腐っても時渡り 原作沿い編
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「子猫ちゃん!!」
うおっ、飛びかかってくるからつい避けちゃったよ……
「ご、ごめんカブト……」
「ぬぐぐ…俺ってばこんなんばっかり……」
「オメーが悪いだろ」
カブトの目が覚めたというので来てみたら、まあこんな感じで。
元気そうでなにより、ヴァンくんの治療を受けて元気じゃない人なんかいるわけないけど。
アゲハが、根のみんなにネメシスQのゲームのことを話した。
あとからアゲハに聞いたけど「わかってたけど緊張した」そうだ、信じてもらえないんじゃないかとヒヤヒヤしていたみたいだ、あと、ルールが変わってないかもとか。
「満月…帰っちゃうんだよね?」
「うん。けど、リコのところに戻るよ」
「うん……満月、ぎゅってしていい?」
返答を聞く前に、リコは力強く私を抱きしめる。
答えなんか決まってる、私もリコを強く強く抱きしめた。
「いままで出来なかった分、まだいっぱいあるけど、次はまた今度ね」
「うん。…戻ったらもっともっとたくさんぎゅってするからね! こっちのリコが寂しくならないように!」
「まったくどっちが子供なのかしらねー、私たちといてリコが寂しいと思ってんの?」
仁王立ちが美しい、たしかにそうだ、みんなもいるのにリコが寂しがるはずがない。
寂しいのはたぶん私だ、なるほどどっちが子供なんだか。
「そうだった、ごめんねフーちゃん」
「フレデリカさまとお呼びなさい!……ま、リコはちゃあんと預かってるから、安心して戻りなさいよ」
「お前もマリーに預かられてるようなもんじゃん」
「殴るわよカイル」
空の見える場所、ここにはあと何度来られるだろう。
現代の姉と会ったら、もしかしたらもう見られないかもしれない。
そう思って、いまある光景を目に焼き付けるようにしっかりと眺めた。
みんなの協力もあって公衆電話はすぐ見つかった、久しぶりだな…なんだか何年も見てなかったような気分だ。
「じゃあな、みんな W.I.S.E のヤツらをブッ潰そうぜ」
「互いの未来のために――」
視界が光に包まれていく――
「…っとと、わはっ、慣れないなーこれ」
周囲の様子を確認する、青空が見える、建物は壊れてない。
「帰ってきたな」
「消費度数は3…か」
「えーったったそんだけかよォ? オレなんか死にかけたのに!」
「死にかけたとは思えないお天気ぶりだ」
それにしても……ここどこかなー…?
山の形状から見るとわりと離れてそうだけど…今日中に帰れるのかなコレ。
「オレ達10日ぶりに帰ってきた事になるんだっけ?」
「ハッ!!?」
と、10日…………長いな…ジャンプなら先週と今週出てて、アンケハガキを出しておかないとくらいじゃないか。
カブトは死にかけて生き返ったっていうのにケロッとマック寄ろうとか言ってるし、なんかもう逆に安心するよ。
ひとまず、どこかの売店で地図でも買って現在地と帰り道を検討しないと。
「……っとぉ~…? あー、あとお姉さん、新聞も一部」
あってよかったキャッシュカードとATM……現代人でよかった。
どうやらここはどこかの町の市役所のようだ、ほどよく田舎らしく人は閑散としている。
駅もほどよく大きく地図は買わずに済んだ、軽く食べる物と飲み物を人数分と、新聞を一部。
「満月、次の電車まで40分くらいだそうよ」
「わりとあるねぇ……それよりみんな大変、これ」
「新聞…?」
よくあるスポーツ紙だが、一面に望月朧の字がデカデカと印刷されている。
「ゲ……」
「うわっちゃぁ~…そぉだよなァ、そういやアイツ超有名人だった…」
「“望月朧と共に写っている男子高校生も行方がわかっておらず、警察は彼が事件に関わっているとみて現在行方を追っている”……夜科のことよね…完全に」
「だよねぇ」
「どーすんだよアゲハぁ、お前完全に容疑者じゃん。こりゃマック行かなくて正解だな」
「どうするったって……戻るしかないだろ…ウチに…」
イケメン俳優が少年と行方知れず……おぉ…スキャンダルのニオイがプンプンしますぜ。
なになに、生放送中に発作を起こし…療養のためスケジュールを…重要参考人の少年とはその際……ふむふむ。
「あ、コピーならギリ夏に間に合うやつ…!!」
「ナニが?」
いや、でもさすがに不謹慎すぎるか……
「――ここからは別行動にしましょう、この人数じゃ目立つわ」
「女の子だけで夜道はアブないって、なんならオレが送って…」
「ご心配なく。あなたより強いから」
「誰かに襲われてもカブトが逃げる図しか浮かばないね」
「そんにゃぁ~…」
この時期はまだ夜でも薄明るい、なるべく人のいない路地を通りたいけど。
「じゃ、またね夜科、お姉さん…きっと心配してるわ、元気な顔見せてあげて」
「殺意のほうがありそうだけどな…朧まで関わってるし……」
私たちはそれぞれ分かれて家路についた。
街のあちこちで朧、朧と目にする、私には、それが重くのしかかる。
「…満月のせいじゃないわ。変えようとしてたんでしょう?」
「でも…変えられなかった…私が弱かったから」
「W.I.S.E の星将を相手にして生きて帰ってきたのに、弱いわけない……」
マンション付近まで来たところで、桜子さんは足を止める。
怪しげな風貌の大人が数人……マスコミか?
