腐っても時渡り 原作沿い編
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「説明したいことはいろいろあるけど、取り急ぎ。近いうちにここは敵に襲撃される…ってことになってる」
ネメシスQのプログラムも「わたし」のほうのプログラムも発動する気配はない。
てことは、知ってることは全部話せる……けど。
「ことになってる…ってのは?」
「私がここでみんなに話したことで未来が変わる可能性があるってこと、本来ならみんな知らないことだし、知る方法も今のところない」
……ここから先の未来は、本当に私の知らないものになってる、どうなるのかさっぱり見当もつかない。
「でも、襲撃の原因はこの人じゃない、それだけ伝えておきたくて。あとね、夢喰島で会ったあいつ……あいつにけっこー記憶が消されてて、ぼんやりした記憶しかないの」
「ネオ天草のことか?」
「それそれ。記憶のバックアップがどこかにあったと思うから、未来に関しては大丈夫だけど…」
「なあ、疑ってるわけじゃないんだけどさ、アゲハたちが知らないことをなんで満月が知ってるんだ?」
「……」
これ…「異世界から来ました~☆ミャハッ♪」って言ったりするの許される感じある?
個人的には、アウト。
いやいや、ただのテンションの問題だよねこれ、落ち着け私。
「……それを話す前に、ここにいる「私」の話からしないといけないかな…」
話す前に姉の様子をうかがってみた、無反応だったので、肯定と判断して私は話した。
ここにいる私はこの世界にいた「私」の記憶を上書きしたものであること、私のいた世界にこの世界のことを記した本があったということ。
記憶の上書きをしたのが双子の姉で、未来がおかしな分岐をしないようにそれを話すことを禁じたこと。
私の肉体についてのことは、全て話した…はず。
「――…ごめん、わかりづらいところがあると思うから、疑問なところは聞いて」
「じゃあ…満月の読んだ本ってのはどんな本なの? ずいぶん詳しく書いてあるみたいだけど」
また、難しい質問だな…それはそれで正直に話したら、私の比ではないくらいショックじゃないか?
よし…誤魔化そう。
「あのー…ほら、歴史の本で、新撰組とかあるでしょ、この人物はこうで、ここでこう動いたからこうなった…みたいな、あの感じ、想像してもらえると、わかりやすい……かな?」
ここまで言って、シャオくんにはバレバレなんじゃないのかと気づいたけど、嘘じゃないよ!
だって! 私! まともな歴史ものなんか漫画かゲームかドラマだもん! 図書室に置いてある、よいこの歴史だもん!!
この世界の歴史だし、間違ってないよ! 間違ってないですよね!?
「て、ことは…満月はこことは別の世界のもっと未来から記憶だけ移植させられたってことでいいのか?」
「そういうことかな……私、元の世界に双子の姉とかいなかったから…多分、パラレルワールドってやつ…だから私のいた世界みたいな歴史にならないと思う…あくまで予知の一種としてとらえていただければ…幸いです…」
なんかもう探り探りすぎて取引先との会話みたいになってるぞ……
「と、いうか…もうすでに歴史変わってるし…」
「どのへんが?」
「リコがここにいること…」
そう言えば、リコはきょとんとした顔で首をかしげた。
「リコは元々向こう側…W.I.S.E 側の人間で…主に禁人種を創る役目だったんだけど、私が奴らより前に連れ出したの」
「…どーりでこのグロテスクな生き物…なんか似てると思ったぜ……」
「かなり大きな改変だと思うから、正直この先どうなるのかさっぱりわからないんだよねー…修正が入るのか、分岐するのか……」
でも、さっきまでの考察でいくと…ここまでの改変は予測…というか確定事項みたいなんだよね。
それが正しいかはともかく、いまのところ予想外の展開はない。
予想外っていうのは、私の関わらない範囲では、っていう意味で。
「だから、私の知ってる通りに進まないかもしれないから、未来のことで詳しく話すのはやめておく。そっちに固執しすぎて対応が遅れたりするといけないし」
