腐っても時渡り
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携帯のボタンをプッシュする、宛先は桜子さん。
「…もしもし、桜子さん?」
『満月、どう? 記憶は取り戻せそう?』
「それが…ちょっとややこしいことになってて」
『ややこしい?』
なんと説明しようか…ううむ、難しい……
「うん……例の住所は探してみたんだけど空振り、それからいろいろあって今はエルモアさんのところで生活してて…」
『ずいぶん端折ったわね』
「ごめんなさい。あと何日かしたらそっちに戻ります」
『あらいいのよ、ゆっくりしてきても』
「桜子さん一人じゃさみしいかと思って」
『うふふ、そうね…さみしいわ満月、早く帰ってきて』
うおお…デレた、うますぎる。
でもそう言われたら早く帰らざるを得ないな。
「はい、桜子さん」
――エルモアウッドで生活し始めて数日が経った、七月をとうに過ぎて本日は洗濯日和。
ちゃっちゃと干すぞお!
「満月!」
「ぐっ……! り、リコ…首がっ、はなじて……っ!」
「ほーい」
ぱっと首から手が離される、く、苦しかった…
「リコちゃん、だめだよお手伝いの邪魔したら」
「うーにー?」
「きちんとあやまらなくちゃ」
「うん、ごめんなさい!」
うふふ、マリーグッジョブですよ、ナイスジョブ。
やはりいい母親になれるよあなたは…!
「いーよ、よくできました。終わったら遊ぼうね」
ここの子たちは早々にリコに世話をやいてくれた、境遇は同じだと理解してか、単にその見た目のかわいらしさか。
まあみんなかわいいんだけどね! すごくすごく素晴らしい環境だよここは!
しかし、桜子さんのもとに帰る日は刻々と近づいていた。
「リコ!」
「満月!」
力いっぱい抱きしめる朝のあいさつ。
「朝っぱらから暑苦しいのよあんたたち」
「えへ、ごめんねフーちゃん」
「セクシーローズって呼びなさい!」
おおっと、そうだった。
背筋を伸ばしてビシっと敬礼も決めて
「セクシーローズ、最初の任務は朝ごはんであります」
「あさごはんであります!」
「フン、いいわ、ついてきなさい子分達」
「行くよーリコ」
「うん!」
今日は花壇のお手入れの予定。
「おや、シャオくんそんなところでなにをしてるんだい?」
「…瞑想」
「……マリーのこと見てただけじゃないの?」
なにさそんなびくっとしちゃって。
お母さん君の未来を想うと心配でならないよ。
「You 告っちゃいなよ」
「なっ!? む、無理…じゃなくてしないよ!」
「もー強がっちゃって」
「ち…ちがう!」
でもなんだな…一方通行の愛を後押しするのも気の毒な気がするぜ。
ごめんねシャオくん。
でもやめない。
「いまのうちだと思うけどなあ」
「なにがだよ」
まあ、報われる日は来るよ。
いたたまれなくなったのかその場から移動しようとするシャオくん、そうだちょうどいい。
この袋たちを一緒に持っていってもらおう。
「シャオくん、ついでだから手伝ってよ」
「…わかった」
ありがとね。
雑草を詰めた袋を両手にゴミ置き場へ、夏はここぞとばかりに生えるからなあ、腰が痛いや。
まあ食後の運動にはちょうどいいけど。
リコはヴァンくんと遊んでる、というか二度寝タイムかな、不思議なくらい仲がいい。
「…じゃ」
「ん、ありがとう。がんばれよ少年」
「読書するだけだよ…」
ふむそうかね、では私も休憩しようかな。
ああ暑い、夏の日差しが肌を焼く…狙ったわけではないが、一句。
「満月ー」
「あれぇリコ、どうかした? ヴァンくんは…あ、一緒か」
って、パジャマのまんまで君は。
「ねー、満月はずっとここにいるんだよね?」
「…あ」
……そういえば、話してなかった。
言った気でいたんだ…なんて説明しようかと考えてると下からうれしそうなカイルの声が聞こえた、なんてのんきな。
ずっとこんな生活が続けばいいと思っていた、でもこんな平和で楽しい生活をしていたら、また決心が揺らいでしまいそうになる。
時間はそう長くない、もうすぐ私はここからいなくなってしまうんだ。
私はここの子ではないから、家に帰らなくちゃいけないと説明すると、リコはとても悲しそうな顔をした。
おお、我慢してる我慢してる、えらいぞリコはえらい子だ。
いかん、もらい泣きしそう。
ぱ、パトラッ○ュ…! ラス○ル…!!