「チッ、嗅ぎつけられたわね……ここを離れましょう満月、屋上から階段へ回るわよ」
「わかった」
周囲の建物の屋根から伝ってマンションの屋上までたどり着く、PSIで鍵を開けて階段へ出ると、そこからは真っ直ぐ部屋まで戻れた。
じきに、桜子さんが戻ったことを警察も知るだろう、事情聴取で数時間は拘束…ってとこか。
まー戻ってからの行動が早い早い、さすが桜子さんというべきなのか。
あ、っと……
「満月、明朝には私は出るから、あなたはここでじっとしてて。聴取が終わったら連絡するわ」
「はい。…桜子さん」
「なに?」
言っておかないとだよね。
「おかえりなさい。いってらっしゃい」
「…ただいま、満月。適当に済ませて早く戻るわ、もしなにかあったらマツリ先生に連絡を」
「うん」
…さて、バックアップはと。
――電話が鳴る音で目を覚ました。
いつの間にか眠ってたのか…桜子さんからだ。
「もしもし」
『満月? まだ家にいるわね? これから支度して、エルモアとそちらに向かうわ』
「はいな。着替えと諸々ね」
『知ってたの?』
「ついさっき。――今後については大丈夫、じゃあまたあとで」
未来に関しては、ね……
「フー……どうしよっかなぁ…だぁいぶ変わってるけど……」
今回の召集以前の記憶は補完できた、桜子さんはなにも言ってなかったから、リコも無事なんだろう。
となれば、はるかぜ学園にジュナスは来ない……か?
「…来ないでいただけるとありがたいけどね」
なんの偶然か、あそこにはまた目的ができた。
そうだ、宣戦の儀のDVD…いや、一応全部持っていくか。
…そろそろ着いたころかな。
それなりの荷物を抱えて下まで降りた、数人マスコミらしき姿があったけど、私には見向きもしない。
いや、声をかけるタイミングを見計らってる、って感じだな…まだここからじゃオートロックのドアが開かない限り逃げられるから。
パア、とクラクションの音が聞こえた、黒塗りの高級車が人を追い払っている。
間違いないな、あれだ。
なんでもない風を装って外に出ると思った通り近寄ってくる人がいたが、すぐさま車に乗り込んだので接触せずに済んだ。
「大荷物ね」
「いろいろあって」
桜子さんの記憶の件は…どうしよう、これも、変えようと思って変えられなかった。
「さて、あやつのことも迎えに行くとするかね」
「そうですね」
「桜子さん、これからのことはマツリ先生も揃ってから話すね」
「ええ」
警察署でアゲハを待っている間に荷物をトランクに移して、私は助手席に移動した。
早くリコに会いたい。
アゲハも合流して、天樹院家に向かう。
毒皿に添え物も付けてまとめてお世話になろうと思う。
「ところで満月、お前さんも難しそうな顔をしとるの」
「…なにかおみやげ買っていったほうがよかったかなと思って」
「ひょっひょっ、お前達の無事が一番の土産じゃろうて」
そう…だろうなあ。
「ま、あの子を泣かせることはせんようにな」
……バレバレかあ。
庭で車が止まり、運転手さんがさっさとトランクの荷物を運び出す。
「え、あ、いいですよ自分で運びますから」
「いえ、エルモア様のご命令なので、部屋までお運びします」
「は、はあ…」
「ですが、お覚悟を」
疑問を口に出す前に、猛然とした勢いの足音が耳に届いていた。
「満月っ!!!」
「みぞおち!」
ズサーッ
…………ハッ! 意識が飛びかけた!?
