腐っても時渡り W.I.S.E編
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「うに…? うーん…このへんにも禁人種はちらほらいるけどそんな人見なかったよ、私も音に気付いてここまで来たけど……」
「そう、か……」
私がすこしだけ落ち込むと、リコは困ったように笑う。
ごめんね、困らせちゃって。
そして、にっこり目を閉じてまた開けたとき、私は瞳に現実を映す。
白を基調としたまっさらな服が薄暗いゴミ箱で淡く光を反射していた。
ついさっきまでエルモア・ウッドの衣装を着ていたリコはどこかに消え去っていて、代わりに……
「そんなことより、帰ろう満月、アストラル・ナーヴァへ」
「…………え……?」
リコ…いま、なんて……?
「カプリコ、まだか」
「まってジュナス! すぐ帰るから」
幻覚……?
「ジュナス…? リコ……?」
「覚えてないの? 私が小さいときからずっと一緒にいたでしょ」
上からもう一人こちらまで下りて来た、短い黒髪でサングラスのようなものをかけている。
「ドルキ達が言ってた反抗勢力の一人か……」
ジュナスらしき人物は私のそばまでツカツカと歩み寄ると、私の首を掴みあげた。
「ぐっ…!」
「だめジュナス! 満月は私の友達なの! 変な風にしたらゆるさないんだからね!!」
「…こいつがお前の言っていた大事な人か。残念だったな、レジスタンスの一員だったとは」
「ゴホ……」
「早く来いよ、アストラル・ナーヴァまで連行する」
ザザザ…とムカデ型の大きな生き物が砂煙をあげる。
その背に座って、私はリコを見つめていた、後ろではジュナスが周りを見張ってこちらには一瞬も目を向けない。
「妙な気は起こすなよ」
「……わかってます」
私はこれからW.I.S.E本部へ連れて行かれる、尋問されるか、殺されるかするかもしれない。
「どうして…リコ……」
なんでW.I.S.E側についてるんだ。
それにジュナスは小さいころから一緒だって…一体何が起こってるんだ?
辛い、泣きたい、リコに起こった事を想像するだけで悔しくて泣きそうだ。
「リコになにをしたんですか」
「俺は何もしてねぇよ。ただ世話役を頼まれただけだ」
初めの頃は手がつけられなかったと無感情に言い捨てる、私にはもうどうにも出来ないのだろうか。
推測するに、じわじわと洗脳していったのだろうか、……そんなのって。
「…洗脳なんかに負けない」
「お前程度のサイキッカーがこの洗脳を解けるって? おもしろいなお前」
「……」
私に解けるレベルのPSIじゃないことはわかってる、でもただ殺されるのを待つのは好きじゃない。
未来を変えられなかった、リコはW.I.S.E の一員になってしまった、なら、今からでも天樹院家の一員にしてやる。
死ぬほど怖いけど、体はもう麻痺してしまったらしい。
「着いたよ満月、ようこそアストラル・ナーヴァへ!」
私たちがワームから降りると、ワームは溶けるようにして消えた。
「あれ…?」
「私の作ったコにはイルミナを埋め込んでないの、満月のため以外のものは作らないって約束したから」
「いい加減諦めろ、ミロクに捨てられるぞ」
「もう満月がいるからいいもんねーだ! ばかジュナス!」
行こ、と私の腕をぐいぐい引っ張るリコに安心した、変わってない、過去の私が知ってるリコだ。
ちょっと記憶がいじられてるだけで、なにも変わってない。
「満月、心配しないで。満月にはなにもさせないからね」
「……」
それは難しいだろう、リコのことを信じてないわけじゃない、でもリコの立場やここにいる理由も考えると「なにもさせない」のは無理だ。
いざとなれば、リコを操って私を殺すことだってできる。
薄暗い廊下を進んでいくと、前からライオンのような髪をした男が歩いてきた。
「カプリコ。……そいつをこっちに連れて来い」
「やだ」
「言うことが聞けねェならそいつを殺すしかなくなるぞ」
「……それもいや」
私だって嫌だ。
「アンタ、こいつの一番大事な奴らしいな」
「…はい」
「アンタまで拒否すればどうなるか、わかるな?」
脅しのつもりだろうか、残念ながら効果テキメンだよ。
隠されてない方の片目から発せられる妙な空気が肌にピリピリと突き刺さる。
「満月……」
「大丈夫だよリコ。ここで待ってて」
「最初からそうすりゃイイんだよ」
おそらくグラナであろう人は、指をかるく持ち上げると私の腕をなにかで吊り上げた。
羽交い絞めのような形でずるずると引きずられる、こ、こういうことにPSIを使うなよな!
