腐っても時渡り
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「…あッ!! はっ!? マジかよ!? 全部埋まっちまってる!」
うむ、見事に埋まっておられる。
その家の残骸をヒリューが軽々と片付け、さらに進む。
「これで何か情報がつかめるかもしれない…」
「ああ、カブトさまさまだぜ」
そうね。カブちゃんがんば。
「開~いたァァぞ~ッ!」
重たそうな扉が開かれる。
中は整頓されていたような様子は一切見られない、同時に人の気配も。
…気配なんて感じ取れるわけないって、適当な事を言ってみただけ。
そこに一陣の風が吹く。
「!? 風が!!」
「ゴヘッ…!」
「チクショウ…早く出ろ!」
ほこり臭い……目に入った…!!
一番後ろにいた私でさえこの被害だ、うう、だれか目薬持ってない?
「だめだ、中も風化が始まってる…!!」
「でもオジキは、外の有害な空気を防ぐ設備があるって!」
「…地震だな…中の荒れ様といい…それで、ろ過装置もイカレちまったんだろ…」
うーん…そうだろうね、たぶん。
…暇があったらなんとかしてオジキと知り合って助言をしてみようかな。
考えてもやらないほうが多いけど。
「隕石…!?」
今の風で飛んで来たらしい新聞の切れ端を持ったアゲハがそう言った。
内容を読み上げる、うむむ、これだな。
「ニャッハッハッ! 直径一mの隕石で世界が滅びると思ってんのか!?」
「読んだだけだろ! んなこと一言も言ってねえだろうが!!」
「アゲハ、ちょっとそれ貸して」
「んあ? あ、ああ…」
鞄からラミネート加工用のフィルムを取り出す、一時期大変お世話になりました。
もともと写真とか記念品を保存するものだし、使い方としては間違ってないよね。
そこに手元の新聞紙を貼りつけ、完了。
「なにしてんだ?」
「保存。なんかの手掛かりになるかもしれないから」
「もう一度降りて…辛うじて残ってるものだけでも調べましょう」
みんなでもう一度階段を降りていく、さてこの新聞、いつ役に立つか。
「オメェはどこまでフザケりゃ気がすむんだ」
「ハッ! フザケてなきゃ頭がオカシくなりそうなんだよ!! これが現実なんて!」
その言葉が私の胸にもチクリと刺さる。
現実……なのかなあ。
「お前にとっては…もうここは、ちゃんとした現実なのかよ…?」
私だって同じこと、ここが、この現象が現実だなんて。
元の世界がちゃんとした現実だから、そこに帰るためにもいまこうして行動してるけど。
私は、ここがまだ現実じゃなくただの幻覚程度にしか思ってないのかな…?
「……っ」
ブンブンと悪い考えを頭から振り払う。
ちがう、そんなことない、ここは現実だ、きっと現実なんだ…血は出るし、痛みもある。
そう思いたい、ここなら私だって誰かの役に立てるから……
自分の力じゃないけど、先を知ってるから、悪い結果にならないようにしたい。
この世界の人が好きだから。
……現実が嫌だからって、虫がよすぎるかな。
そんなことを考えている私の肩をアゲハが軽くたたく。
無言だったけど、気にするなと言われてる気がした。
……心配させないために、私はにっこりと笑った。
核シェルター内の捜索を始める、探すものと言えば年代を特定できそうなものに限られてる、そう時間はかからないだろう。
暗くてよく見えないが日付が書かれているものはあらかた、現代よりも過去のものだ。
風化は最小限だ、地震さえなければあるいは……
今そこを考えたって仕方ない…かな。
発電装置が独特の音をたてて作動する、一気にシェルターの中が明るくなった。
それと同時に、カブトの叫び声がした。
「ウソだ……ウソだろ…!!」
「あっ、ちょ、カブト…!」
声のしたほうに行こうとすると、その横をカブトが走り去っていった。
視線を元に戻すと、そこにはヒリューと転がるオジキの死体があった、保存状態は運がいいのか悪いのか、わりと見れなくない。
「だめだ…もう死んでる」
「うん…………この中結構乾燥してたし、ミイラになる条件が揃ってたんだろうね…」
「…専門だったのか?」
「いや、科学捜査ドラマが好きなだけ。多分なにかが原因で脱水症状を起こしてたかもしれない」
じゃなきゃここまで完璧に乾燥しないね。
「みんな、ちょっと……っ!?」
「……これは…霧崎のオジさんかい…?」
「ああ…」
すぐにアゲハも戻ってきて、カブトの状況を理解した。
……なんというか、冷静すぎないかみんな、私もだけど。
死体なんて見慣れるもんじゃないだろう。
「義足じゃない方の足も骨折してる」
「ヒドい……」
恐らくソレが死の原因だろう、自由に動けずろくに食事もできなかった、と。
一応、手を合わせておこう。
「見て…! この人が持っていた手帳の残り…大分痛んでいるけど」
広げられたものの一部を見てみる、ほとんどが日付や打ち合わせの予定で埋まってたけど……
一枚のなかに一つはカブトとのことが書いてある…どんだけ甘いんだ。
あと、なぜこのラーメンを食べようと思った、スケジュール帳っていうより日記に近いのか。
……不謹慎だが萌えた。
「こりゃあ役に立ちそうにねェぜ」
「いや…こっちを読んでくれ……!」
アゲハがそれを読み上げる、そのなかに新聞の切抜きが挟まっていた。
鉄塔が解けてるもの、電車が田んぼの中にあるもの…
「なんじゃこりゃ…これはPSIを身につけた人間の仕業か…!?」
爆発したほうはドルキさんか…鉄塔のほうは、グラナ…? いや、ジュナスかも……
「……教えてくれよ、リトルバニー…」
「霧崎…」
「ワイズってのは何者なんだ?」
「…話を整理しましょう…」
彼らが敵であることに間違いは無い、現代で動くことで出来る限りの改善はできる。
禁人種の大元はカプリコのスケッチだ、現代じゃあまだ普通の子供なんだよね……
……そうだ、禁人種だけでもなんとかなるかもしれない…!
