腐っても時渡り 原作沿い編
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「ねえ、満月の部屋に行ってもいい?」
もちろん断る理由なんてない。
「いいよ。シャワー浴びるけど……中で待つ?」
「うん」
……って、これ何シチュエーション!?
恋人か!
……やましい気持ちはなにもないぞー…
ふと、傷のあった場所に触れてみる、今まで血が出ていたとは思えない、綺麗な継ぎ目のない皮膚があった。
ちょっと惜しい気がするのは、罪悪感からだろうか。
結局今回は何一つ変えられてないしね……07号さんだって、私がいなくても助かったかもしれない。
…もっと努力しなければ、そうだ、帰ったらバックアップの記憶を入れておかないと。
「おまたせー」
別に、何もイヤンでアハンな気持ちはないんだからね!
風呂場から出るとまずスケッチブックに描かれた珍妙だけど可愛げのある生き物たちが出迎えてくれた。
この短時間でどれだけ描いてるんだ、この子は。
とんでもない生産能力だな…まあ、それはいいとして。
「リコ、いままでごめんね」
「…満月? いきなりどうしたの?」
「えっと…リコがさ、これまでいっぱい頑張ってきたのに、ほめたりできなくて…心配かけさせてばっかりだったからさ」
「そんなのいいよ! 満月はちゃんと約束守ってくれたし……それに、もう子供じゃないんだからそんなことで怒ったりしないもーん」
と言いつつ、頭をぐりぐり押しつけるリコがかわいらしい。
「でもね、今日はたくさんおしゃべりしようね、いままで満月に話したいこといっぱいあったから、その分ぜーんぶ話そう!」
「うん。でも夜更かしして大丈夫?」
「明日当番じゃないからだいじょーぶだよ」
「そっか、ならいいね」
私のこと、リコのこと、今までのこと、眠くなるまで話した。
「ときどきねー、夢を見るの。いつも見るんだけどね…その夢は特別な夢」
「特別な夢?」
「夢の中の私は閉じ込められてるお姫様でね、その中じゃ、まだ子供で…ある時、王子様が助けに来るの」
昔……の、夢だろうか。
小さなリコも、未来のリコも、変わらずかわいいお姫様だ。
マリーもフーちゃんも桜子さんもかわいいお姫様だけど。
タツオもアゲハも朧さんも…朧さんはどちらかといえば王子様よりだろうか…って、思考が脱線した。
「その王子様は優しくて、私のことを守ってくれるの、でもその人が負けちゃいそうな時は、私がその人を守ってあげたりしてね」
「……いい夢だね」
「でしょ? 同じ夢をね、何度も見てるんだ…ときどきその王子様が満月なんじゃないかなって思うんだけど…多分、違う」
違う、と言われてなぜか心臓が跳ね上がった。
「夢の中で呼んでる名前が違うの、それに満月、目のところにキズがないでしょ? その人にはね、あるの」
「そう、だね……」
目のところにキズ、私が知る中で、思い当たるのは一人しかいない。
「リコ、その王子様に会いたい?」
「……いるの?」
「いるかもしれないね」
「運命の人かな?」
「きっとそうだと思うよ」
「王子様、私のことわかるかな?」
「きっと、わかるよ」
なぜそんな夢を見るようになったんだろう?
別の未来が見えるということになにか意味があるのだろうか?
「王子様の名前は?」
「うーん…夢の中の私は……「じゅなす」って呼んでたよ」
「そ、っか…」
そうか、じゃあ待てよ、つまりそういうことか?
どちらの未来でも、ジュナスとリコが出会うことに変わりはないってことか?
そうなったら、この時間軸の未来はどうなるんだ?