「満月もいっしょにいようよぉ…!!」
「うぉっ…あぁぁ……ごめん、ごめんねリコ…!」
ついに泣き出してしまったリコにおろおろしつつも謝るが、それぐらいで泣き止むなら苦労はしない。
はい、そうです、私が悪かったです。
廊下のほうから慌しい足音が聞こえる、こっちに向かってきているようだ。
「ヴァン! ヴァンはおるか!?」
「うー?」
「!! ババ様、どうかしたんですか?」
「まずは治療じゃ、ヴァン、急ぐのじゃ!!」
…まさか、さっきの車……カイルの笑い声、エルモアさんの焦りよう。
リコを抱えてヴァンくんのあとを走る。
ババ様に言われた部屋へ入ると、うめき声をあげて苦しむ人影が。
「……アゲハ……!」
アゲハがここに来てたなんて。
アゲハの治療を終えたヴァンくんは、そのまま昼寝をするために部屋へ帰っていった。
私はアゲハをババ様の部屋に運ぶため、リコを背負い腕にアゲハを抱えるという若干無茶な格好で歩いた。
普段のままならアゲハより一回り小さい男でも持ち上げられないのに、ライズってすごい。
アゲハをお姫さま抱っこ…いや、なんもやましい考えはしてないですよ。
「すまんのう、満月」
「このくらい平気ですよ。……あの、エルモアさん」
「…なんじゃ」
リコは寝てしまっている、いまのうちに。
危険は承知だ、しかしこの程度なら……
「おぬしまで未来のことを話そうというなら…ワシは聞かん」
「…いえ…あの、私になにかあったらリコをお願いします、悪い人に利用されないように……」
…しばらく様子を見る、ネメシスQが出てくる気配はない。
たったいまアゲハと話している最中か、それならばもっと突っ込んで話しても問題ないか。
「…そやつらが誰かは、言うでないぞ」
「ババ様にはなんでもお見通しなんですね……よろしくお願いします」
やめておこう…伝えるべきことは伝えた、リコがこのまま健やかであればそれでいい。
「うむ。ワシらも努力しよう、その子が誰ぞに見つからぬよう…」
「なあ、アゲハ見なかったか?」
「アゲハは今ババ様とお話し中だから、ジャマしちゃだめだよ」
「ちぇー、まだ終わんねーのかよ、早く遊びてェのになー」
いつもながらアゲハラブでほんとに……ほんとにかわええ子やカイルは…!!
「リコちゃん、どうかしたんですか?」
「んー? 泣き疲れて寝ちゃったみたい」
「…なにしたのよ、あんた」
「説明しわすれてたんだよ……ほんと、ここがあんまり楽しいから」
言い訳にすぎないか。完全に私の過失だ。
リコがここに慣れるまでと思っていたら、いつのまにか私のほうが離れられなくなっていた。
物語が進むのがこわい、これから私の知らない未来が始まるということが怖い。
はたしてリコをここに連れてきたことでどれだけの影響を与えるか、それを予測できないのはとても。
「……首輪がまたひとつ」
「ん? なにか言ったシャオくん?」
「いいや…なにも」
「そう、ならいいや。カイル、暇ならまたライズの訓練付き合ってよ」
「しょーがねーなァ、アゲハが話し終わるまでだからな!」
うひ、ありがとうございます。
ライズの得意なカイルは見ているだけで参考になるからなあ。
いやあ、年齢的に考えてもおそろしい。
「――…影虎さん、いま無事!?」
カイルとの訓練が終わって、起きたリコをなだめる間にそこまで進んでいたようだ。
…じゃあヴァンくんを起こして、お昼のサンドイッチでも作りますかね。
「満月、おでかけするの?」
「そうだよ、リコなにが食べたい?」
「ハム!」
そうかハムか、よおし決まり。
「さ! さ! 皆五分で支度せえ、東京へ行く!」
「はーい!!」
玄関に着いたのは子供達がそれぞれの支度をしに走ったあとだった。
「ちょうどよかったみたいですね」
