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オリジナル2

そんな事があってからの時間はばたばたと過ぎる。
この学園はあくまでも魔法少女としての基礎を学ぶ場所。
学年はただの区切りにしかすぎず、評価は全て学園長から出される「試験」の結果によって付けられる。
それはレポートであったり、筆記問題であったり、実技であったりと形態は様々だが、生徒に一番不安を与えるであろう試験形態がある。
今まさにそれを終えて、何ヶ月かぶりに学園に足を踏み入れた少女がいた。
「お帰りニャ」
「コット、久しぶり。相変わらず元気そうで何よりね」
「…鍛えられたみたいニャね」
門の脇で鎮座する黒猫の両目が細くなると、少女は片手に握り締めた「まほう」と書かれたバットを肩に、にっこりと笑顔を作る。
「簡単だったわ」
すたすたと校舎へと歩く少女の後ろ姿を満足そうに見送ると黒猫は大きく欠伸をひとつ、瞬間、その場から姿を消した。
その頃。
柚子は幾つもの紙の束を両手に抱え、学園内を右往左往していた。
精霊を教師の力を借りたとはいえ何とか助けたあの日から、自分の力で何かをする為にと得た知識も、それに伴う戦いの場数も増えた。
同じく、提出すべくレポートの量も。
更紗が事あるごとに「あの実習のレポートは書いたの?」と問いかけても柚子は「大丈夫、まだ提出まで時間あるもん」と返していた、そのしわ寄せが今まさに柚子に襲いかかっている。
「こっちがブラン先生で、こっちは…」
ローファーのかかとを忙しく鳴らす柚子が提出先を確認した時。
「何やってんのよ、柚子」
突然の呼びかけの 声にはわわわ、と間の抜けた声を出しながら、雪崩れるレポートを何とか守り抜いた柚子の目に入ったのは、先刻、黒猫と話をしていた少女。
頭の高い位置での短めのツインテールと、きりりとした表情で柚子よりも頭ひとつ背が高い。
まあ、柚子の身長が中学生の平均身長である事を考えるとどの少女も柚子より背が高くなるのだが。
「コウ、ちゃん?」
「何よそのレポートの束は…あんた、また溜めてたのね?」
「だって、提出期限まだ大丈夫だと思ってたんだもん…あれ?コウちゃん、何か久しぶりっぽいね」
「ぽい、じゃなくて久しぶりなのよ。もしかして、あたしが二ヶ月いなかった事に気が付いてなかった訳?」
いぶかしむコウに柚子はえへへ、と笑う。
「まあいいわ、あんたならそんな事だろうと思ってたもの」
コウは柚子の手からレポートを半分取ると、すたすたと歩き始める。
「コウちゃん、二ヶ月ってどっか行ってたの?」
コウを駆け足で追いかけながら柚子が問うと、コウは少しだけ速度を落として柚子と肩を並べる。
「研修。そんな遠いとこじゃなかったけど」
「あ、知ってる!えっと、1人で知らないとこ行くやつでしょ」
「…あんたが言うとまるで楽しい一人旅みたいね」
くすくすと笑いながらコウと柚子は教職員の集う部屋にたどり着き、2人がかりでレポートを提出して回ると、柚子は「休憩!」と自動販売機で飲み物を買ってからコウを引っ張って中庭に出た。
陽当たりの良い長椅子を寝そべらんとばかりに占領する柚子にコウは思い出した様に一枚の紙を差し出す。
「これ。今掲示板に貼り出されてたから1枚貰ってきたの」
ここ、と指差したそこには沢山の生徒名の中にある柚子と刹那の名前。
「柚子と刹那ちゃん…?これ何?」
状況を今ひとつ飲み込めない柚子に、コウは柚子を押し退けて隣に座り込む。
「あんたと刹那が次の研修に行くって事よ。ちゃんと学園長の所に行って、細かい事聞かなきゃ駄目よ?」
「そっか…じゃあ、学園長先生のとこ、コウちゃんも一緒に行こう?」
柚子の誘いに危うく頷きかける自分を制しながら、コウはぽん、と右手にバットを握って立ち上がるとぶっきらぼうに言う。
「あたしは今研修から帰ってきたばっかなのよ?何であんた達に付き合わなきゃいけないのよ、意味わかんない。良いから、あのメモ魔連れて行きなさい。あんたがどれだけぼんやりしてたって、あのメモ魔ならあんたの分、何から何まで全部メモしといてくれるわよ」
コウはそこまでを一気に言い切ると、軽く素振りしながら柚子から離れる。
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