……いや、今それを考えたところで頭から未来の記憶が抜けているから意味はない、今は円満に会わせることだけを考えなくちゃ。
「……満月、大好きだよ」
ぎゅ、とリコが私の体をつつむ。
「…私もリコのこと大好きだよ」
リコに気を使わせてしまったな…なんてすこし心が痛んだりした。
そのあといつ眠りに就いたのか、よく覚えていない。
「満月ー満月、満月! おっきてー! 朝だよー!」
「……りこぉ…重い…起きるからどいて…」
「はーい」
「ありがとー……おはようリコ」
さて、今日からは……
「ねえリコ、お願いがあるんだけど…」
場所は変わってババ様の部屋、リコと一緒に外に行きたいと言ったら、またまた軽く「ええよ」と言ってくれた。
ただし、もう一人連れていくことを条件として。
もう一人、ねぇ……誰がいいだろうか。
カイルはパワーもあって動きも素早いし、頼りになる、フーちゃんはなんといっても火力が一番、遠距離でも近距離でももってこい。
マリーもPSIが安定しててオールマイティだろう、シャオくんは索敵や戦闘で役に立つ、ヴァンくん…は二人を治療しないといけないし。
……ああ、みんな本当バランスがいい。
誰にしようかなぁ、迷うなあ…リコと仲がいい人…みんな仲いいな。
「ねーみんなー! 外に行くひと決めるよー! じゃんけんね!! 私がしんぱん!」
「迷いがないなぁ」
いや、こっちが選ぼうなんておこがましい話だったね。
「何かあったんですか?」
「個人的な人探しで…勝手にごめんね」
「いいですよ。リコにもいろいろと経験させたほうがいいと思いますし」
「人探し? 心当たりはあんの?」
「あるっちゃあ…ある、けど」
「なんか不安になる言い方ね……」
「じゃあいくよ! じゃーんけーん」
ぽん、と。
「じゃあ、よろしくシャオくん」
「おまかせください」
「よーし、レッツゴー!!」
おっと、その前に。
「――ちょっといいかなヴァンくん」
「あれ……満月さん、おはよーございます…」
「昨日、この人との話が途中だったからさ、外に出る前に聞いておきたく…て…」
むくれ、むくれている…明らかに不機嫌な顔をしている!
「誰か一緒に行くんですか?」
「う、うん……リコと…シャオくんが…」
嘘をつくわけにもいかず、そのまま話すと先ほどより怒りの色が濃くなった。
「もー! また僕だけ仲間はずれにして! 話すのはいいですけど、僕が戻るまでですよ!!」
ああ…こりゃ文句を言いに行く気だな…ごめんみんな。
そのまま送り出すのも悪い気がするので、私なりにフォローを入れてみる。
「ヴァンくんはここの人に必要とされてるんだよ、それを私の個人的な理由で連れまわすわけにもいかないしさ……」
なんて…ヴァンさまわっしょいまではいかないけど、事実を述べてみる。
「……むー…まあ、今回はいいですけど、次外に行く機会があったら遠慮しないでくださいね」
「う、うん…行ってらっしゃい」
…もう一回謝っておこう、ごめん、みんな。
外に出たら、リコがあの時と同じワーム型の生き物を作ってくれてそれで移動することになった。
行き先はあの場所、リコが私を助けてくれたあの廃棄場だ。
「満月の探してる人、そこにいるの?」
「多分…としか言いようがないなぁ……私の推測だけだし、広いし、暗いし」
『――見たところ、波動がとても弱くなってる。そのPSIの主が死んだら君がどうなるか私にはさっぱりわからない』
07号さんが言っていたことを思い出す、PSIの主が死んだ場合PSIは解除される、というのが普通だろう。
それはつまり、PSIの正体はわからないが、私の…現実の世界に帰れる可能性が高い、ということじゃないだろうか。
しかしだ、正体がわからないのだ。
「生体反応があれば僕のレーダーにかかるはずですから、きっとすぐに見つかりますよ」
「…うん」
「満月ー? 元気ないよ?」
「うーん……ちょっとこのところいろいろあったからね…あ、いや大丈夫だよ! 心配するほどのことでもないから!」
「うにー…ほんとに?」
「あんまり無理はしないでくださいね。あなたに何かあったらリコが悲しみますから」
う、それを言われると弱いな…。
「う、うん…私も怪我とかしたくないし、ねえリコ」
「満月は私が守るから大丈夫だもんねー!」
うおう…そ、そですね。
ああほら、そうこうしてるうちに見えてきたぞーそろそろ準備しないと。
「シャオくん、おねがい」
「わかりました」
シャオくんが地下に生体反応があるかどうか調べる、範囲が広いだろうから、じっくり探すしかない。
見つけたらどうする? 何か言う? この世界に連れてきてくれてありがとうとか? 変な制約を説明もなしに付けやがってとか?