「満月、おぬしも支度せい……と、終わっとるようじゃな」
「あッ…満月!? お前…!!」
「えへ、存在スルーされてた……まあ顔見せてなかったもんね…」
かくいう私もアゲハが来てることに気付かなかったし…ちょっと傷つくけど。
「ていうか子供がっ…!!」
「そうだ忘れてた、リコ、ごあいさつは?」
「八星理子です! よろしくねお兄ちゃん!」
「あ…ああ…オレはアゲハ……よろしくなリコ」
「出かけた先で見つけてねえ、ここで預かってもらうことにしたんだ」
「満月はねー、わたしの友達一号なんだよ」
にへーってだらしなく笑ってるんだろうな私。
そのぐらいうれしいってこと、かわいいなあリコったら。
「いい休息だったみたいだな」
「うん、とても楽しかったよ」
全員準備が整ったようだ、さあ出発。
この先で弥勒が待っている、……リコの姿は見せないほうがいいだろう。
下手すれば、この天樹院が狙われかねない。
私は後部座席でリコを膝に乗せてマリーたちと一緒の車に乗った。
アゲハと離れてもうちょっと沈むかと思ったけど、みんな楽しそうでなによりだ。
「……あ」
そうだ、最初の目的地はたしか……
「関東衆英会…」
見覚えのある道だと思った…そりゃそうだ。
一度か二度くらいここに来た事がある、お仕事で影虎さんに連れられて。
まあちょっとコワモテの人たちがいるくらいで普通の場所と変わらないんですけどね。
最初は少し怖かったなあ、トラウマなんだよ、ヤーさん。
「すっげぇー! かっけぇ!!」
「探検に行くわよマリー!」
「えぇぇ!? フ、フーちゃん待って…!!」
あの追いかけてきた人たちはこことは別の組の人だとわかって安心した記憶がある。
が、ここの人たちだって怒らせれば……いや、想像したくない。
「ババ様、私はこっちでみんなを見てますね…」
「よし、頼んだぞい」
……で、みんなどこ行ったの。
いつのまにかリコまで探検に行ってしまったようで…まず三人を探すことから始めねば。
ここ広いし、変なところにもぐりこんでなきゃいいんだけど。
「おぉーい…リコォー? フーちゃん、マリー」
ううむ、出てこない。
余所見をしていて目の前に気付かず、なにかに思い切りぶつかってしまった。
「うわっ、あっ、すいません」
「なんだあんたか、ガキどもこっち来なかったか?」
「いえ来てないです。一緒に探しましょうか…」
言った瞬間、真横をカイルが走り去っていった。
ちょ、てかすげ、はや!
「見つけたぞクソガキィッ!!」
「うっひゃっひゃっひゃ!」
……まあいいや、カイルはあの人にまかせて…
こっちの部屋かな?
「リコー」
適当に戸棚や襖を開けてみる、うむう、いない。
次の部屋。
「あ、みつけた」
「ゲッ」
「ご、ごめんなさい…!」
「あーいーよいーよ、リコは?」
「あっちに行ったわよ」
あっちだあ? しょうがない、二人は放っておくか。
でもまあ一応。
「二人ともここでじっとしてなさい」
「はいはーい、わかってるわ、オネエサマ☆」
……わかってない、これ絶対わかってない。
いやそれよりもリコだ、単独行動ならここは危険すぎる、いろんな意味で。
「…もしや」
まさかとは思いつつも庭に出て屋根を見上げてみる。
「うおー」
いた。
「コラァ! リコ、降りてきなさいッ!」
「うっうー、やだ!」
「ほぉう……そうかそうか」
ならばゆけい! 私の触手たちよ!
リコの体をからめとれ!
「うおおっ!」
「捕まえた!」
「満月! もういっかい!」
「ダメ、さあみんなのところに行くよ」
ぶっちゃけると私だって探検したいんだぞ、ただ怖いからしないだけで。
だってここ広いしおもしろそうなものいっぱいあるし。
もう一度言う、私だって探検したいわい!