マズいな……このままじゃなにもできない。
「自分で歩けますから、離してくれませんか」
「後ろから刺されちゃたまらねえからな」
「できないってわかっててですか」
「人間、追い詰められるとどうするかわかったもんじゃねェ」
どうなるんだろう……殺されるのも禁人種に改造されるのもいやだなあ。
でも頭の中を見られていろいろ調べられるのはもっと嫌だ。
「お前、黒いバースト使いとはどういう関係だ?」
「さあ……誰ですか」
吊られた腕がひねり上げられる、ギリギリと嫌な音をたてながら、なおも止まらない。
「……っ」
「俺に聞かれたこと、全部正直に話せば助けてやらんこともない。どうだ、話す気になったか?」
「…………」
「…ただ殺すのももったいねぇな……ドルキもいなくなったことだし代わりにはなるか」
それって核埋め込んで地域警備担当ってことですか。
なにそれ、捕らえておく気がないの?
……そういういい話でもなさそうだけどね。
「でも、」
ドス、と腹に重たい衝撃が襲いかかる。
「早ぇとこ情報出さねぇと死ぬことになるぞ」
「…ッ! げ、ぇ……はっ、……」
ボディはやめろって、まじ痛い。
出るものもない、あっても水だけだ。
「……リコは」
「あぁ?」
「リコをどうやって連れてきたんですか…」
「カッカッカ、アンタ自分の身を心配したほうがいいんじゃねえのか?」
「リコを返せ!……ぐッ!!」
ちくしょうめ、ちくしょう。
「女にしちゃあ根性はあるほうだが……ありすぎても問題だな」
「なにしてるんだグラナ、そんな女さっさと脳みそでもなんでもいじればいいだろ」
「ジュナス」
横切る際に私の頬を撫でるように切っていった。
痺れるような痛みと暖かい血、殴られたときに歯が何本かグラついた気がする。
意識が飛びそうになりながらなんとか方法を考える、ここから抜け出す方法、リコを助ける方法。
考えても思い付かない、全て私の力不足で台無しになっていく。
「……ここまで口を割らないとなると、よっぽど知られたくない秘密があるのか」
「レジスタンス共の居場所とかか?」
「さあな、いずれわかる」
ジュナスの指が額にぴったりとくっつく。
「やめとけ、アイツがこれ以上言うことを聞かなくなると困る」
「逆に大人しくなるかもな、自分のせいでコイツが死んだと思えば……」
またリコを……
カブトの目があれば今この状況は真っ白なんだろう、どこへ行っても生存の可能性が薄い。
……望みは薄いが、それでも。
涙が一筋流れる、いやいや、これは汗だ、汗、泣いてなんかいない、決して無い。
「……わかりました、記憶を渡しますから、これを解いてください」
「渡す?」
「私のPSI能力のひとつです。見聞きしたものをそのまま出すことが出来る…他人にも渡せる」
「そいつぁ手っ取り早いな、いいだろう」
よし、拘束が解けた。
どこからか吹いてきた風が支えを失った体を揺らす。
下は真っ暗で何も見えない、ここから落ちれば命は無いな……なんて欠陥住宅。
「どうした、逃げる方法でも考えてんのか?」
「まさか」
こめかみに触れ、トランスの糸を手繰り寄せる。
記憶をただで渡してやるつもりはない。
「……ホォ」
初期の糸から進化したきらきら光る半透明のカードにグラナは興味津々だ。
コチラの世界に来た方法と根の場所、この先の大まかなあらすじ以外の詳しい情報を手のひらへ落としていく。
…すこし出しすぎたか、頭のなかカラッポになりそう。
「さっさと寄越せよ」
「……まってください、必要な条件がまだ…あります」
思い切ってそれらを口の中へ全部放り込む、味はもちろん無い。
グラナが慌てて私の手を拘束しなおすが遅い、全てを噛み砕いて、そして飲み込んだ。
…削除完了。
すこしだけ頭が痛くて、空気がびしびし刺さるけど、ちょっと愉快。
「なっ…」
「……ふひっ」
あぁっはっは、きょとーんとしちゃってさ、おかしーの。
「おもしれェことしてくれてるじゃねーか…」
そんなテンション、長くは続かないけどね。
体が右方向に吹き飛ばされる、そのまま落ちるかと思っていたらなにかが私を受け止めた。
「……邪魔してんじゃねえ、カプリコ」
「グラナのうそつき」
「まず先に嘘ついたのはそいつだぞ」
リコの目が私を見る、たしかに、記憶を渡すと言って約束を破ったのは私だ……
大人しく従っていても無事ではいられなかったと思うが。
口の中に血の味が広がる、この硬いものは…どこかの奥歯か。
「そいつを閉じ込めておけ」
今日のところは見逃してくれるらしい、ははは、今日は私のかち。
「……ごめんね、満月…ほんとは私の部屋にするつもりだったんだけど……」
柱に囲まれた透明な牢屋、これがPSIを使えなくするっていう。
変わらず薄暗い、おなかすいたな。
「いいよリコ…私が悪いの、リコはグラナさんの言うこと聞いただけだもんね」
「…………もう行かなきゃ」
「うん、またね」
小走りで離れて行くリコを見送って、ごろりと横になった。
餞別のつもりかわからない布きれを羽織りわずかな暖をとる。
「ふ、はは…ははは……あはははは……」
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