オリジナル2
「あーもうわかんなーい!!」
午前中の授業を終え、生徒各自が好きに学園内で過ごす昼休みの中庭。
優しい日差しと木陰の下、授業で出たレポートを早目に片付けようと早々に昼食を済ませた女子3名からその声は響いた。
レポート用紙から消しゴムまで一切合切を中庭にばらまいた柚子はテーブルの上に勢いよく両手を伸ばして突っ伏す。
「柚子ってばもう…」
そう言いながら手にしたペンをくるりと回して緑色の光を操るのは更紗。
その光は美しい鷹に姿を変え、レポート用紙を器用にくちばしで掴み取る。
同じ様に右手の手袋を外した指に光る銀の指輪から紫の光を刹那が放つと、それは黒い狐に変わり、そこかしこの文房具に向かって歩き出す。
柚子の足元にも髪飾りの音符から浮き出た赤い光が揺らめき、仔犬に変化すると、柚子がばらまいたペンをめがけて走る。
「柚子、何が分からないの?」
狐から消しゴムや物差しを受け取りながら刹那が聞くと、柚子は突っ伏したままで答える。
「全部。何をどう書けばいいかも分かんないし、課題の意味も分かんない」
筆記用具がテーブルに戻るのを確認すると、刹那が口を開く。
「課題のテーマは使い魔についての考察、なんだから、まず自分の使い魔がどういう性質の持ち主かを良く観察、その上で、私達と彼等とのより良い共存のあり方と、かつ使い魔に近しい存在である精霊に相対した時の」
すらすらと出る言葉を切ったのは刹那のスカートを引っ張る狐。
「主、柚子殿がますます頭を抱えておる」
確かに、目の前の柚子は突っ伏したままだが伸ばした手が文字通り頭を抱えている。
「刹那の言い方が難しいのね」
「…なら…そうね…」
少し考えてから改めて「柚子」と声がかかる。
「あなたの使い魔、大紙、だったわね?その子を柚子がどう思っていて、どう付き合って行きたいか、どう戦って行きたいかを書けば良いわ」
「それなら分かる!」
突っ伏した柚子の顔が笑顔で起き上がる。
「大紙ちゃんは柚子の友達。大事な友達。大紙ちゃんは柚子が守るし、大紙ちゃんも柚子を守ってくれるの」
柚子の手が足元の仔犬に伸びる。
「鍵を貰った日に大紙ちゃんも貰った。柚子が名前をつけて、それからはずっと柚子の側にいてくれる。そういうのを書けば良いんだね」
「そう考えるなら、私も書きなおそうかしら」
更紗はそう言いながら半分ほど埋まったレポート用紙を新しくする。
「私にとってこの子、風絽はマエストロ。指揮者なの。この子と一緒に貰ったチャームの音で風絽は私の言いたい事を分かってくれるけど、私からすれば風絽が飛ぶ為に音を出すんだもの」
私はこの子の主だけど、同時にただの演奏者ね。
更紗はそう言うとテーブルに留まった鷹の喉元を撫でる。
「刹那ちゃんは?」
柚子の一言にサラサラと動いていた刹那のペンが止まる。
「私?」
「うん。クロちゃんは、刹那ちゃんにとってどんな子なの?」
柚子の笑顔と共に与えられた質問に、刹那はちらりと傍の狐に目をやり、表情を変えないままさらに少し考えて口を開く。
「相棒。パートナー。それ以上でもそれ以下でもないわ」
午前中の授業を終え、生徒各自が好きに学園内で過ごす昼休みの中庭。
優しい日差しと木陰の下、授業で出たレポートを早目に片付けようと早々に昼食を済ませた女子3名からその声は響いた。
レポート用紙から消しゴムまで一切合切を中庭にばらまいた柚子はテーブルの上に勢いよく両手を伸ばして突っ伏す。
「柚子ってばもう…」
そう言いながら手にしたペンをくるりと回して緑色の光を操るのは更紗。
その光は美しい鷹に姿を変え、レポート用紙を器用にくちばしで掴み取る。
同じ様に右手の手袋を外した指に光る銀の指輪から紫の光を刹那が放つと、それは黒い狐に変わり、そこかしこの文房具に向かって歩き出す。
柚子の足元にも髪飾りの音符から浮き出た赤い光が揺らめき、仔犬に変化すると、柚子がばらまいたペンをめがけて走る。
「柚子、何が分からないの?」
狐から消しゴムや物差しを受け取りながら刹那が聞くと、柚子は突っ伏したままで答える。
「全部。何をどう書けばいいかも分かんないし、課題の意味も分かんない」
筆記用具がテーブルに戻るのを確認すると、刹那が口を開く。
「課題のテーマは使い魔についての考察、なんだから、まず自分の使い魔がどういう性質の持ち主かを良く観察、その上で、私達と彼等とのより良い共存のあり方と、かつ使い魔に近しい存在である精霊に相対した時の」
すらすらと出る言葉を切ったのは刹那のスカートを引っ張る狐。
「主、柚子殿がますます頭を抱えておる」
確かに、目の前の柚子は突っ伏したままだが伸ばした手が文字通り頭を抱えている。
「刹那の言い方が難しいのね」
「…なら…そうね…」
少し考えてから改めて「柚子」と声がかかる。
「あなたの使い魔、大紙、だったわね?その子を柚子がどう思っていて、どう付き合って行きたいか、どう戦って行きたいかを書けば良いわ」
「それなら分かる!」
突っ伏した柚子の顔が笑顔で起き上がる。
「大紙ちゃんは柚子の友達。大事な友達。大紙ちゃんは柚子が守るし、大紙ちゃんも柚子を守ってくれるの」
柚子の手が足元の仔犬に伸びる。
「鍵を貰った日に大紙ちゃんも貰った。柚子が名前をつけて、それからはずっと柚子の側にいてくれる。そういうのを書けば良いんだね」
「そう考えるなら、私も書きなおそうかしら」
更紗はそう言いながら半分ほど埋まったレポート用紙を新しくする。
「私にとってこの子、風絽はマエストロ。指揮者なの。この子と一緒に貰ったチャームの音で風絽は私の言いたい事を分かってくれるけど、私からすれば風絽が飛ぶ為に音を出すんだもの」
私はこの子の主だけど、同時にただの演奏者ね。
更紗はそう言うとテーブルに留まった鷹の喉元を撫でる。
「刹那ちゃんは?」
柚子の一言にサラサラと動いていた刹那のペンが止まる。
「私?」
「うん。クロちゃんは、刹那ちゃんにとってどんな子なの?」
柚子の笑顔と共に与えられた質問に、刹那はちらりと傍の狐に目をやり、表情を変えないままさらに少し考えて口を開く。
「相棒。パートナー。それ以上でもそれ以下でもないわ」