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オリジナル2


メインは柚子と既に指示が出ている。
と言う事は、柚子を軸に、残る2人はサポートに回る事がまず決定事項になる。
目的地があやふやなままではいけないと、安全を確認してから少しばかり足を止めての話し合いの結果、まずは定石。
敵を観察、然るべき対応をしつつ徐々に鎮圧していく方向となった。
「相手が炎だから、水魔法だよね」
「そうね。でもまずは相手を動かない様にしなきゃだから、最初の一手は刹那じゃないかしら。動きを止める魔法は刹那の十八番だもの」
「そうね、じゃあ、まずは」
丸くなって座り込んだ3人の真ん中に折りたたんでポケットにしまっていた大きめの真っ白い紙を広げ、刹那は更紗にそれを差し出す。
「更紗の出番よ。この辺りの地図と、相手が居そうな場所をピックアップ、お願い」
「了解」
更紗はペンを紙の上にかざすと、小さく呪文を唱える。
すると、ペンは更紗の手を離れ、紙の上をサラサラと動き、見る間に詳細な森の地図を描き出した。
ペンが止まるのを確認してから、更紗が次に手にしたのはいつもリュックに付いているホルンのチャーム。
小さいがほぼ本物に近い形をしている。
更紗がそれをホイッスルの様に吹くと、更紗の周りの空気が小さな渦を作り、次の瞬間、更紗の右腕には氷の様な淡い碧の鷹が凛とした姿を見せていた。
「風絽、お願いね」
更紗が音階を変えてチャームを吹くと、風絽と呼ばれた鷹はまっすぐに空へ飛び、おそらく辺りを見回したのだろうと思える位の間隔でまた更紗の右腕に戻る。
「さ、風絽」
更紗がペンを構えると、風絽は更紗の肩へ移り、まるで耳打ちしている様に耳元で小さく鳴く。
それを理解した更紗は今いる場所から程なくして広がる場所にチェックを入れる。
「ここの陰に隠れてるみたいね。相手の気分が落ち着いてるなら話し合いで解決出来ると思うけど」
3人は地図とにらめっこしながら少しずつ情報を整頓していく。
相手が落ち着いていて、かつ大人しく、戦わないと意思表示したなら使い魔を介して交渉が出来る。
こちらから相手の欲しいものを提示、相手が納得すればそのまま浄化してやればいいのだ。
が、それはあくまでも教科書の上の事。
今は座学ではなく、何が起こるのかも分からない実践。
「…じゃあ、こうしようよ」
思案の後、口を開いたのは柚子だった。
「柚子が大紙ちゃん連れて1人で行く。大紙ちゃんに通訳して貰って、この子と話し合いしてみる」
「1人でって…何かあったらどうするの?」
更紗が心配そうな表情を柚子に向けると、柚子はにっこりと笑って言った。
「隠れてるんだよね?って事はこの子怖いんだよ。だったらみんなで行くより柚子1人の方がいいでしょ?」
「怖がっているのだとしたら…一理あるわね…でも、それだと何かあった時に柚子が危ないわ。今は大丈夫でも、その後で何があるかなんて、そこに行かないと分からないのよ」
「だからってみんなで行ったらこの子をびっくりさせちゃう。誰かが行かなきゃなんだから、リーダーの柚子と大紙ちゃんでしょ?」
「そうね、先生が決めたんだもの。でも、危険である事は間違いないでしょう?」
そう言って刹那が左手の手袋を外すと、指にあるガーネットのリングから銀色の光が飛び出す。
光が消えたそこにはガーネットの瞳をした黒い狐が行儀良く座っていた。
「ほぅ、此度は森の中」
「クロ、説明はなくても分かるわね?」
手袋を付け直しながら刹那が言うと、狐は目を細めてにんまりと笑う。
「相手が怖がって怯えて隠れているのだと仮定するわ。だとしたら柚子が言う通り、1人で行くのは賛成。でももしもの事を考えたら私と更紗も行かなきゃいけない。でも、下手に刺激は出来ない。だから」
刹那の手が隣にいる狐の背を柚子の方に押す。
「…クロちゃんと風路ちゃんが柚子と来る、って事?」
狐と鷹を交互に見ながら柚子が目をキラキラさせて言う。
「そうか…使い魔が一緒なら、柚子が危ない時にすぐ分かるわね」
更紗の一言で3人の計画は固まり、安全の為に柚子は変身してから行く事になった。
「んじゃ、行くよ」
柚子はそう言うと髪にある音符に手をかざす。
にっこりと音符に顔が浮かぶと、ふわりとした光が柚子の手に舞い降り、柚子の手には鍵のオルゴール。
柚子が蓋を開くと、空気を切り取る様に細切れの音と光が舞い、それが消えた後にはさっきまでの姿とは全く異なる「柚子」の姿があった。
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