「はッはッ早く隠してぇ! しまいなさいバカ!」
「あれ? 今バカって言った? マリー?」
おおいたいた、保護保護。
フレデリカが手に持ってるトカレフをとりあげてついでに触手で拘束する。
「だめだよ子供がこんな重たいもの持ったら」
「いいじゃないちょっとくらい、ていうかほどきなさいよ」
「ここかァ!」
手にはトカレフ、そばにはひっくり返された狸の置物。
「……あ」
「……ヤバ」
「……」
…静寂の間に元の場所に戻して、これでよしと。
いいん、だよね…?
「…………じゃあ、私たちこれで失礼します」
「ああ…ってんなわけあるかァッ!!」
「うひゃあああッ!」
「ごッごッ、ごめんなさァい!!」
「うーにー!」
悪気はなかったんですよぉ!
なにが悪いって、運がわるい!
「お前達何やってるんだい、そろそろおいとまするよ」
「は、はいぃ…!」
た、助かった……いやまあ、つかまってもお説教くらいだとは思うが。
でもなんでか、それ以上の迫力があったようななかったような……
とにかく、影虎さんを追うための材料は揃ったようだ。
あとはアジトに突撃するのみ。
私の考えてることがうまくいけば、というより私がうまいことできれば、未来は変わるはず。
トチるなよォー…私ッ……!
――突入決行の日暮れ。
私たちは日が落ちてすっかり真っ暗になったころ、犬居のアジトである別荘に到着した。
下見のときは一階のカーテンは完全に閉め切られており、いかにも隠れていますといった感じ。
しかし二階のカーテンは開いている、そこは徹底しようぜ。
全員、おそらく一緒であろう仲間を分断するため、二手に分かれて攻撃する作戦にでた。
私はというと……
「はいヴァンくん、おせんべい」
「うー」
あまり大人数では気付かれるかもしれない、と待機組だ。
リコもまだPSIを扱いきれないし、私だけ出ていってリコが追いかけてきたら困るし。
待機組ならば都合はいい……膝に座るリコがうとうとしはじめた、変わらずマイペースなようで。
…私はただ作戦の成功を祈るのみ、先が見えてるとて油断はできない。
なんとも言い表せぬ音と、後方で上がる火の手、う、おお…!!
「うおおおおい! やりおったなフレデリカの奴!!」
すごい、フーちゃんのPSIは今まで見たことがなかったけど、あの年でこんなに強大なのか。
「ヴァン行くよ、用意せい」
「うー」
「満月はここでリコといるのじゃぞ」
「はい」
…すいません、それはちょっと無理です。
二人が林の中へ消えていくのを見守ってから、私は行動を開始した。
私のトランスはまだ未熟だが、人の意識くらいは操れるようになった。
あのはるかぜ学園での一件で図らずも上達した脳内の歩き方は、今こうして役に立つ。
「うにー……」
リコの頭の上に手をかざす、うたた寝状態の意識を爆睡まで落とす。
これぐらいなら恐らく後遺症は残らない…と思う、恐らくね。
「…さて」
作戦決行。
私の目的は天戯弥勒、別荘から出てきたところを襲撃する。
闇夜に紛れて体を乗っ取ればきっとうまくいく。
…私のことだから上手くいかないと思うけど、それでも万分の一の確立がある。
「……ふー……」
やばいなー、どきどきする、というよりばっくんばっくんする。
胸のトキメキを隠せない、じゃなくてド緊張してるんだよ。
シャオの策敵に引っかからないよう、なるべく離れて自分は壁だと自己暗示をかける。
たしか気配の消し方はこれで合ってたはず…私は壁、私は壁。
草むらに隠れて様子を見守る、まだ変化はない、大きな物音さえも聞こえない。
数分…数十分……
「!!」
PSIの大きな樹がここからでも見えた、それから家が崩れる音だ。
なぜだかわからないが動悸が止まらない、多少の息苦しさも感じる。
いや、恐れるな、向こうでアイツと遭うより怖くない。
むしろ、今の方が弱い、弱い弱い、弱いはずだ。
何ヶ月と先より、今のほうが仕留められる確立は高い。
糸繰り人形<ドール・ドール>…!
