この人とどんな繋がりなんだ? 何故この旅に同行する?」
「ハッ…! まさかアンタもオッサンに脅されて…!?」
「テメー俺をなんだと思ってやがるんだ、ンなわけねェだろ」
「ちがいますよ。というか、元々目的があるのは私で、影虎さんが同行を頼まれた人なんです」
「そ。うら若き乙女を預かるんだから、万が一に備えてお前らにもついてきてもらったってワケだ」
あ、そういうことだったんですか…てっきり寂しいからだと思ってた。
それにしても乙女って…乙女、うはは腐っててスンマセン。
「……詮索するつもりはないが」
「あ、理由です? 話すとちょっと長くなりますけど…」
「先は長ェんだ、ゆっくり語りゃイイ」
…………あ、ちょっと待て、この状況。
バチィインッ!!
自分の顔を思い切り叩いた、めちゃいたい。
なぜ? 顔が赤くなるのをごまかすため。
「…話し辛ェことだったか?」
「いッ、いえ…ダイジョブです」
逆ハーレムじゃねーーーーーーーーーーか!!!
てーかまってあの二人いなかったら影虎さんと二人きりだったんでしょアッブネ!!
ぜんっぜん意識してなかったけどドストライクだったんだよこの人は!!!!
もしかしたらウッカリ妄想ぶちまけるとこだったかもしれん……!
うわーーーーすっかり忘れてた、ていうか思い出すタイミングなんなの!?
ていうかランさんもハルヒコさんも嫌いじゃねーしむしろ好きだし!! ランハルもハルランもいいよねって!?
ぼへえぇーーーーーーー!!! すっごい久しぶりだコレ! 胸がくるぢい……!!!
「な、なんか、持病があったか…? 発作か?」
「車酔ったか? どっか止めたほうがいいんじゃねェの!?」
「わーーーー!! チガます大丈夫です! ある意味発作だけどそーいうんじゃなくて…!!」
オオゴトになった! どうしよう、なんて言う!?
「そのッ…! 感動屋さんなんですッ!!」
う、うわッ……一気に静かになった…! はっずかし…!!
「ま、まあいいや……その、前提として、私、生まれてからつい最近までの記憶がないんですよ、先月…先々月くらいまでかな」
「記憶喪失…?」
「そんなとこです。そんで、最近双子の姉がいることがわかりまして…ただ、どこにいるかまではさっぱり」
――……わからない? どういうこと?』
『そのまま。満月がいなくなって、身寄りもないわたしはいろんな施設を転々としてた…サイキッカーであることがバレたり、いやな施設で逃げ出したり』
姉に現在の居場所を聞いたら、こう返ってきた、つまり、現代での正確な居場所はわからないということだ。
『はるかぜ学園みたいなとこって、けっこうあるんだね』
『……はるかぜ学園? 覚えがある、少しだけいたことがあるかもしれない』
姉の記憶映像でも確かめた、たしかにはるかぜ学園だった、そこ以外は、あやふやでなにもわからなかった。
下ばかり向いていて、施設の名前も周囲の景色もわからない、それに禁人種にされたせいか映像のノイズもひどかった。
「はるかぜ学園ってとこに居た、ってのだけはわかってるんで、せめてもの手がかりを探しに行ってるわけです」
「…そうだったのか…」
「満月ちゃん、記憶ソーシツで身寄りもなくてこの数ヵ月どうしてたわけ?」
「あるきっかけで超優しくてかわいい女の子と出会いまして、その人の家でお世話になったりツテでお仕事をもらったり、めちゃかわいい女の子と友達になったりです」
「そのお仕事先ってェのが俺だ、つってもいかがわしいモンじゃねーぞ、ちょっとした書類の作成だ」
次の仕事は今回の旅が終わってからやる予定です。
「ソレってどんな?」
「…………守秘義務があるんで言えません」
「ゼッテーいかがわしい仕事だ…!」
「俺達が言えたことじゃないだろう…」
――…
「あ、ここのパーキングエリアの限定ロールがチョーうまいって女の子に聞いたことある」
「なに…!?」
「帰りに寄りましょう影虎さん」
「当然」
「わざわざ一周してまで…!?」
――……
「そーだメアド交換しない? なんかあったら連絡してよ」
「お前の場合なにもなくても連絡するだろ」
「じゃあついでに俺のも頼むわ、ケーキバイキングとか行きたくなったとき連絡してくれや」
「―……えへ。ここ最近でアドレス帳増えてきてうれしいです、繋がってるって感じしますね」
「…俺も交換しとく」
―…………
「――――ここだ」
長い時間車で走り続けて、見覚えのある門の前で止まる。
はるかぜ学園、また来るとは思わなかったけど、ここに姉の手がかりが……
何故だか嫌な感じがして、私は思わず身震いをした。