この重さ…感触…リコか!
「満月~…!! もうあえないかと思ったぁ…!」
「は、ふふふ…ごめんねリコ、ただいま」
「お、オイ大丈夫か…?」
「ヘーキ…愛さえあればラブイズ……ゴフッ!」
「満月~っ! しんじゃやだー!!」
「だから全力で飛びつくの禁止だって言っただろリコ、ほら下りて」
はうっ…シャオくんがリコを抱っこしてる……!! 尊い…宗教画の光景かよ…!
「ほんとになにがあったんだ…?」
「気持ち悪さが増してるのは確かね」
「――…やあ、元気そうですね アゲハ」
起き上がり、声がしたほうを見れば、そこには若いスーツ姿の男の人が立っていた。
夜科朱鳥、47歳、研究員、短い自己紹介だけど衝撃が詰まっている。
こ、この人がアゲハのお父さん……!? わっか!! 思ってたより5歳は若い!
うわっ攻撃早っ! 重っ! 強っ!!
しばらくぽかんと見てるしかなかった、この人、人間なのか…?
あ、しかもよく見たら攻撃を受け流す隙も与えてないか…? アゲハが手加減されてるだと…!
ああでも、影虎さんの訓練のおかげでここまで見れるようになってるのかもしれない。
前までだったらなにしてるか見えてもいなかったんだろう。
「お…おぉ~…つえぇ~…」
「強いねえ」
「ねー満月もあんなんなる?」
「なっ…いや、そりゃなれるならなりたいけど……ちょっと無理…かなあ?」
「んー……うん! 満月はそのまんまでいいよ! そのまんまがいい!」
と、さっきよりはやわらかく私の体を掴む。
「かわりにわたしが強くなるから、満月はだいじょーぶだよ!」
「えっ」
一瞬、朱鳥さんみたいになったリコを想像して、首を振って払った。
いやいやいやどんなリコでもかわいいけど、リコがなりたいようになっていいけど!
……もしそうなったら本気で結婚を考える。
「答える気になりましたか?」
「……」
質問の仕方がほとんど拷問なんだよな……
「あと何万発殴られても“言えない”…! 絶対に“言えない”
それが俺の答えだ」
ルールで縛られてるという理由だけじゃない、絶対に未来を変えるつもりだから言えない。
ここで足を止めているわけにはいかない、だから言わない。
朱鳥さんの優しく静かな声は、私の耳、心にも確かに強く厳しく響いた。
実際は見てただけなのに私までボコボコにされた気分だ……心が痛い。
朱鳥さんが去って、庭は嘘みたいに静かになった、なんだろう、こう……神社の中みたいな…?
「ねーねー満月! 見てほしいのいっぱいあるの! きてきて!!」
「あっ、ちょ、待って…」
そうしたいのは山々だけど、まだ……
「いいのよ満月、マツリ先生が来るまでまだしばらくかかるだろうし、久しぶりに会ったんでしょ?」
「そ…それなら……お言葉に甘えて…」
「まったくおおげさよねアンタたちは、たった10日でしょ」
「あんなこと言ってるけどフレデリカもかなり心配してたよな」
「バッカじゃないの!? ぜんぜんしてないわよ!」
「みなさんが無事でよがっだぁ~…!!」
「もぉ泣くなよマリー!」
「…うー」
「えへへー、ヴァンねー、ずっと手伝ってくれたんだよ、今回はチョーたいさくなんだよ!」
ほほう……ところで私どこに案内されてるの?
