腐っても時渡り 原作沿い編
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「うーにー…? 見てないなあ…敵が来るかもしれないから時間はないけど、ちょっと探してみる?」
「いいの?」
「もちろん、久しぶりに満月と会ったんだもん、話したいこといっぱいあるし」
あは、いつも通りで落ち着くなあ。
「このコはリコが作ったの?」
「うん! あれからねーたっくさん練習したんだよ」
まるで洪水のような話を聞きながら周辺を見回す、私がいなくなったとされる日から約10年…ああ、立派になって。
あらかたぐるりと探してみたが、朧さんらしき人は見当たらない。
ライズを使って移動してるのだろうか……音がしてからずいぶん経つ…もう追いつけないのか…?
「いないね…」
「うん……敵が来るかも知れない……行こう」
「……でも満月」
できるならもっと遠くまで探しに行きたい、しかしここで敵に見つかるわけにはいかないのだ。
このままだって生きている事に変わりはない…できれば発見したかったけど、もう行った方がいいだろう。
「大丈夫だよ…きっと」
「…じゃあ、移動するね……うーん、ここからならあっちが近いかな」
これから天樹の根に行くのだろう、リコが無事で良かった、ほんとに。
「ほんとに…よかった…」
「うに、満月? 眠い?」
「うーん…頭が重い……」
「寝てもいーよ、まだ着かないし」
いや、もしかしたら朧さんがいるかもしれないし寝ないよ。
首を振って気を紛らわす、辛いなんて言ってられない。
風が気持ちいい。
どんなに目をこらしても朧さんの影は見つからず、また痕跡も見えない。
申し訳なくて涙が出そうになるがひとまずこらえる、泣かないと決めたんだぞ私。
「みっけ!」
「なにを?」
「あれが入り口だよ」
リコが指差す方向には崩れた建物の間にひっそりと浮かぶ箱があった。
朧さんじゃないか…と肩を落とすが、すぐそこに天樹の根があると思うと少しだけ気分が高揚した。
落ち込んじゃいられないんだ、せめてここにいるリコや桜子さんには元気な姿を見せないと。
「みんなどうしてるかな」
「う……おこってるかも……」
「え? なんで?」
「…満月を探すためにだまって出てきちゃったから……」
……へえ?
「だってみんな、私が子供だからって参加させてくれなかったんだよ! もうちゃんと戦えるのに!」
「リコォ……そういうことじゃないでしょ、気持ちはうれしいけど、そんなことしちゃダメ」
「ごめんなさい…」
あやまらなくちゃいけないのは私じゃないけど、まあいいか。
「でも、私のためにありがとう。…戻ったらみんなにきちんとあやまろうね」
「うん…」
リコはPSIを解除して大ムカデを消し、箱のなかに入るようにうながした。
意外と大きな箱は触ると向こう側へすり抜けた、ほほう、こりゃあすごい。
荒野のようになった街が一瞬にして無機質な廊下に変化する、なんかもう、感動しっぱなし。
「ランただいまー!」
「俺にウソついて外に出るなんていい度胸だな、リコ」
「怒られた?」
「むちゃくちゃ怒られた」
ひゃああラン、良い男になってまあ。
妄想が…いけないいけない、目の前にいる人なんだから。
「ん? そっちは…」
「えーと……はじめまして!」
「満月だよ!」
「なんで一瞬考えた?…まあいい、あんたがリコの言ってた満月か。俺はラン、よろしくな」
へへへ、会った事あったかなあと考えてました。
確かあの時は弥勒以外には会ってなかったはずだよな、別に選択肢間違ってても大丈夫だろうけど。
「とにかく戻ってみんなに目いっぱい叱られてこい」
「うん!」
これから怒られるとわかっているのに嬉しそうだなあ……愛されてる証拠かな。
「みんな、今日は黙って出て行ってごめんなさい!」
「これからはもう黙って外に出ちゃだめだよ、必ず誰かに言わないとね」
「そうだぞリコ、今回は生きて帰ってこれたから良かったものの…次はどうなるか」
「いーじゃんいーじゃん、ちゃんと帰って来たんだからさ。こーして人助けもしてきたんだし」
どうやらちょうど物語で言うなら外から帰ってきたところらしく、ヴァンくん以外は全員揃っていた。
すっかり大きくなったチルドレンたちがリコを囲んであれやこれや言い合う、くぅ…こんな光景が見られるなんて。
「満月!…生きててよかった……!!」
「桜子さん…」
桜子さんが私の体を強く抱きしめる、こちらの世界に来てからというもの、迷惑をかけっぱなしで心が痛む。
…ああ、朧さんも助けられなかった、ここに連れてこられなかった。
全身が沈んでしまいそうな重圧に耐えながら、声を振り絞る。
「…ごめんなさい桜子さん……ごめんなさい…朧さんを、連れて来れなかった……」
「なっ……満月、朧は生きてるのか!?」
「…朧さんは……」
ここで私はどう答えようかと迷った、いずれわかることとはいえ、体中を核で埋め尽くされていると告げてもいいものか。
どんなに残酷でも事実を伝えるべきかもしれない、生きていることに変わりは無いのだから。
でも……人の枠を外れてしまったと言ってどうなる?