「でも、さっき言ってた根が襲撃されるっていうのは……」
「多分そこは変わらないと思う、どのくらい変化があるのかはバックアップを確認するまでわからないけど、近いうちに……無ければ無いでいいんだけど」
「おっし! そうとわかればなるべく逃げやすいように防御を固めておかなきゃな!」
パシ、とカイルが自分の手を叩いた音で我に返って顔を上げた。
「あ、あの……私の話、信じるの…? 自分で言っておきながらアレだけど、アゲハも、桜子さんも…!」
「ここにいるみんな、仲間を疑うように見えますか?」
ぐるりと見回せば、みんな、真っ直ぐに私を見つめていた。
疑いの色なんかこれっぽっちもない、私の話したままを受け入れた瞳だった。
「信じらんねーような話なんか、俺らも同じだしな」
「満月が突拍子もない嘘つくわけないもの、むしろ納得したくらいよ」
そうか……そうだよね…みんな、言うなれば光の道を進む人たちで、だから仲間は信じるし、疑うことなんかしない。
逆に疑ってたのは私のほうだ、私はばかだ、誰も信じてくれないだろうと思い込んでた。
信じてるつもりで疑ってて、そんな私のことを信じてくれることに感謝と申し訳なさがこみあげて。
「……みんな、ありがとう……うう、あ、あ゛り゛がどう゛ッ…!!」
「あー! みんなが満月泣かした!」
「ち、違うわよ! 勝手にコイツが泣きだしたの!!」
「ずっと、言えないまま一人で抱え込んでたんだもの…しょうがないわよね?」
「うぅっ…満月さん……ずっと一人でがんばってたんでずべぇ…!」
「ちょっとマリーあんたまでもらい泣きしないでよねッ!?」
リコに頭を撫でられ、桜子さんに抱きしめられながら、私は気が済むまで泣いた。
言わなきゃいけないことは言い終わったし、治療を再開するヴァンくんの邪魔にならないようにみんなで治療室を出た。
「満月」
後ろから、とす、とリコの体重がのしかかる。
歩きづらいが、気にせず進む。
流れでリコを知ってたことを話してしまったが、リコはどう思っただろう。
リコが見ていたっていう夢のこともあるし、もしかしたらリコはなにか気付いてるかもしれない。
もしかしたら嫌われてしまうかもしれない…そしたら、私は。
「満月、ありがとね」
「リコ?」
「満月がここに連れてきてくれたから私はみんなと会えた、いつもすっごく楽しいよ!」
やっぱり、リコにはわかってしまうらしい、私の不安も、その解き方も。
体温と言葉のあたたかさが体の中にじんわりと沁みていくのがわかる。
「もういっそ結婚したい」
「満月?」
「ごめんいまのは忘れて冗談冗談」
…ごめん半分本気、ちがう、目に入れても痛くない的な意味でね!?
違う、ちがうんだよ…だからいまのは本気だったろっていう目やめてお願いします。
今日はとても疲れた…一日で、色々ありすぎた。
でも心は驚くほど軽くて、解放されたような気分だった。
一息ついてベッドに寝転がった瞬間、私は誘われるままに意識を手放した。
『――……満月!』
は、と目を覚ます、誰かのテレパスだ、なにか起こったのだろうか。
『どうかしたの?』
『ネメシスQの主がいなくなったらしいの、みんなで探してるところよ』
桜子さんが慌てた様子で状況を告げる、そういえば、そんな事件もあったな。
『わかった。私も探す』
…とはいえ、どこにいるかはさっぱりわからない。
寝乱れた髪の毛を直しつつ、とりあえず廊下に出てみる。
時々、みんなのテレパスが飛んでくる、あっちの区画やこっちの区画、詳細なところは私はわからないが、ひとまず治療室に向かってみよう。
「07号さん、どこに行ったか聞いてない?」
『同じことを聞かれたけど、わたしはなにも。ただ…』
「ただ?」
『…弟が迷惑をかけた。って…おそらく、謝罪だと思うけど…』
「……それは」
それは、どういう意図の言葉なのか、私にはわからない。
『未来があればまた会おう、とも言っていたわ』
「そう…ありがとう」
私はお礼を言って治療室を飛び出した。
捜索はまだ続いてる、ということはあの人はまだどこにも行ってない。