「ジャーン!」
ドン、と壁一面に絵が描かれた画用紙がべたべた張ってある、こ、これは……
「スゴ…」
とりあえず、拝むか……じゃなくて。
「リコが描いたの?」
「そーだよ! あとヴァンとセクシーローズとー…みんな手伝ってくれたよ!」
クジラ…かな、足がついてるけど、たぶんクジラだ、ザトウクジラぐらいの大きさがある。
ヒレもたくさんついてて、背中には花のようなものがいっぱい咲いていて、ただひたすらにすごい。
「リコの絵ってさー、具現化すると絵も消えちゃうだろ?」
「うん…だよね、それ不思議に思ってた、この絵はなんで具現化してないの?」
「まだ完成してないから」
フーちゃんが足元にある紙を拾って、クレヨンで色を付ける。
「まだよリコ! 超天才のアタシがさらに素晴らしいモノにするんだから!!」
「はやくはやくー!!」
「うー!」
「リコちゃんが描いてる途中の絵…つまりリコちゃんの頭の中で完成してない絵は具現化しないってわかったんです、だからみんなで一つの絵を描こう、って…」
「本当はもう少し小さいはずだったんだけど、思った以上に盛り上がって…」
「こんなに大きくなっちゃったわけね…すごいなあ…」
部屋の真ん中に座って、絵の全景を眺める、うん、すごい。
フーちゃんの描いた紙をマリーが壁に貼り付けて、これでようやく完成したらしい。
あれ。でも待って、完成ってことは…?
「よおーし!! じゃあ準備はいいかみんなー!?」
「「「おおー!!」」」
「アゲハたちをド派手に歓迎するぜーー!!!」
「うーーーーーー…にーーーーー!!!」
リコが気合いを込めると、壁に張られた絵の中からずうるりと巨大なクジラが現れて、部屋の中を回遊する。
あ、圧倒的迫力……ていうか、部屋からはみだしてるし!
「スケクジラだからカベも通り抜けるんだよー!」
「透けるっていう発想入れてなかったらヤバかったわね…」
「さすがシャオ」
「僕もここまで大きくなると思わなかったよ」
具現化したスケクジラは絵よりも倍は大きくなって、窓の外へと出て行く、って、あれやばくない?
人のいるところからは離れてるから見られはしないと思うけど、どこまで行くかにもよるよな!?
「よォーっし! いっけぇー!!」
クジラは庭の上空でしばらくぐるぐる泳いだかと思えば、大きく息を吸って吐くように、きらきらとした光を背中にある空気穴から放出した。
この光……花?
それがフィナーレというように、スケクジラは尻尾のほうから光を拡散させて消えていった。
部屋の中を見れば、壁に張られてた絵は真っ白になっていて、ハイタッチするリコとヴァンくんが見えた。
「だいせいこー!!」
「うーあー」
「いまのアゲハたちにも見えたかな!? なーなー!!」
「絶対見えてた! すっごかった!! てか、もし見えてなかったとしても上映会するし私!」
いまの記憶映像なんとかして投影するし! 何年かかってもやるし!!
「あとでババ様に怒られるな…」
「でも、とってもキレイだったよね、シャオくん」
「ん!……っうん…」
シャオくんそこは「キミのほうがキレイだよマリー」って言うところ。
窓の外にはまだわずかに光の粒子が舞っていて、まるで季節外れの雪が降っているみたいだった。
と、正門が開くのが見えて、もうそんなに時間が経っていたのかと気が付いた。
「リコ、みんな、すごいもの見せてくれてありがとう!!」
「すごかったでしょ! あのね、わたし初めてあんなに大きいの出したよ!」
「リコすごい! えらい! とてもかわいい!! 疲れなかった? 大丈夫?」
「うに、だいじょーぶ…」
抱きしめて頭を撫でていると、リコは眠たそうに頭を揺らしていた。
「すぐ帰って来たから助かったわね、あのまま戻らなかったら、もっとでっかくなってたんだから」
「なんだっけ、ガンカタ?」
「願掛けだよ」
つまり、私やアゲハが戻らなければ、あのクジラはこの屋敷どころか日本よりも大きくなってたかもしれないと……
…それはそれで少し見てみたいような。
「こりゃ! お前たちまただまってド派手にやりおって!」
「ウゲ、ババ様…!」
「わー! ババさまごめんなさい! みんな許してあげて…!!」
「…フン、最初から怒るつもりなんかないわい。満月、客が来とるぞい」
はっ、そうだったマツリ先生!!