……会ったときに考えるか。
「満月さん」
「え、見つかった?」
「いえ…その方かはわかりませんが、微弱なテレパスの波動が…」
「テレパス…?」
テレパスということはこちらにコンタクトを試みているということか?
微弱となれば、思い当たるのは一人。
罠の可能性も捨てきれないが、仮にそうだったとしてもこの二人がいれば大丈夫だろう。
「行ってみよう」
…………以前はなにも感じてなかったけど……こいつ結構酔うね……うっぷ。
ちょっとした振動が地味に胃袋に響くよ…言わないけどさ。
「ここからのようですね」
「う、うん…どうやって入ろうか…」
「少し離れていてください」
「私も手伝うー!!」
うん…? なにをするのかな?
シャオくんが地面に手を当てたかと思うと、リコもそれにならう。
まさか錬金術…!? いやまさか。
ドォンッ!!
「……ッ…!?」
れ、錬成どころか分解しやがったァ!?
いや、イエーイじゃないですハイタッチじゃないです、中の人無事ですかでっかい丸穴開いてますけど!?
っていうかそうか、ライズかなんかのこう、あれだな! 今さら理解した! ごめんイマイチできてない!
ま、まあ…これでどうやって入るかの問題は解決したが…あれ、人間の体でも同じことできるんじゃ…うわあだめだ考えるのやめよう。
「これで中へ入れますね。少々手荒ですが、辺りに敵はいないので大丈夫ですよ」
「満月ー! ねぇ見た? すごい?」
「す、すごいよ…すごすぎ…」
シャオくん怒らせたら、あれバーンってされるのか…怒らせないようにしよう。
「いま明かりを」
「あ、うん…中、真っ暗だったからね…」
さあ…気を取り直して捜索を再開することにしよう、いやあ…思わぬところで驚いちゃったよ。
よし、ここまで来たんだ、そろそろその微弱なテレパスが私に届いてもいいころ……そうだ!
いつだったかの誰かしらを真似て…触手をアンテナ状にしてみる。
ぐるっと一回転、この大きなテレパスアンテナがどんなに微弱なテレパスでも増幅して…くれるはず!
<――や……と…>
「きたっ!」
<…やっと……あえ…>
方向は……こっちか!
か細く絶え絶えになりながら、そのテレパスは私を導く。
やっと会える、やっと、この世界に来てから、ずっと私のそばに……いた気はしないけど。
廃棄場の中は相変わらず暗くて変なにおいがしていて水がまとわりつくけど、それを無視して突き進む。
だんだん近くはなってるけど…やっぱり水の中かな…?
「シャオくん、反応はどうなってる?」
「この近くの…下ですね、水の中でしょうか」
「潜水道具は持ってきたけど……ていうか、なんでもあるんだね…根は…」
「準備するに越したことはないとおばあ様も言っていましたから」
「ダイはショーをかなえる! だよね!」
「「大は小を兼ねる」だ。それに使い方が違う」
「え? そうなの?」
うん…かわいいよリコ、かわいいからそれでいいよ。
などと言ってしまったら悪化するだろうので、我慢する。
「じゃあ、シャオくんとリコはここで敵が来ないか見張ってて、あの人の顔は私しか知らないし」
「気をつけてください、水の中に敵がいないとも限りませんから」
「ねえ、私も行っちゃダメ?」
「……今回は一人で行かせてほしいなあって」
「そう…」
うぅ…ここで優しい一言でもかけられたらいいんだけど、そこまで余裕ない。
そりゃ自分の都合でしょって言われればそれまでなんだけども。
この黒く塗りつぶされたような闇の中は、この水底は、かつて朧さんを救えなかった場所だ。
あれから朧さんはどうなっただろう、未来の記憶を消されてしまってかすかにしか覚えていないが、気分のいい見た目ではなかったように思う。
それ以上は思い出そうとすると頭痛がする。
…………ここでの用事を済ませて、早く戻ろう。
思考から逃げるように入った水中は、以前よりも温度が冷たく這い寄るように感じられた。