「生きてるけど……無事かはわからない…………」
「……ッ」
これが私が言える精一杯で、事実。
あの時向けられた瞳を私は忘れることはできないだろう。
……ぐうぅぅぅぅ。
「……」
「……」
「……いまの音、満月?」
……な、なんて空気を読まない腹の虫だ…!!
そりゃお腹はすいてるけども!
「……ごめん…なんていうか、シリアス崩しで……」
「ぷっ…ハハハ! 気にすんなって、それに朧だってスグ見つかるさ。…お前だけでも戻ってきてよかった」
「…そうね、朝河くんも朧さんもきっと無事よ。……おかえりなさい、満月」
そ、そんな……そんなこと言われたら…そんな決め顔で言われたら……
惚れてまうやろおおぉぉおぉおぉ!!
アゲハさんも桜子さんも男前で困る……!!
「ただいま…!」
魚の焼けるいい匂いがただよってくる、なんか落ち着くなあ……
「「「いただきまーす!!」」」
おいしいご飯と安心して眠れる場所と…家族も同然の子供たち。
ああでも、年齢的にはフーちゃんたちのほうが上なんだっけ、リコは…どうだろう。
そんな問題になることでもないか、いいや。
「今日は一段とはりきってるんですよね! だってマリーさんアゲハさんのこと大好きですから、ねー」
「っ!?」
「バババヴァンくん何言ってるの!? 何言ってるの!?」
あー、アゲハーレムおかずにみそ汁うめぇ、ってどっちもおかずだ。
アゲハさん男前だし、みんなから好かれて当然だよね、きっとリコも気に入ってくれると思うよ。
「そ、そういえばリコちゃんは好きな人っているの!?」
マリーがかなり苦し紛れに話を逸らそうとした。
そうだな……このメンバーの中でフラグが立ってそうなのはヴァンくんかな、はじめに意気投合してたし。
「満月!」
ぶはっ!!
今度は私がみそ汁を吹き出した、好きの意味を履き違えてます……リコサン。
本当に私はそういうケはないんで、そりゃ若干依存気味だとは思いますが、それだけなんで。
「リコ…そういう意味じゃないと思うぞ」
「なんで? 満月は私のうんめいの人だよ! うんめーだよ!! ちがわないよ!」
ぐっっっはぁあ!! はい死んだ。私死にました。
すまん、すまんジュナス、貴方の運命の人は私が育てます、ごく健全な方向で。
はぁぁ……ジュナリコも好きだが、ごめんなさい、もう出会ってしまったものは仕方ない。
いいよね別に、そんな未来があったとはここの人たちは知らないんだから、うんっそうだ気にする事は無い。
だから、原作でジュナスに言われるはずだったセリフを言われたって私は気にしないんだ気にする事は無い。
でも……でも……!
「リコ…そういうのは、別の人に言わなくちゃダメだよ……!!」
「えー」
身を切るような思いでひねり出した一言、好きだなんだってのはまだわかってないからだよね、いつか勘違いに気付いて彼氏を……
あれ…そう考えたらなんだかすごくさみしくなってきたぞ……?
「こんなかわいいリコをお嫁に行かせたくない! ねえこの気持ちは何!?」
「父親ね」
「親父だな」
「そうかお父さんか…でもリコ、いつか君がお嫁に行く時が来てもお父さん絶対泣かないよ、笑ってお見送りするよ」
「えぇー、満月と離れたくないよー」
よしよし愛い子じゃ、しかしイカンよ、そんなアブノーマルなものを楽しむ人間は私だけで十分だ。
リコ、せめて君は普通の子でいてくれ、染まってはいかん。
白馬の王子やシンデレラをいつまでたっても夢見ていてくれたまえ。
きっと素敵な男性が君を好いてくれるから……ジュナスとかジュナスとか、ヴァンくんでもいいよ。
「――おやすみ満月っ」
「おやすみ、リコ」
当然のように割り当てられたリコの隣の部屋でベッドにもぐってしばらく考える。
リコがこの場にいる、それが今後の物語にどう影響してくるのか…未来をこの目で確認して、またひとつ恐怖が増えた。
人一人の運命を強引に変えて、全体の流れに変化がないわけがない、私がこれからすべきことは未来を予測して現状維持に勤めること。
それができなければきっと是が非でもリコは敵に奪われてしまうだろう。
未来を全て予測するのは無理だ、今も私の知らないうちに誰かの命の灯が消えているかもしれない。
それが根にいる人か、島原にいる人か、主要キャラたちか、もしかすると――
妙な感覚を覚えてベッドから跳ね起きる。
これは……ネメシスQの主からのSOS信号だ!
『夢喰島で待っている…!!』
もしかすると、このネメシスQの主が死んでしまうかもしれない。
そうなったら事態は一気に最悪になる、改変はおろか、現代に帰ることすらできなくなるのだから。
私のせいで彼女やみんなの苦労が水の泡になってしまう。
それだけは絶対に避けなくてはいけないのだ。
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