でもそれを実行するには、ここから逃げ延びなくちゃ。
「おい皆、こっちにきてくれ」
シェルターの奥のほうで健気に働くブラウン管テレビ、デジタル移行後でも捨てられずに残ってたか…
DVD再生用ならそうするわな、液晶テレビより画質いいし。キリッ。
ノイズの混じった映像が映し出される、集まる人、演説を始めるワイズの幹部…たぶん天戯弥勒。
愚民ども、という言葉のあとでビルや道路を破壊していく。
「PSIを使ってこんな大殺戮を始めるなんて…!!」
「オッ、オジキは…!? オジキはどうなっちまったんだよ!?」
「待て! 映像が復活する!」
破壊されていく街並みのなかに現れた子供たち。
うう…立派になって…お姉さんうれしいよ……って、一年しか経ってないんだけどね。
全員その映像から目が離せなくなっていた、無事でいてほしい、だけど…
「なんで…!! なんであいつらが死ななくちゃならねェんだよッ…!!」
「育ての親のエルモアが死んでしまったのよ…! だから、あの子達の勇み足を止められる者が誰もいなかった…」
変えてやる、変えてやる、もっと早く、もっと手が打てるうちに。
その時外のほうで爆音が響いた。
早い…! まだもうちょっとあとでもいいでしょうが…!!
「何だあのヤロウ…!」
「……ドルキ…? マツリ先生が出会ったワイズの一人だ! まさかこんなところで逢うなんて…!!」
また爆発が起こる…うぐう、鼓膜がおかしくなりそうだ…!!
「七秒以内に出て来い!! 次は完全に破壊する!!」
無茶いうなドルキさん!
「だめだ…! これ以上ここはもたねェぞ!!」
「何か策はあるか?」
「七秒じゃムリね」
「…出て行くしかねェみたいだな」
「ええ」
…こういうときこの二人は強いと思う。
いや、度胸があるというべきか、切り替えが早いというか。
私には到底追いつけはしないのだと思う。
「待て!」
…生ドルキさんだ、ナマだよナマ。
普通の人間として出会ったら、まずおちょくって遊びたい。
……無理だろうケドね。
ドルキさんがくるりと指で円を描く、次の瞬間に私たちの周りが爆発で焼け焦げた。
いたっ! あつっ! もっと大きくできなかったのか!
「いいか、その線から一歩でも外に出た奴は容赦なく爆破してやる。これからするオレの質問に答えれば命だけは助けてやろう…」
いいやウソだ。こういう場面でそんなこと言う奴は必ず嘘つきなんだから。
すまんありゃウソだったって平気な顔して言うんだから。
…もうおふざけはヤメ。
「お前達は何者だ…? 何の目的で……どこから来た…?」
息を呑む、その質問にはそう簡単に答えられない。
あなたの心をさらいに来ましたなんて言ったら爆破されちゃうんだろうな。
「どうした? 死にたいのか?」
「……俺達は生存者だ…! ここよりもっと西の…廃墟で暮らしていた…今は他の仲間を探して、東へ旅をしている最中だ…」
「ホウ生存者か…! ここ数年お前達のような者が見つかるのはとてもレアなケースなんだ…」
いやだ…いやだな、こういう腹の奥からざわざわくるような感覚は。
目の前のものに対する畏怖か、これから先の予感か…なんていうかすごく、やなざわざわ。
思わず目を背けたくなるような、ここの選択を間違ってはいけないっていう独特の感じ……
「ギシシシ…ドルキ様、お早いお着きで…」
「遅ェんだよ、役立たず共め…!!」
「ギシシ…ワイズ特別警備小隊ギッザーニ、ベオル、ゴルドフ、只今到着いたしました…!!」
あ…れ……記憶違いか、多い気がする……
まさかだろう。
「な……仲間だと…!!」
「いやァそれにしても生存者諸君! お前達はここまでよく頑張った!!」
私の視線は多い一人の方に注がれていた、まさかあれ、私がここにいるからなんてこと…!