『――…ことあるごとに…―…未来の結果を…………』
「こっちか!」
わずかなテレパスの波動、それを追ってたどり着いた先にはアゲハと、倒れるランさんと、07号さんがいた。
「満月っ」
「あの! もしかしたらさっきの話、誤解してるかもしれないですけど、ここの襲撃とあなたもなんの関わりもないんで!! だから……!」
『いや…これは私の判断だ……この伊豆にいては天戯弥勒に近すぎる……』
止められるとは思っていない、だが。
『――…お前たち 姉は大事にしろよ』
一瞬にして、07号さんの姿は消えていく。
『“人”とは――…』
―誰しも繋がっていたい。
―そうやって、世界は繋がっていく。
その言葉を残して、07号さんはどこかへ消えた。
…姉、か……
「クソッ……!!」
「ランさん、大丈夫ですか?」
「あ…ああ……すまない、油断した…」
よろめくランさんを支えながら立つ、まあ、こんなこと予想すらしないだろうが。
「いやあ、ははは。まいったまいった」
「満月お前なァ…!」
「それ以外に言いようがないでしょうよ。まんまと出し抜かれた上に家族の心配までされちゃってさ」
いまでも完全に許したわけじゃない、だけど、私はあの人を姉と認めつつある。
顔が似てるってのもあるが、人に依存気味なあたりとか、なんというか遺伝子を感じるし。
「どの世界のどの家族でも、姉ってのは強いもんなんだねェ」
「…………だな」
ああ、いまフブキさんのこと思い浮かべてるな。
ひしひしと感じているのは、この体の「私」もだいたい同じ考えだろうということ。
私が怒っていたのはたぶん元々の「私」のためで、元々の「私」は私のためだったんだろう。
そして、許されないだろうとわかりながらそんなことをした姉の気持ちを、私は。
「―……どんなにヒデーことされてもさ…」
「うん」
「一瞬でも愛されてるって思うと、なんだかんだ許しちまうよな…どー考えたってあれはヒデェって思うんだけど…」
「…うん」
それぞれ思い浮かべてることは違うだろうけど、気持ちはわかる。
憎めないんだよな……やっぱり、家族なんだと思うと。
そのあとみんなと合流して、07号さんが出て行ってしまったことを伝えた。
話に関しては私は頭から聞いてたわけじゃないのでアゲハにまかせた。
アゲハの話を聞いて考えるに、リコがここにいることはまだ修復の領域なんだろう、ならば向こうもなにかしら変化があって襲撃をかけてくるはずだ。
なにか行動を起こすにしても、まずカブトの意識が戻るのを待とう、ということで一致した。
「……と、いうわけで」
毎度おなじみの治療室、今日も姉のお見舞い? だ。
どうやらこの人本当に水棲生物になってしまったらしく、いまはテキネシスで水をエラ部分に当てて呼吸をしている。
いつまでもリコがPSIを発動し続けているわけにはいかないからだ。
「私、現代であなたのことを探してみる。W.I.S.Eに連れ去られる前はどこにいたの?」
『……わたしを助けに行くつもりなの?』
「まあ…あなたがやったことはここでいう過去のあなたには関係のないことだから…?」
あ、待てよ、その前に聞きたいことが。
「もしこの未来を変えたってなると、私の記憶はどうなるの? もしかしてなかったことになったり?」
『…それ…は……わからない。でも、わたしを助けるために満月のいまの記憶が不可欠な以上、なかったことにはならない…というのがわたしの考え』
「うん、私もそう思う…記憶はもう定着しちゃってるわけだし……もし、元に戻ったりしたら、ハッピーエンドってことでいいかな」
『満月はそれでいいの?』
それでいいのか、って、そんなこと何故聞くのだろう。
望みは薄いけど記憶の上書きがなかったことになれば、姉もこの体も助かって私は元の世界に戻れるのだから、これをハッピーエンドと言わないでなんになるというのか。
その場合ここで私が体験してる記憶はどうなるのか、というのは気になるけど、十中八九無いことだから気にしなくていいんだ。
「万が一だよ。元通りになることのなにが悪いのさ」
私が笑うと、姉は寂しそうに口元を歪めた。
