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繚乱〜参

瓦版を賑わす事件の下手人である近藤はそんな事を朧月が思っている頃、一仕事終わって一人、縁側にいた。
あの夏の日から半月、季節は徐々に秋へ向かっている。
吹く風にも、空にも、それが分かり始める。
ふと見上げる空に小鳥が舞う。
それが小さな禿に重なり、近藤は小さな笑みをこぼす。
そして自然と、だが当たり前に思い出されるのは美しい太夫。
「どうしているだろうな」
小さく呟いて近藤は己の手を見る。
数日前、人を斬った。
足がつく様な事はないが、仏を人に見付かってしまい、瓦版を賑わせた。
どうもそれ以来、詰めが甘くなっているのか妙に瓦版に見付かってしまっている。
気が抜けているのかもしれないと思い直し、近藤は暇な日が出来ても桜花へ行こうとしなかった。
それが良いか悪いかは分からない。
だが気の持ち方は変わった様な気がしている。
もう瓦版の世話にはならないだろう。
「俺の手は…何の為にあるんだろうな」
誰に聞くともない声。
人を斬る為。
金を稼ぐ為。
仕事をする為。
そのどれでもある。
だが出来る事なら。
「お前を…」
愛しいと口にする事も叶わないだろう、美しい太夫。
その優しい微笑みを。
存在全てを。
「…抱き締めて…守る為、だったらな」
近藤はそう呟いて縁側に寝転がる。
見上げた天井は、いつもと同じだった。



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