左手で五本の針をギュっと握った。
……足音が聞こえる……
「……出ておいでよ」
「…………」
気付かれてる、か。
ゆっくりと、トランスの糸が見えないように草むらから出る。
「そこで隠れて、何をするつもりだったんだい?」
「……」
どうしよう、冷静に答えられる気がしない。
右手で大きな爪を作る、はやく、はやくこの地獄から抜け出したい。
失敗でもいい、ここから抜け出せるなら……いや、そんなことではダメなことはわかってる、でも。
ちくしょう…余裕しゃくしゃくフェイスしやがって…!!
「彼らの仲間かな? 単独行動なんて命知らずだね」
だめだ…怖い、怖い、怖い…!!
あふれ出る雰囲気が、表情が、仕草が、全て。
ふ…振り切れ…!!
「…っぅおオオァッ!!」
振り上げた爪はかわされた、そして弥勒は笑う。
「そんなもので僕は倒せないよ」
「…はっ、はっ……」
「もっとも、僕を倒せる気でいたならそこまで怯えはしないだろうけど…」
またクツクツと、さも愉快そうに笑う。
よし、よし、慣れてきた、だめだ、慣れるわけがない、違う、慣れただろう私!
あいつは私が弱いから油断してる…今しかない!
大爪で薙ぐ前にトランスの針を投げ込む。
爪に注目しているうちは気付かない、この針が本命であることを。
人と戦うことはあまりないけど、心理はわかってるつもりだ。
向こうは上級のサイキッカーだけど、さらに言えばラスボスだけど。
「こっちが本命かい? うまくできてるね」
「……っ」
弥勒は針をバーストで防ごうとする。
しめた!
薄く張られたバーストの膜は、針の先端でいとも容易く破れた。
「…ッ!!」
「っは……みぎ、もらいました」
バーストで包む練習をしててよかったと思えた瞬間だ。
弥勒の右腕は自由に扱えるようになったがまだ、全身を操るには足りない。
頭に打ち込まなければ、阻止することはできない。
「小賢しい真似を…」
「うぐッ……!!」
トランスで繋いでいるほうの腕を蹴られ、木の幹に思い切り叩きつけられる。
やばい…意識を保て腕を動かせ、じゃないとこいつを操れない…!!
倒れそうになりよろけながらも必死で弥勒の右腕を動かし喉を絞め上げようとするが、弥勒はそれに全く動じずこちらに歩いてくる。
「もうお終いにしよう……俺には時間が無いんだ、世界を変える時間が」
私にだって無い! 実力すらない、運だって、頭脳だって無い。
それでもこうして生きてるのは桜子さんやアゲハや、他のみんなに助けられたから。
立ち向かうのは怖いけど、そのみんなを脅かす芽は摘まなきゃならないだろう…!?
息苦しい…まだチャンスはある……あの樹を使うつもりなら、それに紛れて刺せる。
来い……もうバクバクで心臓が限界だ!
…刺せないならせめて一撃、骨の一本……!
ドッ――――
「!?…………ッ、ハ、ァ…ッ…!!」
膝から地面に落ちる、視界が滲む。
なにが おこった ?
「お前のような人間は、能力を使うまでも無い」
「ヒュ……っ、ぐ…」
「新しい世界で生きていたら、また会おう」
て、ことは、急所は外してるのかな…………
ぬるりとした血が手のひらを濡らす、ああ、お腹か…心臓じゃなく、てよかった…素手で攻撃、されたの か?
痛みが遅れてやってくる、痛覚なんてなかったらよかったのに。
痛くて、痛くて涙が、止まらない、ヴァンくんは来てくれるだろうか、来てもそれまで耐えられるかわからない。
こんなん、ばっかだ、最初ッから動かなきゃいいのに、だめだ、弱いままだ。
でも変えるんだ、私が弱くても生きられるように、このさきみんなが 生きられるように。
追えるか 方向はわからない、あっち かな、やってやる 変えてやる、いじでも未来をつくって、やる。
ゆだん、してる 今なら…いける。
私は
生きるんだ……!
「…ライズ…………ッ!」