まだ一人を相手をするには実力がなさすぎる! 冗談よしてよ…!!
「今は旧暦にして2018年の6月も終わる時…! あの『転生の日』から八年半だ…!!」
「…………2018……!!」
その瞬間、ピクリとドルキさんの指が動いた。
「やはり…なにかおかしいな貴様達は――……! 今、2018年と聞いて…全く…! 全く予想していなかったという表情を…ほぼ全員がした…!!」
あ…!!
「貴様ら本当に只の生き残りか…!?」
「ま、待ってください!」
「……なんだ? ただの命乞いか?」
「き、聞いてください…この人たちは…本当に、生き残りです……わ…私が、記憶をい、いじりました……!!」
「満月…!?」
「それで、お前は驚かなかったわけだ…記憶をいじったと言ったな…そんなことをして何になる?」
声震えてる、こわい、それになんの意味も無い……
でもこれは賭けだ、まず未来を変えるための、一つの賭け…!
「この人たち、に、真実を伝えるのは……あまりにも酷…だから、無事にど、どこか安全なところまで逃げるために……!」
「なるほどな……そんな嘘、オレに通用すると思ったか…?」
「……っ」
見抜かれた…そりゃ、あれだけ震えてれば嘘だと見抜けるかもしれないけど…!!
「お前らこいつらを塔に連れて行くぞ、トランスで徹底的に脳をいじる」
『…このままでは全滅するわ』
桜子さんの声がする。
『みんな私の合図で一斉に逃げて…!! 私が一瞬だけスキを作る! みんなゲートを目指して全力で走って!』
現代で会おう、それで通信は終了する。
「ム…!! あの女…テレパスか!?」
「何を小賢しい事してる小娘ェ!!」
「あ! やッ、やばい、そこ……!」
ヒリューが飛び出す、まるでヒリューを待ってたかのように爆発したソレを耐える。
「あ…朝河君!!」
「ヒリュー…!」
「生きているだと!?」
ヒリューの体から翼が生えた、ドラゴンの片翼。
全てをかき消すかのごとくなぎ払う。
「みんな行けー――ッ!!」
できれば誰とも離れたくない!
こわい……怖い!
でもみんなの行った方向はわからなくなってしまって、私はとにかくそこから離れるしかなかった。
「はっ…ぁ……っ!」
ライズを全開にしてどのくらい走っただろう、ゲートにはどうやって行けばいい!?
後ろを確認すると、やはりさっきの多かった一人が私のあとを着いて来ていた。
「まて!」
あっという間に追いつかれ、そいつの手が背中にかかる。
「う……ぐ…!」
「おいかけっこは、おしまい」
押さえ込まれて無様に転ぶ、鼻を打った。
名前は、なんと言ったか、いやそんなもの覚えてたってしょうがない。
ただ黒いという印象の姿の長い爪が、背中に食い込んでいく。
「ぎっ…!!」
「いたい、か?」
だめだ、逃げなくちゃ…!!
「おっと」
突き飛ばそうと足を上げると、向こうから距離を離してくれた。
まずは隠れよう、岩場を影にしてさらに先、その奥の崖の隙間に身を潜めた。
「つぎは、かくれんぼ」
息を殺せ…気付かれるな、なにか手を考えないと……!
背中の傷が熱を発生させる、痛みはない。
でも、このままではじきに……
「ゆっくりさがす、それがいいときいた」
じりじり、足音だけが聞こえる。
いい加減誤魔化すのも限界なのか背中が痛み始めた、浅いのか深いのかわからない。
痛みがどんどん増していく…血、出てるんだろうな……
ここで終わりなんてことない、よね…?
「…っふ……っ」
「きこえた、こっち?」
死にたくない、死にたくない…!!
涙が止まらない…怖い、死にたくない、まだ生きたい…!
未来を変えるんだから……!
「だれもここへはこない、おとなしく、こい」
――……わたし、この期に及んでまだ、自分が死なないと思ってる?
「ちがうな、こっちか」
死なないと思ってるの、誰か助けてくれるって?
ヒリュー? 桜子さん? 一体どこの誰が来てくれるって?
強くなりたいって? 一人じゃまだ無理だって? 人の役に立ちたいって?
矛盾だらけじゃないか。
それであの人を守るって、助けるって、未来を変えるって。
そんなこと、私が言えたことじゃなかった!
いまこの死の恐怖に怯えてる星崎満月は、弱くてあまりにも軽い命だ!
覚悟を決めたつもりで酔ってたんだ! 覚悟していると、誰かのために存在していると!!
こんなことで、こんなところで涙を流してガタガタ震えてる私は、ただのゴミクズも同然だ!
わかった…やっとわかった。カブトの言葉が胸に突き刺さったワケ。
「ちがう、な」
一度近づいた影が遠ざかっていく。
「なんていうと、おもった?」
私はまだこの現実で生きていく真の覚悟ができてなかったんだ。
